• 完全無料の健美家の売却査定で、できるだけ速く・高く売却

×

  • 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集

なぜ英国では100年続く賃貸が可能か、見習うべき点は? 「英国流持続可能なまちづくり・住まいづくり」シンポジウムより

不動産投資全般/海外投資・事情 ニュース

2022/08/12 配信

英国では、100年続く一般住宅や賃貸住宅もある。なぜそれが可能なのか? そこから日本の賃貸住宅に応用できることはあるのか? そうした疑問に対応するシンポジウム「英国流持続可能なまちづくり・住まいづくり」が7月20日に一般財団法人 住宅改良開発公社の主催で、オンラインで開催された。1000名を超える参加申し込みがあり、多くの賃貸住宅オーナーや不動産関係者が視聴した。

質疑応答全体写真
シンポジウムでは3時間20分の間に、6名が登壇した。

主催した住宅改良開発公社では賃貸住宅融資に係る保証を中心に、管理・経営、調査研究などの事業を行っている。業務のなかで、100年以上活用できる賃貸住宅経営のビジネス・モデル構築の研究のため、「なぜ、英国のまちや住まいが100年以上持つのか」を紐解く調査研究を行ってきた。シンポジウムでは、その報告とともに、日本における先進的な取り組みも紹介された。

英国は人口増加傾向にあり、新築が建てにくい環境。
古い建物が大切にされ、3戸に1戸が築73年以上

まずは住宅改良開発公社 住まい・まち研究所 所長の松本眞理氏から、英国と日本の人口や住宅の現状や違いについて解説された。英国は人口増加傾向にあるが、住宅着工戸数は日本の85万6000戸に比べ、英国は17万5000戸と5分の1に留まる。一方で、既存住宅の取引件数は、英国は93万1141件で、日本14万9541件の6.2倍に及ぶほど、既存住宅の流通が多い。さらには英国では3戸に1戸が築73年以上(2017年の調査データより)というから驚く。

住宅価格に至っては、日本は横ばいだが、英国では、2015年から20%上昇している。背景には新築が建てにくく、開発が制限されている事情がある。そうした英国の住環境について、英国で18年生活していた「ILS Research gGmbH」上席研究員の大塚紀子氏が、「英国流 都市デザイン・所有形態・住宅市場の流通」をテーマに講演した。

「英国では、建築物と街並みは公共財産として考えられ、古いものに価値を見出している。古いものを保存する制度、開発地に還元するビジネス・モデルがあり、住宅不足にもかかわらず新築が建てにくい。生垣さえも勝手に伐採できない環境保護の圧力があることも、古い建造物が大事にされる要因につながっている」

英国の住宅が100年以上も使われる背景には「ピクチャレスク理論が都市の中で適用さている」ことも上げられる。ピクチャレスク理論とは、絵画に見出したような特徴を現実の世界に求めることを指し、ロンドンの街並みや宮廷都市計画に活かされている。さらにはリスティッドビルディング(英国登録建造物)制度が1947年に導入され、歴史的価値のある建築物が登録され、建物の解体や改造には地方自治体の許可が必要になったことも、古い住宅が残される要因になっている。

大塚氏は英国で100年住宅に住んだ経験があるが、「上げ下げ窓が開閉しにくく、冬場寒い。遮音性や防音性が低い」といった不満もありつつ、歴史ある住宅に住む魅力を感じたそうだ。

見習うべきは耐久性があり、改装しやすい工法や素材、
さらには技術者を養成するインフラの整備も

英国在住の建築家の立場から、「英国流 集合住宅の成り立ち、素材、施工方法」をテーマに、「Urushibara Architecture and Consultancy」代表の漆原弘氏による講演では、なぜ英国では100年も集合住宅を使い続けることができたのか、次の3つの点を挙げている。

「地主の視点で見ると、自分の土地の価値が高まるような開発をしたいと望むことから、建築時に、価値が長く持続するものを作ろうとする。住民の視点からは、古く歴史ある住宅に住むことは魅力的だと考えられている。建物には伝統的な工法と素材が使われ、一般的な職人でもリノベーションに対応できることで、古い家を現代のニーズに合わせて直しながら長く住むことが可能である。職人の視点から考えても、英国ではリノベーションに関する技術を磨く学校などのインフラが整い、仕事が豊富にあることも英国で住宅が長く使われる要因につながっている」

では、日本でもこのような集合住宅を長く使うことが可能であるのか? 漆原氏は次のように考察する。

「耐久性のある素材と工法が大事。また時間とともに魅力が増すような建物であり、改装のしやすさに加えて、街の魅力や技術者の養成も含めて整える必要がある」

シンポジウムでは、日本での持続可能なまちづくりや住まいづくりの取り組みについても紹介された。旭化成ホームズ株式会社 マーケティング本部 集合住宅事業推進部 部長 福田浩司氏からは、元気なシニア向け賃貸住宅「へーベルVillage」について報告された。

大和ハウス工業株式会社 東京本社リブネスタウン事業推進部 戦略企画グループ 主任 河内毅文氏からは、「まちを『再耕』するリブネスタウンプロジェクト」について報告がなされた。高度経済成長期に全国61ケ所で開発した住宅地の再復興である。
パナソニック ホームズ株式会社 街づくり事業部 プロジェクト推進部 室長 熊谷一義氏からは、「Fujisawaサスティナブル・スマートタウンの取組み」について報告された。藤沢駅よりバスで15分の場所に、600戸のスマートハウス、シニアレジデンス566室が入る予定で、2024年に全施設完成予定の持続可能な街づくりの構想が紹介された。

質疑応答の時間では、賃貸オーナーからの質問も相次いだ。「日本では築年の古い建物を長く利用しようとしても、融資を受けるのが困難であるが、英国では融資を受けることができるのか?」との質問では、「英国では古い建物でも融資を組むことができる。日本でも長く住宅を活用するためには、融資制度の見直しも必要なのではないか」といった話も飛び交った。

このように日本と英国では、文化や制度が異なるために、マネできない部分があるものの、英国でなぜ100年も住宅が使われるのか、よく理解できるシンポジウムであった。

多くのモノの価格が上がるいま、建築費の高騰が避けられない。住宅や賃貸住宅の寿命を伸ばそうとする意識が今後ますます高まっていきそうだ。

ーーーーーーーーーーーーーーー

健美家編集部(協力:高橋洋子(たかはしようこ))

高橋洋子

https://yo-coo.wixsite.com/home

■ 主な経歴

暮らしのジャーナリスト。ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、情報誌などの編集を経てライターに。価値0円と査定された空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、おトクなマネー情報の研究に目覚め、FP資格を取得。住宅、マネー関連の執筆活動を行う。

■ 主な著書

  • 『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)
  • 『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)
  • 『最新保険業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など

健美家編集部(協力:高橋洋子(たかはしようこ))

高橋洋子

https://yo-coo.wixsite.com/home

■ 主な経歴

暮らしのジャーナリスト。ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、情報誌などの編集を経てライターに。価値0円と査定された空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、おトクなマネー情報の研究に目覚め、FP資格を取得。住宅、マネー関連の執筆活動を行う。

■ 主な著書

  • 『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)
  • 『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)
  • 『最新保険業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(秀和システム)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

アクセスランキング

  • 今日
  • 週間
  • 月間

不動産投資ニュースのライターさんを募集します。詳しくはこちら


ニュースリリースについて

編集部宛てのニュースリリースは、以下のメールアドレスで受け付けています。
press@kenbiya.com
※ 送付いただいたニュースリリースに関しては、取材や掲載を保証するものではございません。あらかじめご了承ください。

最新の不動産投資ニュース

ページの
トップへ