昨年の晩秋ごろから少しコロナ禍が収まったように見えるが、まだまだ楽観視はできない状況だ。こんな時こそ逆転の発想で、在宅中でも投資ができる「分配金生活」を始めるチャンスだろう。
2022年、新年のお年玉企画として、注目銘柄を2つご紹介する。
コロナ禍でも打撃を受けず、それどころか「巣ごもり消費」といったネット通販などの拡大で、躍進目覚ましい物流施設型リートの2銘柄だ。
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人と伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人だ。2銘柄とも、1月決算銘柄だ。


投資口価格と予想分配金利回りは2022年1月4日終値現在。
「物流施設特化型リート」とは?
個別銘柄の紹介に入る前に、まずは簡単に「物流施設型リート」の特徴を確認してみよう。
J-REITが保有する不動産には、オフィスや住居、商業施設、ホテルなど様々な種類がある。「物流施設特化型リート」とは、物流施設だけに投資しているJ-REITのことだ。
東日本大震災の際、被害を受けた地域の工場や物流施設からの供給が途絶えた事や、その後も相次いで発生した地震や台風の甚大な影響もあり、企業はリスク分散のため、物流施設などを日本各地に分散させている。
また、コロナ禍で一層拡大したネット通販の影響で、より消費者に近い地域に物流施設を作り、素早く配送できる体制も進んでいる。
J-REITが持つ物流施設は、最新設備を備えた大型倉庫が中心だ。太陽光や断熱性パネルの設置、庫内作業の効率化、自動化・省力化されている。
従業員の確保がしやすいように、働きやすい環境も整備。カフェや売店、働く人のための保育施設がある物流施設もある。
また、貸し出す先も、施設1棟を丸ごと1社に貸す場合や、複数テナントに貸す場合もある。
では、留意点は何だろうか?
物流施設は他のアセットに比べ、物件価格に占める建物価格比率が高い。なぜなら、物流施設が立地する土地価格は、住居やオフィスビルが建つ立地に比べると相対的に安いからだ。
それゆえ、減価償却費が多く計上される。そのため、分配金に含まれる「利益超過分配金」の割合を、他アセットのリートに比べて多くすることができるのだ。
とはいえ、ほとんどの物流施設型リートは一定の基準を設けた上で、「利益超過分配金」を分配金に組み入れている。
そして、今後もEコマースの市場規模拡大が続くと予想され、ここ数年は物流施設型リートの新規上場が相次いでいる状況だ。
スポンサーが開発した高品質な先進的物流施設を保有する
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人は、資産規模2,976億円の大規模リートだ。名前の通り、三井不動産がスポンサーだ。
三井不動産は他にもオフィスやレジデンス、商業施設のリートのスポンサーでもある。しかし、「三井不動産」の名前の付いたリートはこのロジスティクスだけ。
同リートは、スポンサーの三井不動産が開発した「先進的な物流施設」を中心に投資をしている。
三井不動産は総合不動産会社の強みを活かし、オフィスビル、レジデンス、商業施設など広い事業展開を通じて、全国各地の用地情報の中から物流施設に適した土地を厳選し、開発を行っている。
物流施設は、首都圏の外環道や国道16号、圏央道の3つの環状道路からの交通利便性、港湾からの良好なアクセス、人口集積地への時間距離、周辺の人口などを鑑み、首都圏を中心に関西圏や他エリアで開発されている。

同リートの保有物件の21のうち、首都圏比率が5割以上、関西圏が3割を占める。平均築年数は5.3年。
立地は、インターチェンジ(IC)までの距離1km未満が約2割、1km以上3km未満が4割弱、3km以上5km未満が4割強と、全体の9割強の物件がインターチェンジ5km圏内だ。
同リートによると、「三井不動産クオリティを備えた先進的物流施設」(MFLP)には、土地の広さやテナントによって3種類のタイプがある。
ランプウェイ型MFLP、スロープ型MFLP、ボックス型MFLPだ。なお、「ランプウェイ」とは地上から上層階までを繋ぐ「らせん状の車路」のこと。

同リートの上場は2016年。最近は急速に規模を拡大している。
物流不動産だけではなく、今後も成長が続くと期待されるデータセンターなど「インダストリアル不動産」にも投資している。

三井不動産ロジスティクスパーク投資法人
予想分配金:第11期(2022年1月期)7,830円、うち利益超過分配金1,030円
第12期(2022年7月期)7,784円、うち利益超過分配金1,063円
保有物件数:21
取得価格合計2,976億円(2021年7月31日現在)
生活消費関係に強い商社、伊藤忠商事の強みを活かす
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人は資産規模1,114億円。物流施設特化型リートでは中規模クラスと言える。
スポンサーは総合商社の伊藤忠商事。伊藤忠は、住宅特化型リートのアドバンス・レジデンス投資法人のスポンサーでもある。
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人は、スポンサーの「伊藤忠」の名前と、住宅特化型リート「アドバンス」の名前の両方を取り入れている。
物流リートの新規上場に当たり、成功した住居系リートの験を担いだのだろうか?
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人の上場は2018年9月。2021年7月期(第6期)に2つの物件を取得し、資産規模が981億円から1,114億円へと拡大した。

ポートフォリオの構築計画として、関東や関西エリアで生産地と大消費地が近いこと、主要幹線道路等への交通アクセスが良好な立地に投資を行う予定。
なお、現在の12物件はすべて関東圏に位置する。平均築年数は4.1年と築浅だ。平均賃貸借残存期間(年間賃料ベース)は5.7年。
今後は、スポンサーから物件優先交渉権を付与された物件や、伊藤忠グループ・ネットワークからのサポートを受けて、資産規模の拡大を目指す方向だ。

なお、同リートは利益超過分配を減価償却費の30%ぐらいを目安をしている。
そして、2022年1月期(第7期)の一口当たり分配金(利益超過分配金含む)は当初予想2,557円から2,724円へと増配する。

伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人
予想分配金:2022年1月期(第7期)2,724 円、うち利益超過分配金 399 円
2022年7月期(第8期) 2,683 円、うち利益超過分配金 399 円
保有物件数:12
取得価格合計111,422 百万円(2021年7月31日現在)
1月決算銘柄を買って分配金をもらうには、権利付き最終売買日である1月27日15時までに購入しておく必要がある。
なお、物流施設特化型リートの分配金利回りは、他アセットに比べると総じて低めだ。それは、人気が高いという裏返しでもある。
その上、この2銘柄は「スポンサー名」を掲げて上場しているリートなので、スポンサーの力の入れ具合が見て取れる。
最後に、投資判断は自己責任でお願いしたい。
健美家編集部(協力:野原ともみ)
健美家編集部(協力:
(のはらともみ))