武雄温泉駅(佐賀県武雄市)と長崎駅(長崎市)を結ぶ西九州新幹線がいよいよ23日、開業する。沿線の自治体では、観光客増加などの経済効果に期待が高まっている。

今回の開業時には、長崎ー武雄温泉間はフル規格新幹線、武雄温泉ー博多間は在来線特急で運行される。武雄温泉駅の同じホームで乗り換えが可能になり、博多ー長崎間の所要時間は現行の平均2時間から最大で約40分短縮される。将来的には武雄温泉ー新鳥栖間もフル規格整備することで、新大阪から長崎までの新幹線直通運行を目指す。
待望の新幹線開業に湧いているのは、長崎市、諫早市、大村市(いずれも長崎県) と新駅「嬉野温泉駅」が開業する嬉野市、武雄市(いずれも佐賀県)の沿線5自治体だ。
長崎県では、2011年に全線開通した九州新幹線鹿児島ルートによる熊本・鹿児島両県への波及効果を例に挙げ、定住促進と県外への人口流出抑止効果に期待を込める。関西・中国地方からのアクセス向上で、観光客増加や企業誘致にも追い風になるとみている。
ひときわ盛り上がりを見せているのが、佐賀県10市で唯一、鉄道が通っていなかった嬉野市。
新駅となる嬉野温泉駅は、人・もの・情報がふれあう交流拠点となり、西九州地域の広域的玄関口として大きな役割を果たすことになります。(嬉野市ホームページ)
として、特に観光産業振興に期待を寄せている。さらに、西九州新幹線を利用して通勤・通学する市民に対して、定期券代の半額を公費から補助する制度を新設。これまでは近県への進学や就職を機に県外に引っ越さざるを得なかった人口の県外流出抑制を図る。福岡・長崎が通勤・通学圏内になることから、県外からの移住促進にもつなげたい考えだ。
一方、福岡市内を中心に賃貸マンションの建築販売を手掛ける株式会社柴田産業不動産部の隈元嘉人さんは、沿線自治体の熱量と対称的に、西九州新幹線開業によるこれらエリアへの投資効果は限定的になると分析している。
「不動産投資の視点で見ると、長崎市内は集合住宅建設のための平地が少なく、魅力が低い。人もカネも博多への一極集中は変わらないのではないか」とのこと。
むしろ、九州の同業者が注目しているのは、西九州新幹線のルートから外されてしまった佐世保市(長崎県)だと明かしてくれた。

古くから軍港として栄えた佐世保の街は現代ではハウステンボスのある街として知られ、コロナ前は国内外から多くの観光客を集めてきた。2017年に野村総合研究所が国内100都市を対象に将来のポテンシャルを分析した「成長可能性都市ランキング」でも、佐世保市は九州から福岡市(2位)、久留米市(9位)とともに、10位にランクイン。
さらに、当サイトでも既報の通り、長崎県はハウステンボスにカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致のため「区域整備計画」を提出済み。ハウステンボスが香港の投資会社に売却されたことで先行きを不安視する声もあるが、長崎IRが実現すれば九州圏内への経済波及効果は年間3200億円、雇用創出効果は3万人に上るとする試算を長崎県は公表している。
新幹線開業とIR誘致、長崎県の活性化に期待が高まっている。
長崎県新幹線対策課では、「新幹線開業による県内への来訪者増で観光産業の振興に期待している。沿線自治体の受け入れ支援や二次交通対策に注力し、開業効果を県内全域に波及させたい」と話している。
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健美家編集部(協力:
(おおさきりょうこ))