不動産資産管理の三和エステート株式会社は、お客様が直面している「相続」のトータルサポートを行うため相続サポートページを開設。相続の準備から相続発生、そして相続完了までの流れの中で必要な準備や手続きを順を追って解説している。
相続は発生する前にできる限りの準備を行うことで、よりスムーズに、よりご意向を反映させた結果をつくることも可能。三和エステートでは「弁護士」「税理士」「司法書士」など多岐にわたる複雑で煩雑な専門家への依頼や相談も独自のネットワークで1本化。相続する方、される方の悩みや不安の解決に向けて全力でバックアップしていくという。
■相続人に未成年者がいる場合は?? 〜 その方法とポイントについて専門家が解説します 〜
未成年者は原則として単独で法律行為を行うことができない。スマホもクレジットカードの契約もダメ。スマホが欲しいから親に内緒で携帯ショップに行っても、もちろんスマホは買えない。未成年者がゲーム機をもらう代わりに店番(みせばん)をする(負担付き贈与)ことも、本当はダメ。
そんな未成年者でも単独でできる行為の代表例が「お小遣いを自由に使う」ことだ。他にもいくつかあるが、要は「絶対に損しない」という行為であれば、未成年者も単独でできることとされている。未成年者は判断能力が育っていないから「法律で守りましょう」という健全な決まりだ。
例えば、借金免除してもらうとか、負担なし贈与(無条件でゲーム機をもらう)とかならOKとされている。
では未成年者が「単独でしたらダメですよ!」と決められている法律行為をしたい場合にどうするのか?
そこで親権者の登場となる。親権者が代わりにその行為をしたり、同意をすることによって様々な契約ができる。
今回はこの “未成年者” が相続人にいて「遺産分割協議」をする際の話。
もちろん未成年者は単独で「遺産分割協議」をすることはできない。「遺産分割協議」は財産に関する話合いであり立派な法律行為なので誰かが代わりにする必要がある。しかし、殆どのケースで親権者がこの代わりを務めることができないので特別な方法が必要となる。
なぜ親権者は未成年者の代わりに「遺産分割協議」ができないのだろうか。
■親権者が「遺産分割協議」を代わりにできない理由
それは「利益相反」という行為に当たるからだ。
利益相反をかみ砕いて説明すると「あちらを立てればこちらが立たず」。どちらか一方が得をすると、もう一方が損をしてしまう状況のことだ。しかし遺産分割協議において、親権者と子が「あちらを立てればこちらが立たず」になってしまうというのは一体どういうことだろうか。
■「遺産分割協議」と 親権者 と 子
「遺産分割協議」とはその名の通り、誰かの「遺産」を相続人で「分け合う(分割)」ための「話し合い(協議)」。
例えば父・母・子の3人家族がいて、父が亡くなり、遺産は自宅の土地建物のみだとする。
令和6年4月1日より相続登記も義務化するので、父名義のまま放っておくわけにはいかない。そこで、自宅を母名義とする遺産分割協議をする。子は遺産分割協議ができないので母親が代理人になって協議すると、父の遺産を「母と母(子の代理人)で話し合って分け合う」というよく分からない状況になる。
この状況で未成年者が “絶対損しない” と言い切れるだろうか?
法律は、この状況で未成年者が “絶対に損しないとは言い切れない” と判断する。したがって、親権者は未成年者の代理人として遺産分割協議ができない。
因みに、これはあくまで「親権者と子が利益相反の関係になってしまう場合に代理人になれませんよ。」という話なので、例えば子だけが相続人で祖父の遺産について父の兄弟と遺産分割協議をする場合などであれば、母親が代理人として遺産分割協議ができる。
しかし、子が複数いて、その子達全員の代理人になれるかというとそれはできなし。子同士で利害が対立するので母はそのうち一人の代理人ににはなれるが、他の子の代理人にはなれない。
では、親権者が代理人になれない場合、遺産分割協議は誰がするのだろうか。
■誰が未成年者の代わりに遺産分割協議をするの?
じゃあ誰が代わりにやってくれるの?というと、ここで「特別代理人」の登場となる。
特別代理人とはその名のとおり特別な代理人のこと。
これは未成年者の遺産分割協議のときだけ登場するわけではなく、例えば、訴訟したいけど相手の方の法人が閉鎖(清算結了)してしまっている、などの場合もこの特別代理人が登場する。
特別代理人は勝手に選ぶことはできず、裁判所に申立をして裁判所が選任する。遺産分割協議を行う特別代理人を決める時は家庭に関することなので、家庭裁判所に選任してもらう。
つぎに、特別代理人の選任の流れなどについて紹介する。
■特別代理人を選任したいけどどうしたらいいの?
特別代理人の選任申立は、誰でもどこでも申立できるわけではない。
◇申立人:親権者又は利害関係人
◇管轄裁判所:未成年者の住所地の家庭裁判所へ
そして肝心の特別代理人って誰がなるの??だが、候補者を立てることができる。
資格制限はないので、未成年者と利益相反の関係になる人でなければ誰でも候補者に名乗り出ることができる。身内の方が候補者となる場合が多く、母と子の協議の場合には子の祖父母や叔父叔母が選ばれることが多い。
身内にお願いできる人がいなければ、申立を依頼している司法書士が候補者になることもある。
そしていざ申し立てるときの費用や選任までの期間の目安は以下のとおり。
◇費用:印紙代800円と切手代1000円くらい(申立をする裁判所によって異なります)
◇期間:申立から選任されるまで一般的に約1か月程度
特別代理人選任申立書時に遺産分割協議書案をつけて申立をする。
裁判所がこの遺産分割協議案のどこを気にしているかというと「未成年者の利益は守られているか?」ということ。「未成年者の利益は守られているか?」というのが具体的にどういったことかというと、「法定相続分を下回ってないか?」ということになる。
先ほどの例で考えると、父名義の不動産を母名義にする、というだけの遺産分割協議案であれば通らない。未成年者の法定相続分を下回っているからだ。この場合には、父名義の不動産を母名義にする代償として子に対し不動価格の2分の1を支払う、という内容でなければならない。
そして選任された特別代理人が未成年者に代わってこの遺産分割協議に捺印をして無事遺産分割が成立ということになる。あとは、この遺産分割協議書を使って必要な手続き(登記申請など)をしていくことになる。
相続人に未成年者がいる場合に遺産分割協議をする際は、「未成年者は単独で遺産分割協議を行えないので特別代理人を選任する必要がある」という話をしたが、未成年者が単独で「相続」できないという訳ではない。未成年者も単独で「相続」はできる。
例えば、先ほどの例で、
父名義の自宅を法定相続分で母2分の1、子2分の1に名義変更をする。
これであれば、特別代理人の選任は不要。
仮に、1000万円の預金しかなく、500万、500万ずつ分ける、これもOK。
■まとめ
今回は相続人に未成年者がいて、未成年者が「遺産分割協議を行う」場合の注意点を説明した。相続人に未成年者がいる場合、残された親権者は大きな不安を抱えることになる。そのような状況で裁判所に申立てが必要となると手続きの負担も大きい。では、残された家族の為にどうしたらいいのか?ここでも登場するのが「遺言書」だ。
年齢的に、未成年を持つ親御さんが亡くなる可能性は勿論低いですがゼロではない。そこで「私の一切の財産を夫(または妻)に相続させる」という遺言書を一枚残しておくだけで、先述した特別代理人の選任は必要なくなる。とはいえ、突然の出来事。遺言書が残されている可能性は現実的には少ないと思われる。
相続人に未成年がいる場合、ご担を軽減するためにも専門家への相談がオススメだ。
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■資産サポーター プロフィール 司法書士 進藤 亜由子 氏
ふくおか司法書士法人 共同代表。
1985年、福岡市西区出身。早稲田大学在学中の平成19年度最年少での司法書士試験合格から現在に至るまで司法書士業界一筋。
大手ディベロッパー会社の登記を一手に請け負う東京の司法書士事務所で不動産登記の経験を積み、地元の福岡に戻り、債務整理手続きに特化した司法書士法人で債務整理の経験を積んだ後、独立し伊都司法書士事務所を開設。開業当初より地銀や大手ハウスメーカーからの指定を受け多くの登記手続きを受任。更に債務整理事務所勤務の経験も活かし借金に悩む多くの方の借金問題を解決へと導く。その後、ふくおか司法書士法人を立ち上げる。他の事務所で断られた複雑な案件を解決し続け、その実績をコラムで紹介。記事を見て全国から相談者が集まる。現在は、相続・遺言手続きセンター福岡支部を運営。事務所内に相続に特化した専門チームを作り、相続に強い司法書士として日々多くの相談に応じている。
◎ホームページ「ふくおか司法書士法人」
健美家編集部