3年ぶりにゴールデンウイーク期間中に外出制限が行われないことによって、この連休中は出かけている人も多いだろう。しかしこの感染症の影響は、確実に世の中に大きな影響を与えている。それがわかるデータが発表されている。

出生数は6年連続で過去最少を更新。
婚姻数は戦後最少
4月15日に総務省統計局により、2021年の人口推計の値が公表された。2月25日時点でも厚生労働省により、人口動態統計の速報値を発表している。これらのデータによると、2021年の死者数は145万2289人で、前年と比較して、6万7745人増えている。死者数が増えるのは2年ぶりで、死者数は戦後最多となる。

一昨年の2020年の時点では、マスクや手洗いなど衛生意識の高まりで、死者数が抑えられていた。それが昨年は、新型コロナウイルスの広がりによる医療逼迫などで、感染症以外の病気が原因の死者が増えたことも死者数が増えた要因のひとつに考えられる。
一方で、人口が増える要因となる出生数や婚姻数を見ても、なかなか厳しい状況となっている。2021年の出生数は、84万2897人。2020年より2万9786人減り、6年連続で過去最少を更新している。
婚姻数は51万4242組で、2020年に比べて2万3341組減り、戦後最少となっている。
コロナ禍の先行き不安から、結婚や出産の計画が立てにくくなっていることがうかがえる。
人口増加は沖縄のみ。
東京都は26年ぶりに人口減少に
都道府県別に人口増減率を見ると、人口が増加に転じているのは沖縄のみ。そのほか46都道府県が人口減少に転じている。東京、埼玉、千葉、神奈川、福岡の5都県は、同調査では前年は人口増加していたものの、減少に転じてしまった。
同調査による、東京の人口減少は、1995年以来の26年ぶりのこととなる。
なお人口減少率が、前年と比較して最も高いのは大阪府である。特にインバウンドの落ち込みや、新型コロナウイルスの感染者数の多さから、東京や大阪から離れる動きがあるのかもしれない。
年齢別の人口割合の変化についてみてみると、15〜64歳の割合は59.4%と過去最少と減少傾向にあるが、ここ5〜7年はなんとか同程度に踏みとどまっており、大幅に減少しているわけではない。

一方、他の年代の推移に目を向けると、15歳未満の人口がやや減少傾向にあり、65歳以上や75歳以上の人口が増えている。15〜64歳の人口の割合は70年前とほぼ同じ割合に戻ったとも見ることができる。
賃貸住宅を利用するボリュームゾーンはまさにこの15〜64歳が多い。死亡者数の増加や、出生数や婚姻数の低下が、今すぐに、賃貸業界に及ぼす影響は、さほど大きいとは考えにくい。しかし2021年に生まれた子が一人暮らしを始めるような2040年頃のことを考えると、なかなか厳しそうである。
ただし、人口が増加している65歳以上に向けた、賃貸住宅のニーズは今後も増していく可能性がある。
以前、健美家ニュースでも、65歳以上の部屋探しサイト『R65不動産』を取材し、コロナ下で 掲載数が前年比2倍と、好調であることを紹介した。65歳以上は6年以上長く住む傾向にあると聞いた。賃貸住宅のオーナーにとって長く入居してもらえる点はありがたい。
人口減少傾向社会にあることは、今に始まったことではなく、かつてから予測されてきたことである。ただし、昨今の感染症の広がりや、戦争、物価高騰などまでは予測されていなかった。今後も、人口が減るようなことはあっても、大幅に増える未来は考えにくい。
そうなると賃貸住宅に対して、否応なく、日本人の意識の変化が必要になりそうだ。
あらたに賃貸住宅を新築しなくても、今ある住まいを有効活用する方法もある。すでにさまざまな用途に合わせて、空間を貸し出すスペースマーケットのようなサービスや、軒先を多目的に貸し出す軒先ビジネスなどのように、時代に合わせた賃貸ビジネスも新たに出てくるのかもしれない。時代の変化に対応した、素早い動きが必要になりそうだ。
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健美家編集部(協力:
(たかはしようこ))