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2021年の東京の人口動向を徹底分析 〜転入・転出が進んだ人・場所は?〜

調査(不動産投資)/人口 ニュース

2022/04/29 配信

投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメントは、(1)東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、(2)不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授 市川宏雄 氏を所長に迎え、「グローバル都市不動産研究所を2019年1月1日に設立。

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このたび同研究所では、調査・研究の第15弾として、2021年の東京都及び東京都区部の人口動向、転入・転出動向を分析し、2022年1月公示地価の東京の概況について紹介している。

Blurred group of business people commuting on the streets of Japan

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【01】2021年の東京、26年ぶりに人口減少
1996年以来26年ぶりに人口減少。日本人の転入者数の低下と転出者数の拡大、出生者数の低下と死亡者数の拡大、外国人の国外転出が要因か

今年1月末、東京都の総人口が年間で減少に転じ、東京23区では転出が転入を上回る転出超過になったとのニュースが駆け巡った。このときマスコミでは「コロナ禍でのテレワーク普及で地方移住意欲が高まった」「東京一極集中の流れが変わった」との論調が高まったが、これは本当だろうか。

2021年の東京都及び東京都区部の人口動向、転入・転出動向を詳しくみることで解明していこう。そして3月22日に発表された2022年1月地価公示の東京の概況についても紹介する。

■2021年の東京の人口動向

「東京都の人口推計」(2020年国勢調査人口を基準に住民基本台帳人口の増減分を加減して算出した推計値)によると、2021年の東京都の人口動向は、前年12月以降の感染拡大の「第3波」の影響で1月の1403万6721人から徐々に減少を始めた。3月下旬からの「第4波」の中で4月に1万5155人増、5月に5877人増と若干増加したものの、デルタ株の感染が急拡大した7月から9月にかけての「第5波」の影響で人口減少が続き、2022年1月時点で総人口は1398万8129人となった。

前年をはるかに上回る感染拡大の波によって、2021年は年間で△4万8592人と1996年以来26年ぶりの減少を記録した【図1】。

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この2021年の年間増減数を日本人・外国人別でみると、日本人は△2万37人、外国人は△2万8555人と外国人の減少幅が上回る。さらにこれを社会増減(転入者数等−転出者数等)、自然増減(出生者数−死亡者数)で分けてみると、日本人では社会増減数は+1万2836人とかろうじてプラス、自然増減数は△3万2873人と大きく減少している。一方、外国人では自然増減数は+2191人だったが、社会増減数は△3万746人と大きく減少した【表1】。

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コロナ禍前の2019年の数値と比較してみると、東京の人口減少は、日本人の転入者数の低下と転出者数の拡大、出生者数の低下と死亡者数の拡大、そして外国人の国外転出という複合的な要因で発生していることが分かる。

たとえば、2019年と2021年の増加幅(表1右列)の数値をみると、日本人の社会増減幅は大幅な転入増・転出増により△7万4472人、自然増減幅は△1万4112人、外国人は社会増減幅が△5万3881人となっている。

【02】女性の転入は続く一方、子育て層が転出
・30〜40歳代の子育て層の転出超過が続く。女性全体では転入超過を維持
・東京都からの転出増はテレワーク普及ではなくマンション価格の高騰が原因か

■コロナ禍2年目でも、東京都はかろうじて転入超過を維持

続いて、2021年の東京都の人口の集中・分散状況を、総務省「住民基本台帳人口移動報告」を用いて詳しくみていこう。

東京都の国内他道府県との転入・転出状況【図2、表2】をみると、年間の転入者数は42万167人、転出者数は41万4734人であり、5433人の転入超過となった。かろうじて転入超過を維持したが、2019年の8万2982人、2020年の3万1125人の転入超過からみると、やはりその数が大幅に減少していることは否めない。

月別にみると、転入超過となったのは3〜4月の2か月のみで、その数も2020年と比べて大きく下回っている。デルタ株の感染拡大が吹き荒れた7月〜9月には約3000〜3500人程度の転出超過数となっている。しかし、感染がいったん小康段階となった10月以降も約3000〜3700人程度の転出超過が続いていることが気になるところだ。

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■30〜40歳代の子育て層の転出超過が続く。女性全体では転入超過を維持

この東京都の転入・転出状況を年齢5歳階級別・男女別にみていこう【図3、表3】。

東京都には進学や就職などの要因で15〜19歳、20〜24歳、25〜29歳の年齢階級が多く転入し、転入超過数に大きく寄与してきた。これら3つの年齢階級(若年層)の転入超過数をみると、2020年は前年と比べて2割程度減少したが、2021年は2020年とほぼ同水準の7万人強を維持している(15〜29歳の転入超過数:2019年9万3036人、2020年7万3855人、2021年7万1817人)。

一方、30歳代、40歳代の青壮年層については、2020年に転出超過に転じたのち、2021年には転出超過が拡大している(30〜49歳の転出超過数:2020年1万7027人、2021年3万2196人)。0〜14歳の「子ども層」の転出超過数の増加傾向からみて、これら30〜40歳代の「子育て層」の転出超過が拡大していることが分かる。

また、2021年の転入超過数を男女別にみると、男性は△1344人と転出超過に転じたが、女性は6777人の転入超過であり、依然として女性は転出よりも転入の方が上回っている。15〜19歳、20〜24歳の転入超過数は女性の方が男性よりも上回っており、30歳代、40歳代の転出超過数も女性の方が男性よりも低くとどまっている。コロナ禍2年目においても、15〜24歳の若年層の女性が東京都に集まり続け、30〜40歳代の青壮年層の女性が東京都に住み続ける傾向が強いことを示している。

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■東京都からの分散は隣県3県が大半。東京圏全体では転入超過

2021年の東京都と他道府県との移動状況をみると、東京都からの転出超過となったのは、埼玉県(△1万7663人)、神奈川県(△1万3896人)、千葉県(△9375人)、沖縄県(△397人)、茨城県(△115人)の5県のみであり、隣接3県が大半を占めている。また、2020年との比較でみてもこの隣接3県への転出超過数が大幅に拡大したことがみてとれる【図4】。

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つまり、東京都からの転出は、地方への分散はごく少数で、その大半が東京圏内の隣接3県に分散していったことが分かる。

東京圏(1都3県)の転入・転出状況をみると、2021年の転入者数は48万2743人、転出者数は40万1044人であり、8万1699人の転入超過となっている。2019年の14万8783人、2020年の9万9243人の転入超過と比べて減少しているが、いまだ転入超過の状態を維持している【表4】。

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■東京都からの転出理由は「テレワークの普及」というのは本当か

先述のように、東京都の人口減少や転出者数の増加は「テレワークの普及」を理由とする論調が高まったが、果たして本当だろうか。

日本生産性本部の調査によると、首都圏(1都3県)のテレワーク実施率は、2021年10月調査の36.9%から、2022年1月調査では26.8%と10.1ポイント低下している(公益財団法人日本生産性本部「第8回 働く人の意識に関する調査」2022年1月27日発表)。

また、東京都の調査では、都内企業(従業員30人以上・400社程度を対象)のテレワーク実施率は、緊急事態宣言期間中の2021年5月から9月まで6割を超えていたが、宣言が明けた10月以降は5割台に落ちている【図5】。

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そのテレワークの実施回数も「週1日」(35.3%)と「週2日」(19.0%)で過半数を占めており、東京への通勤無しで仕事ができるような完全テレワークが必ずしも普及しているとは言い難い状況だ(東京都産業労働局「テレワーク実施率調査報告」2022年1月7日発表)。

一方、首都圏の住宅市場の動向に目を転じると、不動産経済研究所が発表した2021年度の首都圏(1都3県)の新築マンション1戸当たりの平均価格は前年度比6.1%上昇の6360万円と、バブル期の1990年度に記録した6214万円を上回り、過去最高を更新した。2021年の新築分譲マンション価格は東京都区部で8293万円(m2単価:128.2万円)と前年比7.5%アップ(m2単価も2.5%アップ)で、コロナ禍前の2019年と比べて1000万円以上も上昇している。

かたや東京都下や隣接3県(神奈川県、埼玉県、千葉県)の価格は4000万円から5000万円前半で、ここ数年はおおむね横ばい傾向にある。中古マンション価格(成約物件)をみても、2021年の東京都区部は5325万円(m2単価90.73万円)と前年比8.9%アップ(m2単価も11.1%アップ)、2019年と比べて700万円近く上昇しており、その高騰ぶりがうかがえる。

東京都多摩と隣接3県の価格も前年比3.5〜10.9%アップしているが、東京都区部の新築・中古マンションの価格高騰の煽りを受けたものとみられ、価格自体は2000万円台〜3000万円台前半とまだ手の届く範囲にあると言える【表5−1、表5−2】。

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2021年に30〜40歳代の「子育て層」の転出超過が拡大し、感染拡大がいったん収まりテレワーク実施率が低下した10月以降も転出超過が継続している。ここから推測されるのは、これら「子育て層」が今よりも広い住宅を求めて転居を考えたときに、東京都区部のマンションは手が出せる状況でなく、週何回かの通勤に耐えられる隣接県の郊外に転出した、というのが実態ではないだろうか。

つまり、東京都からの転出の本当の理由は、完全テレワークで地方移住できるような一部の層を除き、その大半は東京都区部のマンション価格高騰を要因に隣県3県に移動したのでないか、と言うことができそうだ。

【03】開発が進む区では流入、城南・城西エリアなどでは転出
・台東区、墨田区、江東区では都市開発などで人口流入が進んでいる
・城南、城西エリアの周辺区及び江戸川区では東京近郊への転出が進む

次に、東京23区内のそれぞれ区別に、2021年の人口増減の状況をみていこう【図6、表6】。

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総数でみると、東京都区部全体で4万9891人減と、2020年の2154人増から大きく減少に転じた。区別には、人口が増加したのは中央区、台東区、江東区の3区のみで、20区で減少となっている。

日本人の動向に絞ってみると、千代田区、中央区、文京区、台東区、墨田区、江東区の6区で人口が増加している。このうち社会増が大きく目立っている台東区(1507人)、墨田区(1000人)、江東区(1130人)では豊洲に代表される都市開発などで人口流入が進んでいることが推測される。

一方、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、杉並区、江戸川区では人口が大幅に減少し、大きく社会減に転じていることから、これら城南、城西エリアの周辺区及び江戸川区では東京近郊への転出が進んでいるものと思われる。

また、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区では、社会増となっているものの、自然減が大きく目立っていることから、結果的に人口増減数はマイナスとなっている。これら城東を中心とするエリアでは年齢構成が高く自然減が進む一方で、家賃などの住居費が23区内において相対的に安いことから人口が流入しているのでないかと推測される。

【04】地価は商業地で都心3区を除き上昇、住宅地では23区全体で回復傾向
・商業地では千代田区、中央区、港区の都心3区は前年に引き続きマイナス
・区部都心部の住宅地を中心に徐々に回復傾向にある

今年3月22日に2022年1月の公示地価が発表された。初めてコロナ禍に見舞われた2021年の東京都全域の公示価格の対前年変動率は、住宅地、商業地とも8年ぶりのマイナスとなり、住宅地が△0.6%、商業地が△1.9%の下落と商業地の方がより顕著な影響を受けたが、2022年は果たしてどうだったのだろうか。

2022年は東京都全域で住宅地が1.0%、商業地が0.6%のプラスに転じ、いずれのエリアでも回復傾向を見せている。東京都区部で上昇率が高く、特に住宅地では区部都心部が2.2%のプラス、商業地では区部南西部が1.4%のプラスとなっている【表7】。

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ただし区別に詳しくみると回復状況は一様でなく、商業地では千代田区、中央区、港区の都心3区は前年に引き続きマイナスとなっている。都心3区のオフィス街や繁華街では、オフィス空室率の上昇、コロナ禍による飲食店・商業施設の休業や閉業などの影響を受けたものと考えられる。

一方、住宅地ではいずれの区もプラスとなっており、住宅地の方が回復が早いことが分かる。特に中央区(2.9%)、港区(2.1%)、港区(2.4%)と都心3区の上昇率が高くなっており、そのほか、豊島区(2.6%)、文京区(2.6%)、江東区(2.1%)、中野区(2.1%)、杉並区(2.0%)、新宿区(1.9%)、渋谷区(1.9%)など都心周辺区や城西エリアから回復が始まっていることがうかがえる【表8】。

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このように東京都の地価は、住宅地から徐々に回復傾向にあると言える。ただし、今後の新型コロナ変異株の感染状況、またウクライナ情勢が日本経済に与える影響など不確定要素が多いため、これからも注視が必要だ。

【05】都市政策の専門家 市川宏雄所長による分析結果統括
・東京都からの転出先は大半が東京圏内と隣接3県に分散
・都心の住宅地地価は回復傾向にあり、いきなり下落する可能性は低い

東京都の人口は、2021年では1996年以来、実に26年ぶりに年間で4万8592人の減少を記録した。バブル経済崩壊後の減少(これは2年間続いた)以来だ。

この人口減少は、日本人の転入者数の低下と転出者数の拡大、出生者数の低下と死亡者数の拡大、そして外国人の国外転出という複合的な要因で発生している。ただし、国内の他道府県との移動人口でみれば、依然として5433人の転入超過だ。

東京への人口流入の最大要因である20代の女性の転入超過の状態は変わっていない。また、東京都からの転出増はテレワーク普及が主要因ではなくマンション価格の高騰が原因とも言われており、とりわけ30〜40歳代の子育て層の転出増が目立つ。その転出先は、地方への移住はごく少数で、大半が東京圏内の都下と隣接3県に分散している。

首都圏の住宅市場の動向に目を転じると、2021年の新築分譲マンションの平均価格は東京都区部で8293万円と前年比7.5%アップ。その一方、東京都下や隣接3県(神奈川県、埼玉県、千葉県)の価格は4000万円から5000万円前半でここ数年は横ばいとなっている。すなわち、区部に住んでいるファミリー層が少し広いスペースを求めると、必然的に郊外に向かうことになる。

この現象は城南、城西エリアの区及び江戸川区で顕著。また、都心回帰の状況も続いており、台東区、墨田区、江東区では都心5区よりも不動産価格が低いこともあって、人口流入が続いている。

そして、地価については2022年1月時点で東京都全域で住宅地が1.0%のプラス、商業地は都心3区だけはマイナスが続くが、全域では0.6%と前年からプラスに転じた。とりわけ、区部中心部では住宅地が2.2%、商業地では区部南西部が1.4%のプラスとなっている。

今後の新型コロナの感染状況、ウクライナ情勢の日本経済への影響などもありながら、過去2年間でのコロナ禍での価格の微増、最近の不動産価格の上昇傾向を見る限りでは、いきなりの下落という可能性はあまり考えにくい状況にある。

Commuting scenery in Japan (businessman)

健美家編集部

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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