国土交通省は、2020年12月25日に令和2年9月期の不動産価格指数を公表した。
2019年10月以降の不動産価格指数動向と、リーマンショックがあった2008年秋以降の不動産価格指数とを、エリア別に比較する。
関東圏の不動産価格指数動向は
リーマンとコロナとでどう違うのか
国土交通省が発表している資料に基づき、関東圏における2008年秋以降2年間の不動産価格指数をグラフ化した。

関東圏におけるリーマンショックの影響を見ると、住宅地・戸建・マンション共に価格指数が下落している。
しかし、その後の値動きは種別で異なっており、マンションは特に、1年程度でリーマンショック前の水準と同程度まで価格指数を戻していることがわかる。
また、リーマンショック後の値動きを見ると、2013年夏ころから値上がり始め、2020年9月には価格指数が147.6となったので、7年で首都圏のマンションは約1.5倍まで値上がりした計算だ。
その一方で、住宅地と戸建住宅については、リーマンショックによって価格指数を5ポイント程度下げたあとは、100前後で安定推移している。
つづいて、2019年10月以降の首都圏における不動産価格指数動向は、以下グラフの通り。

リーマンショックの時は住宅地・戸建住宅・マンションともに値下がりしたが、コロナでは値動きがない。
むしろ、マンションに至っては、わずかだが1年間で値上がりしている様子が見受けられる。
近畿圏の不動産価格指数について
リーマンとコロナとで変動を比較
つづいて、近畿圏の不動産価格指数について、リーマンとコロナとでは変動に違いがあるのか検証した。
近畿圏におけるリーマンショック前後の不動産価格指数動向は、以下グラフの通り。

近畿圏では、住宅地がリーマンショックによって10〜15ポイント価格指数を下げている。
なお、2008年9月の住宅地価格指数は110超だが、リーマンショック以降2020年9月までの間に、価格指数が110を超えた時期は1度もない。
戸建住宅については、リーマンショックで5ポイント価格指数を下げている。リーマン前の水準へ回復したのは2019年であり、価格が回復するのにかなり時間がかかっている。
マンションもリーマンショックで価格指数を下げたが、住宅地・戸建住宅と違い、2010年の秋にはリーマンショック前の水準まで回復している。
つづいて、コロナの影響を検証する。

近畿圏においても、住宅地・戸建住宅・マンション共に値動きは特段見受けられない。
また、関東圏と同様に、土地と戸建に関してはリーマンショック直後とほぼ変わらぬ水準で推移している。
九州・沖縄圏でリーマン・コロナの
不動産価格指数動向を比較
最後に、九州・沖縄圏の不動産価格指数を、リーマンとコロナで比較してみる。リーマンショック時の不動産価格指数動向は以下グラフの通り。

九州・沖縄圏でも他のエリアと同様、リーマンショックで不動産価格指数は下がっている。
また、住宅地と戸建住宅は回復に時間がかかっている一方で、マンションはすぐに価格を回復した点も、他のエリアと同じだ。
つづいて、コロナ下における不動産価格指数の動向は、以下グラフの通り。

九州・沖縄圏におけるコロナ前後の値動きも、他のエリアと全く同じで、価格指数には特に変化がない。
住宅地および戸建住宅がコロナ後と同水準な点および、マンションが約1.5倍に値上がりしている点まで同じだ。
コロナではほぼ全国的に
不動産の値動きが見受けられない
首都圏・近畿圏・九州沖縄圏の3エリアに分けて、リーマン前後とコロナ前後とで値動きを比較した。
どのエリアでも、リーマン前後では不動産が値下がりしたが、コロナの前後では、2020年9月までに値動きがないことがわかった。
コロナ下でも不動産価格が下がらないのは、金融機関がそれほど融資の引き締めをしていないからと言われている。一方で、リーマンショックの時には、どの金融機関も融資姿勢を厳しくしていた。
ただ、首都圏では2021年1月7日に再び緊急事態宣言が発令されたため、コロナの経済的影響は再び大きくなるとみられる。
コロナの経済的影響はいつ不動産価格に表出するのか、今後も注視が必要だ。
取材・文:秦 創平