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「海外住宅投資 節税認めず」報道ショック。不動産投資家への影響は?

税金/税制改正 ニュース

11月27日付の日経新聞朝刊に掲載された「海外住宅投資 節税認めず」の記事が反響を呼んでいる。すぐに反応したのはマーケットだ。国内の富裕層向けに海外不動産の投資ビジネスを展開するオープンハウスの株価は、取引直後に急落。一時、前日比521円(15.3%)安の2889円まで売られた。売買高は前日比5.87倍と大商い。27日は前日比434円(12.7%)安の2976円で取引を終えた。

オープンハウスは、14日に2020年9月期の純利益が前期比12%増の441億円になるとの見通しを発表したばかり。マーケットが強気の業績を好感し、株価も1年3か月ぶりの高値を付けていた。

米国で展開する富裕層向け投資用不動産も好調で、将来の業績拡大のけん引役として期待されていたのだった。が、今回の報道に水を差された形だ。

海外住宅投資による節税とは

関係者の間では、「ついに来たか」という印象だった今回の報道。節税の恩恵を受けている富裕層もビジネス展開をしていた事業者や税理士も皆、覚悟の上での制度利用だったに違いない。

この節税方法は簡単に言うと、米国や英国など海外で中古物件を購入し、家賃収入を上回る減価償却費などの赤字を発生させ、その赤字を日本の所得と相殺。所得を圧縮して節税する仕組みだ。
ドルの家

当コラムの読者である不動産オーナーの皆様はすでにご存じの通りだが、日本と欧米では中古住宅の平均寿命や利用可能年数の考え方が違う。日本では木造住宅の法定耐用年数は22年。これを超過した物件は、耐用年数×0.2の期間で償却できる。例えば、築25年の木造アパートは、22年×0.2≒4年で償却可能だ。

日本では、不動産の価値は経年劣化により減価することが前提だが、法定耐用年数22年を超過した木造アパートは4年で価値が無くなるよと言われると、そうだろなと思う物件がたしかにある。「中古住宅の資産価値=土地」は暗黙の了解なのだ。

だが、海外は事情が違う。筆者も米国で築50年、100年といった木造住宅を見学してきたが、建物が古いからと言う理由だけで価値が下がることは無い。それどころか、80年代の物件だからと価値が上がる場合もある。

総じて中古住宅の価値は高く、また値下がりしない。その理由は、新築住宅の供給戸数が少なかったり、日本のような高温多湿ではないという気候条件だったり、物件のメンテナンスやインスペクションの水準が高いことなども要因だろう。

「どのような住宅が建築されるのかわからない新築住宅よりも、目の前に実物が存在し、物件の状態も利用状況も確認できる中古住宅の方が安心だ」と言われれば、なるほど同意せざるを得ない。

そのような背景もあって欧米では住宅価格における建物割合が高くなる。筆者が視察した米国テキサスでは、建物割合は70%〜90%。日本では考えられない割合だ。

1995年築、75.73坪の木造一戸建てが$360,000(2018年8月当時)。建物割合は83%。耐用年数4年の減価償却費は、1ドル108円換算で「3388万円 × 0.83 ÷ 4年 = 703万円」。日本での給与所得を大きく減らすことができ、節税効果満点だ。

ところが、この節税方法についてはすでに、会計検査院が平成27年度決算検査報告において疑問を投げかけている。

そもそもは、会計検査院の検査報告から始まった?

日経新聞の記事には会計検査院の検査データが引用されている。「東京都の麹町税務署管内などで調べたところ、海外の中古物件で延べ337人が39億8千万円超の赤字を計上していた」。

これは、会計検査院による平成27年度決算検査報告の内容だ。報告の中で同院は「財務省において、国外に所在する中古の建物に係る減価償却費の在り方について、様々な視点から有効性及び公平性を高めるよう検討を行っていくことが肝要である。」と結んでいる。平成28年11月のことだ。そして、これ以降毎年、財務省はいつ動くのか、税制改正はいつなのかと疑心が生じることとなる。

同院が、国外の中古建物における減価償却の在り方の検討が大切だとしたのは、不動産所得の損失の多くが国内の中古建物ではなく、国外不動産で計上されていること。損失額も大きく、耐用年数10年以下の建物1件当たりの減価償却費は、国内建物が207万余円に対し、国外建物は811万余円と圧倒的な差だという。

その背景は明白だ。国外に中古等建物を取得して不動産事業の用に供し、賃料を上回る多額の減価償却費を計上して、不動産所得に損失を生じさせる。損失を給与所得等の総合課税に属する他の所得と損益通算することで所得金額を圧縮。まさに国内の所得税額を減少させる行為、となる。

この場合、中古等建物を長期にわたって所有し不動産事業を継続すれば、将来的には減価償却費を計上できなくなり、不動産所得が増加し、所得税額も増加する。

だが、その前に売却してしまえば、所得税の増額は免れる。しかし、建物を譲渡する際の譲渡所得額の計算上、減価償却費の累計額は当該建物の取得費から控除されるため、減価償却額が大きいほど譲渡所得の金額はその分増加し、所得税が増える。だが、総合課税の税率より低い分離課税の長期譲渡所得の税率が適用されれば、全体として所得税額の負担は少なくて済む。どこまでいっても節税できる素敵なプランなのだ。

同院の調査でも、短期で売却したり、日本から出国して非居住者となり我が国の所得税法の適用外になったりと、将来増加するはずの所得税額の一部を負担しない場合が生じているという。それはそうだろう。それが狙い通りの節税スキームであり、提案されているビジネススキームなのだから。

ついに、富裕層への課税強化に舵が切られる

今回、政府・与党の方針として報道されたのは、先に述べた国外の不動産所得の赤字と国内の所得との損益通算による節税を認めないというもの。他にも、海外不動産の法定耐用年数の変更案などはあり得る。

現状のままでは、海外不動産投資による節税が可能な富裕層とそうできない納税者との間で不公平が生じる。また、制度としては合法だが、日本の実情に応じた制度を状況が異なる海外不動産に適合して節税するのも公正だとは言い難い。

制度変更は先ず、与党の税制調査会で詳細が詰められ、2020年度税制改正大綱に所得税法の見直し案として盛り込まれる予定だ。例年通りに進めば、発表は12月中旬頃。注目したい。

適用は、2021年分以降の所得税からの見通しだという。影響を受けるのは、誰なのか。

影響と懸念

振返れば、2019年の三大都市圏の公示地価は、全用途平均・住宅地・商業地及び工業地のいずれについても、各圏域で上昇が継続した。なかでも東京圏及び名古屋圏の住宅地では、平均変動率が6年連続の上昇、大阪圏でも昨年に上昇に転じて以降2年連続の上昇となっている。

7月1日に発表された路線価でも同様の傾向が続き、地価においては盛り上がりをみせる2019年だった。一方、不動産オーナーや投資家にとっては何かと受難の年だったと言える。

組織ぐるみで融資資料を改ざんしていたTATERU、スマートデイズとスルガ銀行が引き起こした「かぼちゃの馬車」事件、「フラット35」の投資物件利用発覚など、相次ぐ事件の影響で、不動産融資の審査は厳格化の方向だ。

金融庁は地銀などへの立ち入り検査を実施し、第2、第3のスルガ銀行を出すまいと警戒を強めている。物件価格が高くなる一方で、金利や頭金など融資条件が厳しくなって、新規融資が絞られれば、サラリーマン大家もメガ大家も手の打ちようがない。

そして、今回の報道だ。節税が目的の海外住宅投資において、節税の旨味が無ければあえて海外不動産を購入する必要はない。物件が売れないとなると、投資用海外不動産の販売、仲介、コンサルティング業は大打撃。冒頭に紹介したオープンハウスに対するマーケットの反応は事態を懸念してのものだ。中には、撤退せざるを得ない業者も出てくるだろう。

海外不動産は現地や物件を見ず購入することも多い。また、価格の正当性を判断する材料もなく、管理業務はすべて業者にお任せだとすれば、業者の破綻は目も当てられない結果を招く。

先に述べたとおり、節税目的の海外不動産投資は途中売却がマストだ。業者が破綻し売却できない。節税ルールが変更になって、日本人が買わなくなったら売却できない。業者任せのケースや日本人頼みの出口戦略は悲惨な事態を引き起こすかもしれない。

一方で、購入時に物件を吟味し、適正価格であることを確認し、信頼できる管理会社と管理体制で現地の欧米人にニーズのあるエリアに物件を保有しているならば、慌てることは無い。

そもそも、海外不動産投資の目的は節税だけではない。ドル資産を保有すること、インフレ基調の海外に現物資産を保有すること、将来の自分や子供のための長期の資産形成などが目的であるならば、節税効果が多少減ってもノックアウトされることはないだろう。

節税目的で海外不動産投資や海外不動産がらみの投資を行っている人は、関係業者と対象物件の確認をしたい。自分の資産を守り、自分の損失を取り戻すのは、自分がやるしかない。

執筆:大石泉(おおいしいずみ)
大石泉

【プロフィール】
ファイナンシャルプランナー(CFPR)。株式会社NIE.Eカレッジ 代表取締役。ライフプランや資産形成等をテーマに講演や執筆、個別相談を行う。他、自身もはまり、ライフワークと志す「情報を知恵に変える!新聞による経済教育」を全国で展開。
「2014年度金融知識普及功績者」として金融庁と日本銀行より表彰される。著書に、「入社前から先取り!日経新聞の読み方・活かし方/すばる舎」「投資デビュー!/平凡社新書」「女性のためのマンション選びとお金の本/平凡社」などがある。

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