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【不動産投資の法律知識】 建設会社が破産した場合、未完成建物は誰のものに?! また、建設会社の破産に備えるポイントとは?!

不動産投資全般/法律知識 ニュース

2024/05/04 配信

今回は、令和6年3月、4月と、立て続けに、土地から1棟RCの新築スキームをメインに行っていた建築会社が複数破産(事業停止)したことを踏まえて、建設会社が破産した場合に、未完成建物の所有権はどうなるのか?!を解説したいと思います。

未完成のまま建築会社が倒産してしまったら、、、、?
未完成のまま建築会社が倒産してしまったら、、、、?

まず、伝統的な法学の考え方からお話ししたいと思います。伝統的な学説からすると、未完成建物の所有権は、建物の材料を供給した「建築会社」側にある、請負人帰属説という考え方が基本でした。

「施主が依頼している建物なのに、なぜ業者?」と思われるかもしれませんが、理屈を詰めていくと一本筋が通っています。請負契約とは、建物の材料を加工して建物を完成させ、施主に引き渡す契約です。

そうすると、建物材料を仕入れて建物を建築していく以上、未完成建物は、建物の材料が変化したものであり、建物材料を仕入れた建築会社側にある、という材料主義と呼ばれる考え方が基本です。

その上で、建物完成引渡しの際に、請負代金と交換で、建物の所有権が施主へと移転する。こうしておかないと、先に自分のお金で材料を仕入れて建物を建築している建築会社側が、請負代金を支払ってもらうために担保にとれるものがないので、こうして未完成建物の所有権を建築会社側にあると考えるのは合理的だという考え方でした。

ただ、近年ではこの材料主義、請負人帰属説ではなく、注文者帰属説という考え方のほうが主流になりつつあるイメージです。

注文者帰属説というと、なんでもかんでも施主の所有権が認められそうですが、そうではなく、「施主から建設会社側への金銭の支払い状況」を考えて、未完成建物の所有権を考えていこうという説明で概ねよいのかなと思います。

具体的に見ていきましょう。
土地から新築の場合でも、近年では戸建てでも、請負代金を3~4回程度に分割して支払う契約内容になっていることが多いかと思います。よくあるケースだと、着工時に30%、上棟時に40%、建物完成引渡し時に30%などの契約です。

このように施主側でも定期的に請負代金を支払っているとなると、材料主義の際に根拠としていた①未完成建物の材料が建設会社側のものという点と、②請負代金を支払ってもらうまで未完成建物を担保にしなければならない、という点が妥当しなくなります。

すなわち、着工時に施主は30%程度の請負代金を支払っているのであれば、未完成建物の材料なども30%の請負代金から強いられていると考えられます。

また、定期的に、着工時に30%、上棟時に40%など請負代金が支払われているのならば、未完成建物を担保にしなくとも請負代金債権は確保できているとも言えます。

したがって、近年の裁判例の傾向等からしても、注文者帰属説というと誤解を与えそうですが、「請負代金の支払い状況や、工事進捗等を勘案」して、どちらに所有権を認めるのが妥当かどうかを判断して、契約書どおり問題なく請負代金を支払っていれば、概ね施主側に未完成建物の所有権を認めるという傾向があるのかなと思います。

実務的にも、未完成建物の所有権を巡って強硬な争いが繰り広げられるというわけではなく、請負代金の清算、代金請求のやり取りが主な争点になるイメージです。

現実問題として、未完成建物を建築会社に認めたところで、土地は施主のものであることが多いですし、現実的に建築会社側にメリットもないですから、このような裁判例の傾向は、至極実務に合った処理ではないかと思います。

今回は、講学的な観点から、未完成建物の所有権の帰趨についてお話ししましたが、最後に建設会社の破産に備えてのポイントをお話ししたいと思います。

一言でいうならば、「建築確認手続を完了させられるか否か」「その引継ぎのために必要な建築資料を回収できるか否か」というのがポイントになります。

「建物」とは物理的に存在していればいいわけではなく、「適法な建物である」と行政からお墨付きを経なければ、ほとんど経済的価値を有しません。

たとえば、自分の敷地内に、自分で建物を建てることは「合法」なのですが、あくまで行政から適法な建築確認手続を経ていない建物であれば、そんな建物、誰も住みたいとも借りたいとも、買いたいとも思わないはずです。そのため、建築会社が事業停止した場合に、一番に気にしなければならないのが、「建築確認手続を引継ぎ、適法な建物を完成されられるか否か」になります。

そして、そのために必要なのが、建築確認手続に必要な建築途上の資料です。建築確認手続とは行政の基準をみたす適法な建物として建築されているか、行政上の監督手続です。これらをクリアするためには、適宜建築途上の資料が必要になるのです。

先日の複数の建築会社の破産をみても、正式に裁判所を通して「破産」する企業の場合、その企業ないし裁判所の選任した破産管財人弁護士から建築資料の共有を受けられるケースが多いですが、一番怖いのは、「破産せずに、夜逃げしてしまう」ケースだと思います。

この場合、建築資料が散逸して、入手できないようなケースも念頭にいれなければならないでしょう。

以上のように、今回は、未完成建物の所有権についてのお話しをさせていただきました。また、建築会社の破産に備えるには、①適宜、建築途上の資料を共有してもらう、②それらをチェックできるような建築士と二人三脚で進めておく、といったことがポイントになるでしょう。

執筆:山村暢彦(やまむら のぶひこ)

山村暢彦

山村法律事務所ホームページ(不動産・相続)
山村法律事務所ホームページ(企業法務)
不動産大家トラブル解決ドットコム

■ 主な経歴

弁護士法人 山村法律事務所 代表弁護士 神奈川県弁護士会 所属
不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。
自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。大家さん、不動産投資家に寄り添い不動産賃貸トラブルを解決する姿勢から、近年、不動産投資関連トラブルの相談も急増。

不動産投資関連トラブルでは、「賃貸」法務だけではなく、リフォーム、建設、不動産取引、融資業務など関連する法分野が複雑かつ多岐に携わる。そのため、多数の不動産・建設会社の顧問業を務め、不動産・建設分野全般にわたる知識とノウハウが問題解決に役立っている。
近年では、ラインワークス(チャットワーク)やzoom等のITツールを駆使して、依頼者と気軽に相談できる体制を構築している。また、その評判から、個人の不動産投資家の方の顧問業務の依頼も増加している。関東一帯を中心に、なかには、関西や東北からの相談や顧問業務をこなす。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数6名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。

クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産関連のトラブルについての解決策を、自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。

■ 主な著書

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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