地下室の続きで、地下ピットのお話をしようと思います。
東京都練馬区の某所、川が近くにある低地に、重量鉄骨造3階建ての住宅を設計したことがあります。20坪程度の細長い土地に、40坪弱の床です。
地盤はローム層( 赤土 )で、杭を打たずに耐圧版( 地面の圧力を受けるRC造の版 )で支えるべた基礎の方式です。3階程度の鉄骨ならば、ローム層の上に杭無しでいける所は多くあります。杭の有る無しで、コストが大幅に変わってきてしまいます。S造はRC造に比べて杭無しでいけるケースが多いので、S造にしてコストダウンすべきか否かは、検討の余地が十分にあります。
さて練馬某所の物件ですが、地面下約2mのところに耐圧版を置いて、1階床は木造で組んで、2階、3階の床は鉄骨造( デッキプレートの上にコンクリート打ち )としました。
なんで2mも下になるのかというと、基礎梁がそれぐらいの高さがあって、基礎梁の下に耐圧版を入れるからです。結果的に耐圧版から1階床までの間に、大きな空洞、大きな床下空間ができます。
地下の大きな空洞は、地下ピット( pitとは穴のこと )などと呼ばれます。1階の床にハッチ( ふた )を付け、地下ピットを大きな収納庫としても利用できるようにしておきました。配管類も地下ピットで横に曲げて、建物の外へと通したので、後々の配管のメンテナンスは楽にできます。
ちなみに地下ピットを倉庫として使おうとする場合、確認申請時に気を付けないと、床面積に入れろと言われることがあります。あくまでも床下として、部屋名を書かずに申請しました。
地下ピットは地下室ではなく、構造上できた単なる床下で、防湿対策はまったくしていませんでした。本格的に2重壁などの防湿対策をするとコストが上がるばかりでなく、地下室として考えているのだから床面積に入れろと言われてしまいます。
地階の倉庫は、建築面積の1/8以下ならば階数に入れなくてもよいという緩和規定はありますが、床面積には入れなければなりません。また地下ピットを受水槽( 水のタンク )室とする場合は床面積に入れなければなりませんが、ポンプ、電気の盤などを外に出すと、床面積に入れなくても可となる場合もあります( ややこしい )。
竣工後しばらくして見に行くと、問題が出ていました。川が近く、地盤が低いことから、降雨時に地下ピット内に少し水が侵入するというのです。地下ピットの壁は地中梁となっている部分で厚みはありましたが、耐圧版と地中梁の境から水がしみ込むようです。
オーナーさんが独力で、外壁沿いに溝を掘って、水を一カ所に集めてポンプアップできるように改造していました。溝はコンクリートをはつっただけの小さなもので、ポンプも洗濯機用の小さな手動スイッチのものです。地下ピットに入らせてもらって、オーナーさんのセルフリフォームに感心しました。
地下に大きな倉庫があるのは大変便利だそうで、タイヤやビン類などの湿気に強いものを置いていました。ただ少ないながらも水が入るのと、湿気があるのとで、本、衣類、ふとんなどを置くのは不可です。
結論として
地下ピットはつくるべきだが、下のスラブが深い場合は水対策に力を入れよ!
となります。RC造、S造( 鉄骨造 )を新築される方は覚えておくといいでしょう。