こんにちは、モーガンです! 最近、不動産投資やリフォームの勉強会などを開催している関係で、これから不動産投資を始めたいという初心者の方とお会いする機会が増えました。お昼ご飯や休憩時間に、どんな不動産投資をしたいのか伺うことがあります。
多くの方が口にするのは、築古戸建を500万円以下で購入することで「 まず小さく始めて経験を積みたい 」ということです。みなさん、とても意欲的でこれからが楽しみだなと思います。
一方で、「 ゆくゆくはどれくらいの規模を目標にされているのですか? 」と問い返すと、その「 小さく始める 」の先を見据えて目標設定されている方は少ない印象です( 初心者なので無理もないことですが )。
「 小さく始めよう 」という言葉は、多くの不動産投資や自己啓発の本に書かれている言葉で、この言葉自体は何の問題もありません。おそらく著者の方が、読者に勇気を持ってスタートを切らせるために書いているのでしょう。
ただ、築古戸建を1-2戸買ってみたは良いけれど、その先に行けず苦しんでいる人もお見かけすることがよくあります。今回のコラムでは、小さく始めた「 後 」を考えることで、みなさんのより堅実な不動産投資に繋がればと思います。
■ 小さく始めると見切り発車は違う
私が相談を受ける方の中には、小さく始めるという名目のもと、見切り発車してしまっている人を一定数お見受けします。
例えば、先日お知り合いになった会社員のAさん。築30年超の戸建に300万円で入れた買付が通ったので近日決済予定だそうです。賃貸需要としては悪くはないエリアなのですが、雨漏りなどの修繕で200万円ほどのリフォーム費がかかる予定です。
Aさんはここ1年、一生懸命物件を探していたのですが、なかなか紹介を受けられなかったり、買付が通ったと思ったら2番手に買い上がられたりと散々だったそうです。そこに客付が容易そうな物件が出てきたので、すぐに満額の買付を入れたそうです。
「 このエリアだったら、入居者さんは見つかるから大丈夫ですよね? 私の今の力量ではこれ以上に安く買うのは無理です。いつまでも前に進めないので、まずはこの物件で経験を積んでみます。この金額なら失敗しても死にはしないですし! 」とおっしゃいます。
確かに何事も経験ですし、やってみないとわからないことはたくさんあるので気持ちはわかります。ただ、会社員の給料をあてにして数百万円なら失っても死にはしないだろうと投資に踏み切るのは違うと思います。
なぜなら、そうした方の中には、次の一手が打てなくなって後悔している人がいるのを知っているからです。このAさんのように総額500万円で投資した時に、家賃6万円で回収するには約7年先になります。
実際には入退去などの維持管理費用もかかりますから、8年から10年先になってしまうこともあり得ます。雨漏りの影響で躯体の状態が悪く大規模な修繕が必要になった場合は、投資回収は愚か、売却して出口も取れない状況にもなりかねません。
入居者が入ったら良いでのはありません。例え死なない程度の額であっても、投資回収がいつできるのか十分なシミュレーションに基づく判断は不可欠です。
■ 現金の減少には注意が必要
さらに現金500万円が手元資金から減少することにも注意を払う必要があります。上述したような現金戸建投資をした方の中には、購入後にその投資回収の遅さに気がついて融資を使った投資に切り替えようとする方も多くいます。
ただ、この時にすでに500万円は戸建に消えているため、自己資金が薄くなっている方がほとんどです。元々貯金額が多い方なら別ですが、銀行の融資審査には大きくマイナスです。
このAさんもその500万円を温存しておけば1,500万円から2,000万円のアパート融資も十分可能だったのではないかと思うと悔やまれます( 借金は勉強不足だから怖いとおっしゃいます )。
しかし、もう仕方がありません。この戸建を購入した後は、さらに会社員の仕事を頑張って、新たに貯金を積み上げながら、2戸目の購入を目指すことになるのでしょう。
Aさんの不動産投資を始めた理由は、「 会社員の仕事に不満があるから 」だそうなのですが、本末転倒になってしまわないか、心配しています。
■ 自分だけ小さいままで大丈夫か?
人によっては戸建を1、2戸持っていれば家計の足しにはなるだろうし、それで満足という方もいらっしゃいます。確かに投資に期待するリターンは人それぞれでいいですし、誰にも迷惑をかけないようにも思えます。
ただ、一つだけ事前に理解しておかなければいけないのは、不動産会社、金融機関、工事業者など不動産投資のステークホルダーは皆、規模拡大にしのぎを削っているのに、自分だけ蚊帳の外にいて大丈夫か、という点です。
例えば、私がいた不動産業界では、管理戸数を増やすために熾烈な受託獲得競争が会社間で展開されています。管理戸数が少ないとスケールメリットが発揮できず、手数料の価格競争や社員や職人さんなどの人材獲得競争に負けてしまうからです。
同じ理由から、採算が合わない管理物件や不動産投資家との関係を見直すという動きも起きています。銀行や工事業者も遠からず似た状況にあります。皆、5年後、10年後を見据えて必死なのです。
そのような中で自分は1-2戸程度でいいやと思っていても、業者から見て組むメリットのない大家とみられる可能性があります。実際、地方に行くと戸建の管理は受けないという会社もあります。
今後、規模が小さいままでも生き残るためには、入居付に尖るとか、リフォームに尖るとか、自分の知恵と労働力をフルに投入して、ニッチ戦略を成立させる努力が必要になってくることも考えられます。
■ 目標と手段の整合性が取れているか検証しよう
最後に自分が掲げる目標にその小さく始める投資は役に立つか検証をしましょう。「 会社員の給料がなくなっても家族を養えるようになりたい 」「 子供の養育費、学費を稼ぎたい 」など不動産投資の目標は人によって様々です。
これらを金額に変換するとそれなりに大きなものになります。Aさんの例からもわかるとおり、不動産投資における家賃収入はそんなに大きいものではありません。
小さな投資から得られる家賃収入をいくら積み上げても、目標とするライフスタイルに届かないということも考えられます。
「 手が届くから 」という理由で物件を買う前に、必ず投資手法の検証をしてみてください。検証するにあたっては、自分と同じ境遇でゴールに到達している不動産投資家の手法を研究するのが一番の近道かと思います。
もしその投資を再現するための知識や自己資金が足りないなと感じたら、回り道のようでもそれを蓄える時間を取ってもいいのではないでしょうか。簡単に手が届く投資が必ずしもベストだとは限らないと思います。
まずやってみる! という意欲はとても大切ですが、貯金はとても大切です。ご自身の目的としっかりと向き合い、手持ち資金を効率的に生かす方法を考えてほしいと思います。