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不動産会社の淘汰、地場仲介業者倒産が過去最多に。社会構造の変化に危機感

不動産投資全般/市況 ニュース

2024/05/07 配信

帝国データバンク
出所:帝国データバンク

昨年も、今年の春季労使交渉(春闘)は高水準の賃上げを実現した。マイナス金利も解除され、日銀は正常な金融政策を模索する。日経平均株価は、バブル期の最高値を塗り替えて初めて4万円台に突入するなど経済界は30年に及ぶ成長なき時代の終焉に期待を寄せている。

ただ、世間一般では、バブル期のような高揚感はない。資源価格の高騰と円安の急進を受けて生活コストの上昇率が賃上げ率を上回るためだ。実際、企業の倒産件数が増えている。

昨年は100億円超の大型倒産も

帝国データバンクの発表によると、2023年度の倒産件数は9年ぶりの高水準になった。8881件の倒産件数は前年度比で30.6%も増加している。

2年連続で前年度を上回り、2014年度の9044件に迫る9年ぶりの高水準で、負債総額は2兆4344億7400万円となった。負債が100億円以上の大型倒産が19件に上り、10年ぶりに2年連続で2兆円を超えた。

100億円以上の大型倒産の中には、ユニゾホールディングス㈱という大手の不動産会社も含まれている。

このユニゾホールディングスは、昨年4月26日に民事再生法に基づき、私的整理を見据えてのスポンサー探しを協議していたが支援を得られなかった。コトの発端は、旅行大手のHISが2019年7月に3100円でTOBを仕掛けたが、ユニゾホールディングスが反対の姿勢を示し、その後に不動産ファンドなどを運用するフォートレスが4000円というHISを上回る価格を提示してTOB合戦の様相を見せていた。

ブラックストーンやチトセア、国内ファンドなども参戦し、5000~6000円の公開買い付け価格を提示。最終的に2020年4月にユニゾの従業員による買収(EBO)としてTOB合戦が決着し、チトセアが、従業員を株主とするチトセア投資を設立してローン・スターからTOB資金を賄う方式とした。

だが、TOB価格が当初の4000円から最終的に倍近くまで跳ね上がり、ローン・スターへの返済原資としてユニゾが保有物件を手放して得た資金だけでは返済と物件売却益に伴う税金の支払いが難しくなるなどの曲折を経て最終的に再生への道は頓挫した。

ユニゾホールディングスは、オフィスビルやホテルを保有していたが、EBO(従業員による企業買収)が失敗して倒産の憂き目に遭ったのは資金繰り対策の失敗によるものとされる。

賃貸紹介数はコロナ前の水準届かず

こうした大型倒産にとどまらず、地域に根ざす地場不動産会社の倒産も増えている。

帝国データバンクによると、賃貸マンション・アパートの仲介・管理を手掛ける「街の不動産屋」の倒産が2023年に過去最高に達したと発表した。不動産仲介会社の倒産は120件(前年69件)となり、前年比で7割増と大幅に増加し、年間の踏査兼件数として過去最高を更新したという。

この背景について同社では、不動産仲介会社の主な収入源となる入居希望者の物件紹介数の減少などが要因として挙げられるとした。

企業の異動や大学の進学に伴う引っ越し需要は春に集中するが、各年3月時点の賃貸成約件数を首都圏で見ると、2023年は約2万3000件となり、新型コロナ禍前に3万件前後で推移した水準の8割前後にとどまっているという。

法人需要で伸び悩む。リモートワークの普及と優秀な人材確保を目的に異動制度の見直しが大手を中心に進んだことが理由の一つだ。

物件が高騰する中で引っ越し代を抑えたい、新築物件は建築費の高騰で家賃と管理費が上がりやすい、既存物件でも最近は家賃の値上げ傾向が強まっているなどの状況を受けて個人の住み替えに手控え感が強いことが業況を悪化させている。

入居者の満足度を高めるために各社は、インターネット環境や防犯対策などでDX技術を導入するが、ここでは大手と違い先進技術が進んでいない。このため大手会社と地場会社の格差はさらに広がり、物件紹介の機会を失った地場仲介会社が淘汰の憂き目に遭う可能性が高まっている。

事業機会の減少が倒産を招く

賃貸仲介でなく、地場の売買仲介会社や小規模ビルダーも同様に厳しい。「建て売りを得意とするビルダーを見ると、昨年の秋ごろから郊外で在庫が積み上がり始めている」(東京都渋谷区の売買仲介会社)、「中古マンションでも手が届きにくくなっていることで、東京23区では成約までの期間が長期化している。

悩んだあげくに購入を諦めた検討者は珍しくない」(東京都足立区の売買仲介会社)との声が聞かれる。こうした状況が続けばアッパー層を得意とする不動産会社と、そうではない平均的な実需層をメインに取り扱う事業者との収益力の格差は広がる。

総務省が5月5日の「こどもの日」の前日に子どもの数を発表しているが、前年比で43年連続の減少となった。15歳未満は4月1日時点で1401万人(前年比33万人減)となり最小記録を更新した。賃貸・売買ともに将来の事業機会の奪い合いが加速すれば、淘汰される不動産会社も増えそうだ。

健美家編集部(協力:若松信利(わかまつのぶとし))

■ 主な経歴

学生時代から不動産に興味を持ち個人的に不動産関連の記事を多数執筆。大学卒業後、不動産関係情報誌に20年以上勤務。現在は都内のIT会社に勤め、副業でいくつか投資関連の記事を担当・執筆する40代サラリーマン。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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