前回は基礎工事、土台工事の現場写真をお見せしました。今回はその続きです。
よく混同されますが、「 基礎 」はコンクリートの部分で「 土台 」は基礎の上に載せる角材です。土の中にも入る基礎は、木でつくると腐ってしまうので、コンクリートか石でつくるしかありません。
下の写真は基礎、土台が終わって、土台内部に付ける大引( おおびき:部屋内の床を支える材 )という角材を取り付けているところです。金具を使ってシステマティックに組み立てています。
下は基礎、土台のアップです。土台の下に見える黒いものは、基礎パッキンと呼ばれる、通気のために土台を浮かす樹脂製の部品です。赤と青の管は、給水管、給湯管です。
土台の下に基礎のないところがあります。これは人通口( じんつうこう )で、設備のメンテナンスなどで床下を人が動けるように配慮されています。基礎のないところには柱は落としません。
下の黒い金具は、土台に付けられた金具のアップです。これに大引を引っかけて、横からドリフトピンという金具を打ち込んで留めます。黒い金具の上のパイプは、柱を受ける金具です。
下は黒い金具の反対側を見たものです。土台の横に黒い金具を留めるボルトがあります。このような金具は、工場で事前に付けられて現場に搬入されます。
部材を設計図どおりの長さに切断したり、仕口( しぐち:直角の接合部 )を切削したりといった作業は、工場で事前にされてきます。このように事前にカットしてくることをプレカットといい、その工場をプレカット工場といいます。
現場で丸ノコの音がほとんど聞かれなくなりました。
下は大引の下に金属製の束( つか:短い柱 )を取り付けています。束を付けてから、土台の黒い金具に落とし込んで、横からドリフトピンを打ち込んで大引を留めます。
下は土台と大引の間に、100mm厚のグラスウールを敷いているところです。グラスウールが下に落ちないように、布をタッカー( ホチキス )で留めてから載せます。土台、大引がオレンジ色になっているのは、防腐、防蟻剤を塗ったためです。
グラスウールを敷き詰めたところです。外の空気は土台下のパッキンから入りますが、冷たい空気が入っても、グラスウールから上は暖かいというわけです。木造はコンクリートや鉄よりも断熱性があり、さらにこのように厚いグラスウールを敷いています。へたなマンションよりも暖かそうです。
グラスウールが敷けないところがあります。ユニットバスを落とし込むところです。ユニットバスは、高価なものだと裏側に断熱材が付けられています。また排水管などのスペースが床下に必要です。
そこでは下のように外壁側のコンクリートにスタイロフォーム( 内部に気泡を多く閉じ込めた発泡材 )を接着し、パッキンのところにはウレタンを吹き付けて外の空気が入らないようにしています。ユニットバスのところは通気が取れなくても腐る心配がなく、通気口をふさいでも問題ありません。
基礎、土台の準備が終わったら、クレーンをもちこんで、一気に棟上げ( むねあげ )です。今の木造の棟上げは非常に早く、昔の棟上げを何度も見ている私には、あまりにも早いので少々、心配になってくるぐらいです。
棟上げの早さのわけはプレカットと金具です。土台、大引の接合と同様に、柱と梁、梁と小梁はすべてこのような金具で行われています。取り付け金具もプレカット工場で事前に付けられてくるので、現場では差し込んでドリフトピンを打ち込むだけです。ピン工法でと呼ばれるもので、下はその模型です。
柱の取り付け金具に梁を上から落とし込んで、横の孔にドリフトピンをハンマーで打ち込みます。
上から見た写真です。
下は2階の梁の接合部です。梁下には金具を入れる2本のスリットと反対側の金具を留めるボルト、梁横にはドリフトピンの頭が3つ見えています。大きな梁を支えるには、ドリフトピンの数を増やします。
驚いたことに、床に張る合板も工場でカットしてきます。以前は棟上げの後に、現場で調整しながら床をつくっていきましたが、今や、棟上げ時に床下地まで一気につくってしまいます。床があれば、その後の作業は楽です。
朝から初めて夕方には軸組、1階床下地、2階床下地、屋根下地までできてしまいます。
このような金物を使ったピン工法には、一長一短があって、専門家の間にもあれこれという人はいます。ピンの接合部が構造的にどうとか、火事の際にピンだけで支えているのでどうとか・・・。
しかし、私が独断と偏見で強引に結論付ければ、従来の大工さんがノミでつくった仕口とボルトによる接合よりも施工に無駄がなくて合理的で、構造的にも安全で、今後、これが木造軸組工法の主流になると思います。
ノミを使える大工さんは今後激減するでしょうが、木造軸組は生き残って、より高性能化、工業化が追求されていくと考えます。
今日のまとめとして
木造軸組、職人芸よりプレカット
となります。
次の工程は、次回でお話したいと思います。建築の勉強の一端にしていただければ、幸いです。