区分マンションでは考えられないパフォーマンス
シェアハウス運営で事業規模を拡大
大学を卒業後、都銀に入行したものの組織の風土と肌が合わず、サラリーマンを卒業するために、不動産投資を始めたきょうへいさん。前回は、きっかけや手始めに買った区分マンションについてお聞きしたが、後編では、次に取り組んだシェアハウスについて、今日までのプロセスに迫ろう。

「区分よりも高利回りが期待でき、キャッシュフロー(CF)が得られるという理由で選んだシェアハウスですが、2015年に買ったのが、東京都下と埼玉県内の戸建てでした」(きょうへいさん。以下同)
物件のスペックは次の通りだ。
■東京都下の物件
価格:880万円/リフォーム代:550万円
築年数(当時):40年
家賃収入:月25万7000円(光熱費別)
利回り:21%(物件+リフォーム代に対して)
入居人数:7人
■埼玉県の物件
価格:970万円/リフォーム代:300万円
築年数(当時):28年
家賃収入:月23万円(光熱費込み)
利回り:21%(物件+リフォーム代に対して)
入居人数:6人
都下の物件の最寄り駅は京王線の主要駅で、新宿まで電車で20分ほど。「30分以内なら若い世代を中心にシェアハウスの需要はあるだろうと。ここは5年ほど空き家だった再建築不可のボロ物件だったので、積立投資の利益から550万円を使い、業者さんに頼んでリノベーション、一部はDIYをしました」
物件とリノベーションで総費用は1430万円だが、月の家賃収入は25万7000円あり、表面利回りは21%と高水準を実現。女性専用のシェアハウスを始めたところ、会社員や俳優志望の若者やフリーターなど、20~60代の入居者が住み始めた。
「シェアハウスのポータルサイトやジモティで客づけをしましたが、難なく集まりました。入居時は1万5000円のデポジットを徴収するくらいで、敷金・礼金はなし。冷蔵庫や洗濯機などの家電、ベッドもあり、コスパや利便性の高さが受けたようです」
埼玉の物件は5LDKの物件を、300万円かけて6LDKにリフォーム。業者との提携ローンで220万円を借り、残りは自身で支払った。初期コストはトータルで1270万円だが、利回りは21%。「ただし、この物件の水道光熱費は家賃と共益費に含まれるので、差し引くと利回りは19%くらいです。それでも、ローンを返済してもこれら2棟で月20万円のCFは出るので、区分マンションとは全く違います。セミリタイアへの道がやっと開けました」
これに手ごたえを感じたきょうへいさんは、2016年に神奈川県で2棟、17年に埼玉県で1棟の戸建てを購入し、シェアハウスとして運営を始めた。
■神奈川県の物件@(2016年)
価格:500万円/リフォーム代:300万円
築年数(当時):40年
家賃収入:月23万円(光熱費込み)
利回り:34%(物件+リフォーム代に対して)
入居人数:6人
■神奈川県の物件A(2016年)
価格:1050万円/リフォーム代:500万円
築年数(当時):29年
家賃収入:月38万円(光熱費込み)
利回り:29%(物件+リフォーム代に対して)
入居人数:9人

■埼玉県の物件A(2017年)
価格:1390万円/リフォーム代:300万円
築年数(当時):33年
家賃収入:月24万8000円(光熱費込み)
利回り:17%(物件+リフォーム代に対して)
入居人数:6人

各物件はリフォームに300万〜500万円かけたが、いずれも高利回り。「物件価格が高いと思ったら、とにかく指値を入れます。うまくいけば、自分にとって高収益の優良物件にすることができますから、しないともったいないです」という。ちなみに、神奈川県の物件@は借地権なので価格が安い分、毎月2万5000円の地代を支払っている。
これだけ多く物件を自主管理するとなると、かなり大変そうだが……。
「共用部の使い方、騒音など、入居時のルールは内見のときに説明し、納得のうえ入居してもらうだけで、トラブルはかなり抑えられます。まあ、それでもゲームの音や発声練習とかでクレームは出るのですが(苦笑)。何かあれば電話やメールが届くので、その都度、対処しています。あと、清掃や管理、客づけは業者さんに頼むこともあれば、家賃の減額などを条件に入居者にお願いすることもあります」
週に1回の清掃や備品の補充を条件に、シェアハウス内にスタッフを置くようなもの。協力者がいることで、自身の手間を軽減することができた。なお、現在は物件を管理する法人を設立してスタッフを雇用しているので、協力者がいない物件の清掃などは自社で行っている。
シェアハウスの転貸や1棟や
戸建ての物件の運営にもトライ
2018年にはシェアハウスの転貸を始めた。「当時はかぼちゃ馬車事件があり、サブリースをしていた会社がつぶれて、途方に暮れるオーナーさんがたくさんいました。そのときに、『私がかぼちゃの馬車のオーナーならこうします』という記事をSNSで公開したら話題になってオーナーさんから相談が舞い込み、自主管理が難しい方の物件を私がお借りして、運営することを提案したのです」
物件はきょうへいさんが一括で借り上げて運営するなど、計100室を管理、オーナーから報酬を受け取る流れだ。そして、シェアハウスの運営に転貸が加わることで収益はかなり安定し、いよいよ、サラリーマンから卒業することに!
「働きながら管理するのは骨が折れましたが、その経験が転貸に活きたと思います。何よりも、やっとセミリタイアでき、望む生活が手に入りました」
専業大家になったきょうへいさんは、その後もシェアハウスを買い続けるかと思いきや……、昨年は神奈川県で1棟アパートと戸建て2棟の計3物件を購入。戸建ては、シェアハウスではなく、ファミリーや夫婦に貸しているという。
「始めたころは、運営は大変でも低リスクを取りましたが、不動産投資自体に慣れ色んな情報も入るようになり、1棟など他の物件にもトライしたいと思ったのが理由です。正直なところ、もう手間はかけたくないというのもありました(笑)。アパートは価格が600万円で、1Kが6部屋。家賃は月に23万4000円あるので、CF的に問題はありません。戸建ての方はともに60平米くらいで、シェアハウスにするには狭いので、普通に貸しています」

さらに、今年は神奈川県で借地権付き戸建てを200万円で購入。月7万5000円で入居者に貸し、2万4800円の地代を支払っている。また、先日東京都内に12室全空のシェアハウスを購入し、現在はリフォームに取り組んでいる。現在は、計11物件の運営と転貸をしながら、充実した日々を送っている。
最後に今後の抱負を尋ねたところ、「良い条件の物件があれば買っていきますし、新しいことにもチャレンジしていきたいと考えています」とのこと。紆余曲折を経て、セミリタイアを果たしたきょうへいさんだが、今年で33歳。これからも、専業大家として活躍する日々が続きそうだ。
なお、きょうへいさんに関しては、インタビュー動画もあるので、そちらも併せてご覧いただきたい。
健美家編集部(協力:大正谷成晴)