2023年12月20日に工事着手
台湾の半導体メーカーであるTSMCが工場を設けたことで注目を浴びる熊本県において、12月20日に国内不動産大手の大和ハウス工業が新たな大規模工業団地の開発工事に着手した。工業団地の名称は「DPIシリコンヒルズ熊本」。
開発地は上益城郡の益城町(かみましきぐん・ましきまち)で、熊本市の西・阿蘇くまもと空港の南側に位置している。
※引用:益城町
既存の工業団地である「セミコンテクノパーク」からも近い場所だ。セミコンテクノパークは阿蘇くまもと空港の北側に位置している。
※引用:熊本県
DPIシリコンヒルズ熊本の開発面積は約7.9万㎡(約7.9ヘクタール)で、6つの区画に分割される予定。
阿蘇くまもと空港から約2.5km・九州自動車道のインターチェンジから約8km・熊本駅から約18kmという立地で、交通利便性の高さは申し分ない。
基本的には半導体関連企業の進出を見込んでいるが、食品工場などの開発にも適した立地だという。
大和ハウス工業が発表したプレスリリースによると、同社と益城町は2023年8月に協力協定を締結しており、今後積極的な企業誘致と地域の活性化を図るとのこと。
今後の事業スケジュールとしては、2024年5月に造成工事を完了、同年夏以降に建物の建設工事を着工し、2027年の冬に全施設を竣工する予定だという。
熊本県は積極的な工業用地確保の動きを見せる
世界最大手の半導体受託製造企業とも言えるTSMCが熊本への進出を発表して以降、熊本の不動産市場は半導体バブルともいえる様相を呈しているが、行政もこの機を逃すまいと動いている。
熊本市の経済観光局は2022年12月に「半導体関連産業の集積に向けた産業用地整備方針」を策定、熊本県も2023年3月に「くまもと半導体産業推進ビジョン」を策定した。
経済観光局が作成した資料を見ると、2021年度には22件の半導体関連企業が熊本県に進出しており、熊本県では過去最多の進出件数を記録した。
※引用:熊本市
資料には熊本県のことを指して「世界有数ともいえる半導体関連企業の集積地である」と記載されている。
AIの発達も相まってTSMCの件ばかりに目が行きがちだが、多くの人が思っている以上に、熊本県では半導体産業の集積が進んでいる状況だ。
一方で、県と市が認識している課題は大きく分けて2つある。工業用地の不足とサプライチェーンの構築だ。
サプライチェーンの構築とは、半導体を製造するための機械装置作成・材料調達・半導体の設計・製造の前工程・後工程を、滞りなく進められる環境を整えることを指す。
これについては熊本県単独での対応が難しいとされており、九州全体ひいては日本全体での広域的な連携が必要とされている。
熊本県内に限らず世界へ目を向けた産学連携の強化・人材の確保に向けた支援や交通網の強化などが、対策として挙がっている状況だ。
工業用地の不足は言葉の通りであり、工場を建てる用地の造成が足りていないということを指す。
用地の造成は急ピッチで計画されており、熊本県の企業立地案内を見ると、その大半が半導体関連産業の集積に向けた用地の案内で占められている。
半導体産業の拡大に向けた取り組みは盛んだが、足元では進出企業の増加による交通渋滞なども都市課題として浮上しており、急激な産業集積による歪みが表出していることも事実だ。
さらなる産業の拡大と足元の都市課題解決を並行して進められるか、熊本県の今後から目が離せない。
取材・文:
(はたそうへい)