再建築不可物件というのは、投資家さんであれば一度は聞いたことがあると思います。しかし、再建築不可物件を購入したことがある投資家さんは多くはないようです。
私は不動産投資を始めて1年目の終わりころ、再建築不可、築古、低家賃の木造アパートを購入しました。購入した価格にちなんで、私はこの物件を『100万円アパート』と呼んでいます。
■不動産投資のすばらしさを教えてくれた1棟目のアパート
公務員の仕事を辞めるために始めた不動産投資。1棟目のアパート(鉄骨造、築11年、2DK×8戸)を購入してから1年が過ぎる頃には、大家としての自分にも慣れてきました。
物件を買ってしばらくしてから長期入居の方の退去があり、50万円以上の原状回復費用がかかったときは焦りました。でも、それ以外はおおむね順調で、1年間で100万円の貯金ができました。
当時公務員だった私は、公務員の給与で100万円を貯めるの事の大変さを痛感していたので、1年間で100万円を貯められる不動産投資の素晴らしさを実感しました。「始めて良かった」と思いました。
■RCマンションの物件情報
そんなある日、ポータルサイトでRC造、1K×6部屋、築10年程度という物件を発見しました。早速問い合わせをすると、RCマンションは売り止めになったという事でした。
不動産屋さんは、「売り止めになった事情が複雑で電話では説明しにくい」と言うので、現地で話を聞くことにしました。現地で落ち合うと、担当者さんは、この物件は最初、RCマンションと木造アパートの2棟をセットで売りだしていたと教えてくれました。
不動産屋さんの話はこうでした。
・木造アパートとRCマンションの所有者は全くの他人で、不動産屋さん主導で売り出した
・木造アパートもRCマンションも駐車場がなかったので、木造アパートを壊して、駐車場にしてRCマンションとセットで売買するつもりだったが、木造アパートの入居者の立ち退きに失敗した
・今になってRCマンションの所有者が売らないと言い出したので、木造アパートだけ売ることができる
何だか怪しい話になってきましたが、木造アパートの価格は200万円という事でした。安い理由は、接道に問題があり、木造アパートを単体で購入すると再建築不可になるためということです。
RCマンションと合わせて購入すれば、接道問題が解消されて再建築が可能になるのですが、RCの持ち主が「売らない」と言っているので、どうにもなりません。
■200万円の木造アパートの(1K×8戸)のスペック
このアパートには、再建築不可ということ以外にも、色々と気になる点がありました。マイナスのスペックをまとめると、このようになります。
● 3点ユニットバス
● 駐車場はナシ、近隣に貸し駐車場もナシ
● 洗濯機置き場が室外で、冬季は洗濯機が凍って動かない
● 生活保護者が家賃2万円で3名、家賃を払わない入居者1名、計4名が入居中
一方で、プラスのスペックもありました。
⇒信州大学の学生さんを取り込めるかもしれません。
〇車がなくても生活できるエリア
⇒車社会の長野県ですが、この地域は商業施設、金融機関、病院が近くにあり、車を持っていなくても生活できるような気がしました。
〇室内リフォームが不要
⇒前のオーナーさんが室内をリフォーム済みで、リフォームの必要がありませんでした。
全室、壁には杉板が張ってあり、いい雰囲気でした。
杉板の壁は、クロスの張り替えの必要がないので助かります。
流し台も、古いけれど十分にきれいでした。
■再建築不可、築古、低家賃アパートの購入を決断
2棟目を買いたいと思っていた私ですが、この物件を前にして、購入するか?購入しないか?悩みました。
・築古の再建築不可のアパートを購入してもいいんだろうか?
・1戸2万円で満室にすれば月の家賃収入は16万円になり、200万円で購入すれば、利回り100%超えの高利回りになるけど。
・不動産投資に使える現金は100万円しかない・・・
購入したいような、購入してはいけないような、微妙な気持ちでしたが、思い切って「120万円だったら購入します」と言ってみました。本当は100万円と言いたかったんですが、なぜか120万円と言ってしまいました。
次の日、不動産屋さんから、「120万円でいい」という返事をいただきました。その電話の中で、「測量をしないで売買するので」という理由で、物件価格が100万円まで下がりました。
後日、その不動産屋さんが言っていたことですが、予め売主さんは100万円までの指値は受け入れるつもりだったようです。
■再建築不可、築古、低家賃の100万円アパートのオーナーに
3月の暖かい日、物件代金100万円と諸費用20万円を握りしめて契約決済会場の司法書士事務所に行きました。決済が終わった時は晴々した気持ちとは言えませんでしたが、100万円アパートのオーナーになりました。
決済前も後もこの物件を買っていいのか(良かったのか)という不安は消えませんでした。しかし、物件代金の100万円は不動産投資で手に入れたお金です。元々なかったお金だと思えば、最悪ゼロになってもいいと考えるようにしました。
一方、決済が終わった時の売主さんは、「アパートが売れてとても嬉しい」と言ってました。私とは対照的でした。
■100万円アパートの運営開始
購入後、収益を上げるためにできることを実行していきました。まず、生活保護者の家賃を2万円から、当時の松本市の住宅扶助の上限37,600円に引き上げることにしました。ところが、市役所に家賃の値上げを伝えると、「値上げはできない」と言います。
しかし、もう一度、抗議のような形で相談に行くと、「アパートのオーナーが変わるということは、新たに契約を結びなおすことになる。だから、家賃も新たに決めることができる。住宅扶助の上限37,600円でもかまいません」という事になりました。
これで、生活保護者3人の年間家賃が、「37,600円 × 3戸 × 12ヶ月 = 約135万円」になり、表面利回りは135%に上がります。(数年後、生活保護者の住宅扶助の上限は35,000円に引き下げられて、利回りは下がりました)。
次に、家賃を払っていない滞納者を追い出しました。家賃の回収より追い出しを優先したので、半年分くらいの家賃を踏み倒されましたが、それでよかったと思っています。
予定通り、リフォームはほとんどせずに済みました。照明をLEDシーリングライトに交換したくらいです。入居者さんに洗濯機置き場を室内に作ることを提案しましたが、室内が狭くなるという反対運動を受けたので止めました。今も、洗濯機置き場は室外のままです。
■現在の100万円アパート
このアパートでは一時期、生活保護者が4人まで増えましたが、現在は一人もいません。退去理由は次のようなものです。
・アパートで自立した生活ができなくなり、施設に行ってしまった
・体調が悪くなり入院して1週間で亡くなった
・精神が不安定になり強制退去になった
現在の100万円アパートの家賃収入は、「家賃2万円 × 8戸 × 12月 = 192万円」です。100万円で購入したアパートなので、表面利回りは192%です。最近は、退去の度に家賃を上げて2.2万円で募集しています。数年後には利回りが200%を超えると思います。
現在、生活保護ではない方で満室の100万円アパートですが、カオスな状態は続いています。例えば入居者同士の小さないさかいがあるようです。ありがたいことに、管理会社さんが対応してくださっています。
信州大学の学生さんが入居していた時期が少しだけありましたが、現在、学生さんは一人もいません。理由は想像できます。私も学生さんは、普通のアパートで学生生活を楽しむのがいいと思います。
■築古低家賃100万円アパートの運営
低家賃の築古再建築不可の100万円アパートは、固定資産税等の維持費も安く、年間150万円以上のお金を残してくれます。台風、大雪で比較的簡単に壊れますが、火災保険で直しています。
「低家賃の物件は、エアコンが壊れただけで家賃の数ヶ月分が飛んでいく」なんて言われますが、それは本当です。これについては、エアコン、給湯器、水回りの設備についてプロパンガス屋さんが協力して下さるおかげで、大きな負担なく運営できています。
入居者さんからの要望はほとんど出ませんし、出ても断っています。以前、TVインターフォンを設置して欲しいといわれた時は、「この家賃ですから無理です」と言うと、それで終わりました。
この物件は、「築年数が古くても、再建築不可でも、高利回り高稼働物件であれば運営していける」ことを私に教えてくれました。
■再建築不可物件について思う事
私はこの物件以外に、再建築不可物件を購入していません。100万円アパートを購入後に、利回り20~30%の再建築不可物件を何回か検討しましたが、将来の売却(出口)のリスクが大きすぎて購入には至りませんでした。
それに、私の投資地域では利回り20~30%の再建築可能な物件情報は普通に売られていて、購入することができます。わざわざ再建築不可物件を購入する必要がありません。
今後も、高利回りの再建築不可物件があれば、購入の検討はすると思いますが、積極的に購入していくということはないと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。皆様の参考になれば幸いです。