世間的には新年度ですが、オイラのメイン法人の一つが今月は決算月ということで、仮決算を出してもらいました。
当然ある程度の税額を予想してましたが、期中に1棟売却した物件の建物消費税分が自分が想定してたよりもかなり多くなり、手元資金を安易に次の投資などに使うことなくしっかりと納税資金の準部確保をしておく必要が生じました。
そして、この消費税というのはいくら納税しても金融機関からは評価されませんから、他の税金に比べてもなかなか辛い税金です。(辛い)
お上というのは事業者のやる気を削ぐのが上手です。(もちろん嫌味ですよ)。余裕資金がある程度口座に積み上がったなと思う頃に、納税で取り分を主張して持っていきます(苦笑)
この国で仕事をしているので納税は義務ではありますが、不動産売却益の繰延ができる米国のように、多少のご褒美税制も作ってもらいたいものです。
米国では不動産売却後に更に大きな不動産へ買い換えると、譲渡益の税金を繰延できる税制があると聞いています。更に大きな投資へと誘導する税制というのは、経済が拡大することが前提である資本主義の根幹ではないでしょうか?
日本には経済発展をすることがまるで「悪」のような罰則的な税制が散見されます。人口が減少しても経済発展できるように国のシステムを変更しなければならない時期に来ていると個人的には思っているのですが。
まあ、税制の愚痴をあまり書くと当局に目をつけられても困るのでこの辺にしておきます。
■新築RC投資に逆風、オイラも経験した工事の遅れ
さて、直近の我々不動産賃貸業界の動きですが、今年に入ってからは昨年のUBMに続いて暁建設が破産申請をしたことで、新築RC投資にはアゲンストの風が吹いている状況かもしれません。
首都圏の不動産投資家さんのなかには渦中に巻き込まれて大変な思いをしている方もおられるかと思います。昨年のUBM破綻に続いて起きた暁建築の破綻は、起こるべきして起きた事例なのでしょうか?
昨今は大手の清水建設ですら建築資材高騰や人手不足で赤字に陥ることになりました。中小の建築会社で現場の工程管理や躯体見積もりが甘ければ、たちまち赤字に転落する要因になります。
オイラも10年以上前のことですが、2棟の高層物件を同じ建築会社で建設していた際に作業工程が大幅に遅れて、1棟は半年も現場が動かないことがありました。
その頃はまだ極東の地に住んでいましたから、札幌の現場へは2ヶ月に1度程度しか確認に行けません。建築取り掛かりのころに現場視察に行くと、工事現場に誰も作業員がいなかったのですが、その日はたまたま現場が休みなのかなという程度の認識でした。
ところが、しばらくして現場に視察に行くと、工程表では10階くらいまで進んでいる時期であっても実際には5階程度にしか躯体が組上がっていません。
そこで建設会社に連絡を取り、工事部長さんに工程表の再提出を求めました。しかし、出てきた資料を見ても絵に書いた餅状態で、実現不可能と思えました。
当初の計画は2棟とも3月の春に同時完成予定でしたが、それは諦めることにしました。建設会社と相談のうえ、片方の建設現場の完成を先延ばしにし、1棟の完成に集中してもらうことにして、3月末完成を目指しました。
しかし、その後も工事の遅れから3月末完成も怪しい状態に。3月末完成の前提で入居が決まった部屋もありましたが、春はリフォーム現場も多いのでクロス職人も不足してしまい、現場は相当混乱しました。
共用部がまだコンクリート剥き出しのままなのに、入居の決まった部屋だけクロスを貼って入居してもらったり、工事が入居日に間に合わなかった部屋の入居者にホテルに一時的に住んでもらったりと、オイラも入居者も管理担当者も大変な思いをしました。
■少しずつの遅れが重なって現場はカオスになる
幸いなことにオイラがお願いした建設会社は資金力も充分にあったので倒産とは無縁でしたし、2棟とも時期は遅れましたが無事に完成しました。
建築が遅れたその時に建設現場で何が起きていたのかを後から精査すると、工程管理の甘さに尽きるかと思います。
例えばの話ですがコンクリート打設予定日に何かのトラブルがあって型枠が出来ていなければ、当然ミキサー車やポンプ車にキャンセルを入れることになります。そこで予約の取り直しをして調整で遅れが生じます。
コンクリート打設が終わっていてる前提で組んでいた次の上階の型枠を組む日程も遅れてしまいますから、型枠大工さんの作業日調整が出てきます。同時に電気の配線を通す作業も日程も組み直しになります。
型枠大工さんたちも最初の現場のコンクリート養生期間は次の現場の日程を入れてますから、余裕がなければ後回しになります。
なんとか遅れて躯体が上棟してからも、断熱吹付、軽量鉄骨組み、プラスターボード貼り付け、給水排水管の配管や電気配線・ユニットバスの設置・給湯・暖房・エアコン・キッチン・トイレ・照明・諸々の設備設置、クロス貼りなど作業があります。
それぞれが勝手に工事を進めるわけではありません。すべてに工程があり、調整が必要です。少しずつの遅れが重なって次の作業が入れない状態になると、建築現場はカオス状態になります。
現実的には工事現場では工程や日程には幅を持たせているはずですから、どこかで作業が遅れてもどこかで作業の遅れは吸収できるはずですが、そのバッファーである余裕幅を超えてしまうと工程は全て組み直し、先送りになります。
そして型枠、電気、設備、コンクリート打設などそれぞれの作業を工程の中にうまく配置できなくなり、工事現場がストップしてしまいます。それが数年前にオイラの工事現場で起きたことです。
■急激に大きくなった会社で起きること
建築現場が遅れた原因は発注したオイラにもあります。それはオイラ自身が建築会社を選定し、お願いしたからです。ですので遅延したことに対する損害賠償なども求めませんでした。おかげで今でもその会社さんとの関係は良好です。
そして、この経験はその後のオイラの新築企画にとって良い経験になりました。この経験があったからこそ、その後も40棟あまりの新築を造ることができたと言っても良いでしょう。
一般的に賃貸マンションの企画や建設はいかにコストを落として利回りを上げるかということが最大の焦点になります。その際、3月の繁忙期に竣工を間に合わせたいという施主の意向が強く反映して、無理をした工程でも営業が引き受けてしまうこともあり得ます。
(オイラも当時は3月竣工をマストとして考えていました)
また、建設会社が急成長している時は、概して会社内のパワーバランスで営業の力が大きくなりがちです。現場に無理を言ってでもコストを抑えたり、見積もりを甘くした営業で請負をとったり、無理な工程でも仕事を増やして現場にねじ込んだりすることも考えられます。
加えて急激に大きくなった会社では、社内の人間管理体制が整わないことがあります。その結果、末端のスタッフには目が届かなくなり、誰が何をしているのか社長が全体を把握できなくなってしまうのです。
社長、専務、経理部長、現場部長、現場監督、その他合わせて十人くらいの小さな会社なら社長が現場と経理など全て把握できるかもしれませんが、そんな会社の社長がいきなり五十人規模になったら、会社経営根本の資金管理も掌握できるはずもありません。
■破綻した会社の決算書から見えた前兆
破綻した両社がそうだったのかは分かりませんが、決算書には充分にその前兆がありました。
UBMは2018年売り上げが20億だったのが破綻前年2022年には105億とわずか4年で一気に5倍の売り上げになっています。
暁建設は2018年に7億弱の売り上げが5年後の破綻前2023年にはおよそ8倍の53億まで伸びています。ここに怪しさを感じれなかったとしたら、それはおそらく発注側の目が曇っていたのかもしれません。
投資で目を曇らせるのはいつだって「欲」が原因です。
欲が大きくなるほどに目が曇ります。
そしてオイラ自身も、その曇ったメガネを外すのは難しいことです。