本業ではないので相談を受けても答えることはしていないが、多くの相談が寄せられる。最近も都心にある新築ワンルームマンションを購入したものの、手放したいと思っているという医師から相談を受けた。
それによると勧誘を受けて強引に契約をさせられて購入。現在の残債は4000万円ほど。毎月の支払は10数万円で、そのうち、賃料で払っているのは約8割ほど。残りは自分が払っているという。
販売にあたり、不動産会社は
・税金対策になる
・家賃保証があるから、入居者がいなくても安定した家賃収入が入る
・老後の備えになる
・いざとなったらいつでも当社が満額で買い取る
などと言っており、それを信用して購入したものの、毎月の負担が辛いので売却したいと考えているという。
ここまでの話の中ですでにいくつもの問題があることに気づいた方も多いだろう。そして、それに気づいていない方は注意したほうが良い。あなたにも同じ状態に陥る可能性がある。
投資の勧誘を受けて失敗する人には共通点がある。
「裏」を取らないという点だ。裏を取るとは警察、報道関係などで供述や情報などの真偽を確認することを言う。裏づけを取ると言えばお分かりいただけるだろうか、相手の言ったことが正しいかどうかを検証するという作業である。
たとえば、節税になるという言葉に多くの人は弱い。家賃負担があったとしても、借財を抱えることで税金が安くなりますよ、節税になりますよと言われると、それだけで得した気分になるのである。
だが、それは本当だろうか。そもそも、それを聞いた時点で自分が払っている所得税等の額を正確に思い浮かべられる人はどれだけいるだろう。その額からどの程度軽減されるか、それを相手は説明してくれただろうか?
当然だが、税金はいくら軽減措置があると言っても払った分までの軽減しか受けることはできない。
そもそも、さして税金を払っていない人であればいくら軽減されても、それに対して数千万円の借金を抱えるのはお得だろうか?
また、「入居者がいなくても安定した家賃収入」「当社が満額で買い取る」などという文言は口頭だけでなく、契約書その他に文字をして明確に記載され、それに双方が納得したものだろうか。口頭での説明はいくらそれが甘いモノであっても信用してはいけないのである。
ところが、騙される人たちの大半はこの裏を取る作業をやらず、相手が言ったことがすべて正しいと考えがち。
考えてみて欲しい。相手はあなたにモノを売りたいのである。悪意が無かったとしても、都合の悪いことは言わないでおこうと思うのが人である。自分がモノを売る立場になったら、たぶん、同じことをするのではなかろうか。
そして、裏を取るのは実はそれほど難しくはない。高利回りを示されたら、本当に相手が言っている賃料で貸せるものかどうか、各種不動産ポータルで周辺の同種物件の相場を調べて見れば分かる話である。
物件価格が妥当であるかどうかも、周辺相場でいくら取れるかから計算すれば割に合う話かどうかはすぐに分かる。そのひと手間を惜しみ、相手を妄信する。それが失敗に繋がるのである。
また、失敗したようだと相談のメール、電話をかけてくる方々にはそれ以外にもいくつか共通点がある。
ひとつは「強引に契約させられた」「騙された」「言う通りにしたらこうなった」など自分が決断したのではなく、相手に「させられた」という言い方である。
残念ながら、投資は誰もがやらなくてはいけないものではなく、資金的余裕があってやりたい人がやるものである。決断は自分がしたもの、責任を取るのは自分と考えられないのであれば投資には向いていないと思ったほうが良い。
もうひとつ、名乗らない人が多い点も共通している。
電話をかけてきて名乗らず、いきなり、自分がどう困っているかを話し始める人に快くアドバイスできる親切な人は世に多くはない。
昨今世の中を騒がしているシェアハウス問題では相談を受けた不動産関係者が少なくないが、やはり似たような声を聞いた。
どこの誰か分からない人からの「いずれ管理を任せてやるから、なんとかしてくれ」というような相談に親身になりにくいのは当然である。
それ以外にもいくつかあるが、主な点は以上。つまり、「相手の話は無条件に鵜呑みにする」「責任は取りたがらない」人が失敗しやすいということである。
多少意地悪くいえば、「ちょっと失礼であることも多い」ということだろうか。他山の石として参考にしたいところである。
健美家編集部(協力:中川寛子)