• 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集
  • 収益物件 売却査定

2,404アクセス

太田垣章子の「トラブル解決!」入居者が怒鳴り散らす真意を探る

賃貸経営/トラブル ニュース

2020/01/16 配信

賃貸トラブルはさまざまだ。びっくりするようなことが、たくさん起こる。ただその中でも賃借人が高齢者だと、解決までの行程が一筋縄でいかないことは否めない。

建て替えを希望の家主から相談を受けた。6戸のアパートで1戸だけが残ってしまったという、最悪なシナリオだった。
基本交渉がこじれたものは途中から引き受けたりしないのだが、あまりに憔悴しきった家主に懇願されると断れなくなった。悪い癖だ……。

賃借人は70代前半。タクシー運転手をして、まだ現役だという。家賃5万円のアパートで、長年1ヶ月分の家賃が滞納して、追いついていない状態だった。

賃借人は穏やかで良い人だったのだが、最近は手がつけられないくらい怒鳴り散らすということだった。しかも最悪なのは、家主の家とアパートの距離はそう離れておらず、家賃は振込でもなく家主宅に持参しての払いだという。

毎月のように家主は「出ていかない」と怒鳴られていた。その状況に家主は憔悴仕切り、建物の老朽化と賃借人との板挟みで苦しんでいた。

賃借人情報がどれだけあるかが勝負の鍵

建て替えの場合、万が一訴訟に持ち込むと、恐ろしいほどの立ち退き料を裁判官は言い渡す。状況にもよるが、5万円のアパートでも軽く100万円は超えるのは間違いない。

そのためまず滞納があれば、建て替えのことは秘して滞納で訴訟に持ち込むか、滞納を理由に退去交渉していくことが王道となる。

今回、賃借人はすでに建て替え予定を把握しているのと、滞納もまだ1ヶ月分ということで、訴訟を提起できる状態ではなかった。ならば真っ向から、建て替えで交渉していくしかない。

建て替え交渉の場合、本来は家賃をきちんと払ってくれている賃借人に退去してもらうので、とにかく平身低頭に注力するしかない。何をどう言われたとしても、決して怒ってはいけない。ただ怒鳴られれば、いつかは終わるという訳でもない。ここは賃借人の情報をしっかり把握して、もしウィークポイントが見つけたら、そこをじんわり攻めていくことが効果的になる。攻めると反発されて交渉がさらに難航してしまうので、じんわりやんわり気長にいく必要がある。

今回の場合、書類をくまなく確認していくと、どうやら同居している女性がいるらしいということが分かった。ワンルームだし、契約書上は単身入居になっている。

しかし管理会社が同居を突き止め、更新時の書類に女性の名前を書いてもらっていた。続柄は「姉」。怪しさマックスだ。残念ながらこれ以上の情報はなかったが、突き崩すきっかけになるかもしれない。

賃借人の怒りの源を探る

早速この女性の住民票を請求してみた。やはり該当なしだった。偽名なのか、別のところに住民票があるのか分からないが、とりあえず当該物件に住民票がないということは、少なくともこちらにとっていい情報だった。

現地に行ってみると、部屋から女性が出てきた。幸運だった。こんな時は少しでも情報を聞き出せるよう、会話を進めていく。その中で、同居している、本名と賃借人との関係も聞き出せた。

「これ虚偽の記載ですよね」ここで初めて切り出す。「裁判になったらとても不利だから、任意に退去した方がいいのでは」先方の反応見ながら、ジワリ攻めてみた。そうすると意外な回答が返ってきた。

「退去しないといけないと話しているんです。ただ年齢的なことがあって、貸してもらえなくて。それで苛立って家主さんにも怒鳴ってしまって。部屋さえ借りられれば……」

そうだったのか。賃借人は何度か部屋を借りようと不動産会社に行ったが、門前払い。その理由が年齢だったので、気持ちの持っていき場を失った。同世代の家主から「退去勧告」されると、どうしても「人生の勝ち組vs負け組」を意識したのではないか。
5ad0958da02db1bf8f143fcddcf10670_m

片や家もあり収益不動産もあり、建て替えるということはお金もある家主と、一方の自分はタクシーの運転手をしているものの、年齢を理由にワンルームさえ借りられない。貯金がふんだんにあるわけでもない。それが憤りとなり感情を爆発させていたのだろう。

「一緒に転居先を探していきましょう!」
そこから私の部屋探しが始まった。同じエリアで住みたいという希望を叶えるべく、不動産会社に片っ端から電話していった。何件かけても、芳しい回答は得られない。

地主の家主にも、状況を話して協力を求めた。何件電話しただろう。2週間ほど経った頃、ようやく部屋を貸してくれるという家主にたどり着いた。
受任から1ヶ月で転居してもらうことができ、とても幸運な結果だった。

一方で高齢者の転居は、受け皿が少ないために間違いなく難しい。「早く退去を」と逸る気持ちも理解できるのだが、同時に賃借人が借りられない事実に苦しんでいるかもしれない可能性を常に意識しなければならない。

人としての尊厳。そのプライドを傷つけず、寄り添うことの重要性を改めて実感した。超高齢化の日本。問題は待ったなしだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◆◆出版 及び 高齢者問題を考えるシンポジウムのお知らせ◆◆

住む部屋を借りられない高齢者と高齢者に部屋を貸すことを躊躇する家主。高齢者問題を抱える賃貸業界の現状を伝える書籍「老後に住める家がない! 〜明日は我が身は漂流老人”問題〜」(2020年1月9日発売)にあわせて、高齢者問題を考えるシンポジウムを開催いたします。「どうすれば高齢者も安心して住み続けることができるのか」「どうすれば不安なく部屋を貸すことができるのか」をみなさん一緒に考えていきましょう。

詳細お問い合わせはコチラから

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

執筆:太田垣章子(おおたがき あやこ)
章子先生
【プロフィール】
司法書士・章(あや)司法書士事務所
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。著書に「家賃滞納という貧困」(ポプラ社)「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)がある。

健美家サイト会員登録で最新コラムやニュースをチェック!

不動産投資ニュースのライターさんを募集します。詳しくはこちら


ニュースリリースについて

編集部宛てのニュースリリースは、以下のメールアドレスで受け付けています。
press@kenbiya.com
※ 送付いただいたニュースリリースに関しては、取材や掲載を保証するものではございません。あらかじめご了承ください。

ページの
トップへ