日経平均株価が一時59,000円を超え、史上最高値を更新した直後、米国とイスラエルによるイラン攻撃が報じられた。この地政学リスクの高まりを受け、株式市場は急落し、東証REIT指数も2,000ポイント前後での不安定な動きを余儀なくされている。
しかし、こうした相場の混乱期こそ、実物不動産を保有するJ-REITの底堅さに注目したい。
J-REITの平均分配金利回りは現在も4%強を維持している。インフレによる賃料増加を背景に、分配金が増配傾向にあることも大きいだろう。
株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REIT(ジェイリート)でも分配金(株式投資の「配当金」と同義)を毎月もらおうという当シリーズ。
J-REITは年2回決算があり、その決算毎に分配金が出る。
3月決算のJ-REITをいま買うと、3ヶ月後の6月に分配金がもらえる。9月にも決算があるので、12月にも分配金がもらえる。
新NISAの成長枠で購入すれば、今年中に2回分の分配金が非課税になるのも見逃せない。

3月決算のJ-REITは3銘柄だけ!
J-REIT は株式会社と違って、3月決算の銘柄が非常に少ない。東証プライム上場企業のスポンサーが多いため、スポンサーと決算期をずらす慣例があるためだろう。
ジャパンリアルエステイト投資法人
グローバル・ワン不動産投資法人
大和証券リビング投資法人

※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り。
「投資口価格」とは、J-REITの場合の「株価」に相当する。
投資口価格と予想分配金利回りは2026年3月3日終値現在。
J-REIT(ジェイリート)とは、証券市場に上場している金融商品「不動産投資信託」のこと。J-REITを購入すると、株を買うぐらいの小口資金で大規模大家さんの仲間になれる。
J-REITの分配金利回りは3~6%と、一般的な株式投資の配当利回りよりも高水準のものが多い。
そして、3月決算の注目銘柄は大和証券リビング投資法人だ。

インフレに勝つために、ヘルスケア施設より「住居」に大きくシフト
賃貸住宅管理に定評がある大和証券リビング
大和証券リビング投資法人は、2006年に住居特化型リートとして上場した。
その後、商号変更や他のJ-REITを吸収合併したが、2015年にメインスポンサーが交代して「大和証券グループ本社」になった。
2020年、同じスポンサーのヘルスケア施設特化型リートと合併し、商号を「大和証券リビング投資法人」に変更した。
このため、大和証券リビング投資法人は「住居」と「ヘルスケア施設」を保有する複合型リートだ。
※ヘルスケア施設とは、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)等のこと。
ところが、2025年3月期(第38期)の決算説明会資料で、大きな方針転換が発表された。
まずは、投資主(株主)に還元をするために、年間80億円程度売却する方針を掲げた。
売却を継続して含み益を顕在化させ、自己投資口取得も行うことで、投資主(株主)の還元していく方針だ。2025年3月期現在での含み益は1,059億円あった。
次に、ポートフォリオの約3割を占めていたヘルスケア施設の比率を引き下げ、「賃貸住宅の比率を80%台へ引き上げる」と発表した。
この方針転換は、単なる資産の入れ替えではなく、「インフレ時代に勝つ」ための大きな転換だ。

その理由は、アセットごとの「内部成長力」の差だ。
ヘルスケア施設の賃貸借契約はすべて長期の「賃料固定」契約だ。2025年9月末時点の残存賃貸借契約期間の平均が16.7年である。
高齢化社会の日本では、ヘルスケア施設は今後も必要とされ、施設数は増加傾向という点と、長期の固定賃料であるため、景気後退局面でもキャッシュフローが揺るがない点がメリットだった。
しかし、物価が上昇し、通貨価値が目減りするインフレ局面では、賃料を上げられないことは資産価値の実質的な下落を意味する。
ヘルスケア施設の場合、オペレーター(施設運営者)の収入源の大半を占める介護報酬は、介護保険制度で決められている。物価高だからといって、介護報酬がすぐに上がる訳ではない。
つまりインフレ下では、施設を貸す側のJ-REITがオペレーターから得られる賃料は、ある一定の上限という収益の天井がある構造だ。
対照的なのが、賃貸住宅だ。住宅は2年ごとの更新や入居者の入れ替わりが頻繁に発生し、その都度、市場環境に合わせた賃料改定が可能となる。
また、リフォーム等により物件価値を高めることもできる。ゆえに、インフレ下では賃料アップ幅が大きい。
同リートは、賃貸住宅比率を80%台へ引き上げることで、成長率を強化する方針だ。
同時に、保有する物件の地域も厳選していく方向だ。
2025年3月期(第38期)には、賃貸住宅が2,892億円(ポートフォリオの72.4%)、ヘルスケア施設が1,101億円(27.6%)の割合だった。
同期中の売却物件は75億円、物件取得は30億円、自己投資口取得は20億円、分配金18億円、内部留保7億円だった。
そして、2025年9月期(第39期)の決算説明会資料では、賃貸住宅 2,921 億円(ポートフォリオの73.2%)、ヘルスケア施設 1,069 億円(26.8%)。ポートフォリオの中味は「新陳代謝」が進んでいることがわかる。

築年数が古く、立地があまり良くない賃貸物件やヘルスケア施設を売却し、築浅で立地の良く、賃料増額が期待できる賃貸物件を引き続き購入している。
2023年3月期以降に取得した新規物件は、需要の旺盛な関東・近畿エリアに集中させ、同エリアの比率は76.5%から85.6%まで拡大した。人口流入が続く都心部の物件は、賃料増加も期待できる。
実際に、同新規物件の入替時賃料増減率は+8.9%という大きな増額だ。一方で、売却を決めた物件の増額率は1.6%に過ぎない(下図の右上)。
築浅物件に入替えたことにより、修繕などのコストも低下した。


資産の「質」も向上している。上記右下の表にあるように、売却した賃貸住宅の平均築年数が20.1年であるのに対し、取得した物件の平均築年数はわずか1.8年だ。
2025年3月期の決算説明会時点では、売却候補のヘルスケア施設は「2年以内」に売却できれば、と説明していた。ヘルスケア施設の買い手は賃貸住宅物件に比べると少ないためだ。事業継続への影響も考慮する必要があるため、達成時期は未定だった。
しかし、9月期の決算説明会時点では、ヘルスケア施設を買いたいというニーズは、賃貸住宅に比べると少ないものの、ある。そのため、条件等が合えば売却達成時期を前倒しする予定と説明。
実際、ヘルスケア施設の売却は2025年9月期及び26年3月期に11物件の売却を決定するなど、進捗している。
そして、住居とヘルスケア施設の売却は264億円、売却益は33億円だ(25年9月期及び26年3月期)。
同リートは賃貸住宅比率80%を達成した後も、インフレ対応力の高い賃貸住宅比率を引き続き上げていく方針だ。
同リートは、住居系リート(ヘルスケア施設も生活用施設)ゆえの「安定性」が大きな魅力だった。効率的な賃貸住宅管理にも定評がある。その上、インフレ下での方針転換で「稼ぐ力」が強まっている。
また、2020年の合併等で発生した「負ののれん」を含む内部留保は、2025年9月期末で約94億円と潤沢だ。
大和証券リビング投資法人
• 予想分配金:第40期(2026年3月期)2,600円、第41期(2026年9月期)2,400円
• 保有物件数:237
• 取得価格合計:3,927億円(2026年1月30日現在)
J-REITの3月決算銘柄の分配金もらうには、権利付き最終売買日である3月25日15時30分までに購入しておく必要がある。
最後に、投資は自己責任でお願いしたい。







