少し前から、金融機関で転売系の融資が通りづらくなっている、という話を現場で耳にするようになった。
特に厳しくなっているのが、
・古家付きの土地建物を購入し
・建物を取り壊し
・更地として売却する
いわゆる「古家付き→更地転売」のスキームである。
このスキーム自体は、これまでも多くの投資家や不動産事業者によって用いられてきた。
立地や用途によっては合理性があり、必ずしも否定されるものではなかったはずである。
しかし最近は、同じスキームであっても、金融機関の受け止め方が明らかに変わりつつある。
これまでは、無加工での転売は原則NGとされつつも、何らかの加工が入っていれば検討余地がある、という運用が一般的であった。
しかし最近は、「取り壊しただけ」では融資が前に進まないケースが増えているように感じる。
さらに最近では、単に加工の有無を見るのではなく、取得価格に対してどの程度の加工費用が見込まれているか、どれだけ手間と時間をかけて商品化しているかといった、より定量的・実質的な視点で判断される場面も出てきているようである。

■昔の定石が通らなくなっている
背景には、加工の有無を形式的に確認するだけでは、投機性を十分に排除できないという金融機関側の問題意識があるように見える。
私が銀行に在籍していた頃も、投機目的と判断される案件は基本的に融資対象外であった。
ただ一方で、
・なぜこの物件を仕入れるのか
・どのような価値を付加して販売するのか
・事業としての合理性があるのか
こうした点を、一定の整合性をもって説明できれば、検討の土俵に乗る余地は残されていた。
言い換えれば、**スキームそのものよりも「説明の中身」**が問われていたのである。
ところが最近は、そうした説明以前に、スキーム自体を理由に入口で止められてしまう印象がある。
「少し加工すればOK」という暗黙の定石が、通用しなくなってきているのかもしれない。
■なぜ今、金融機関は慎重になっているのか
ポイントは、「加工しているかどうか」ではなく、どの程度のコストと時間をかけて商品化しているのかという点に、評価軸が移りつつあることである。
明確な公式見解が示されているわけではないが、背景としては次のような要因が考えられる。
・不動産価格の高騰が続いていること
・投機的取引に対する金融機関全体の警戒感
・金融庁検査や内部監査を意識したリスク管理
・金融機関としての社会的役割への意識
特に、短期間での値上がり益を前提とした取引については、「市場環境が変わった場合にどうなるのか」という視点で、より厳しく見られるようになっている印象がある。
金融機関が、短期の値上がり益を前提とした取引に対して、以前より慎重なスタンスに傾いているとしても、不思議ではない。

■マンション転売への影響は?
特にマンションの転売については、金融機関側の見方が一段と厳しくなっているようである。
物件種別による選別も強まっており、同じマンション転売であっても、対象によって扱いが分かれるケースが出てきている。
最近では、立地や築年数といった表面的な条件だけでなく、過去の所有権移転の履歴を含めて確認される場面も見られる。
例えば、短期間のうちに業者間で所有権が複数回移転している物件については、事業性や実需性を説明する以前に、慎重な判断がなされるケースもあるようだ。
これは、転売そのものを否定しているというよりも、「価格形成のプロセスが説明できるかどうか」を重視する姿勢の表れと考えられる。
また、マンション転売そのものに対するスタンスを見直す動きも出てきており、取引関係や物件特性を踏まえた個別判断がより強まっている印象である。
今回の動きは、戸建や土地だけの話にとどまらず、マンション転売にも影響が及ぶ可能性がある。
■投資家が今、意識すべきこと
今回の話は、「物件が良いか悪いか」という単純な問題ではない。
重要なのは、
・そのスキームが
・金融機関のリスク認識と合っているか
という点である。
過去に通ったやり方が、今も通るとは限らない。
金融機関のスタンスが変わる局面では、融資の前提条件そのものを見直す必要がある。
「なぜこの取引は事業と言えるのか」「どこが投機と違うのか」を、これまで以上に言語化することが求められている。
なぜ「少し加工すればOK」という考え方が通らなくなりつつあるのか。
金融機関はどこで「投機」と線を引いているのか。
このあたりの金融機関内部の判断構造や、稟議の中で実際に見られているポイントについては、別途整理して書いていききたいと思う。







