水辺空間の利活用をさらに加速
沿川地域と連携したまちづくりを推進
東京都には大小さまざまな河川・水路があり、その数は107河川、全長約858㎞にも及ぶ。隅田川、荒川、多摩川といった大河もあり、近年は下流域でタワーマンション(タワマン)を中心としたまちづくりも積極的に進められている。
なかでも、隅田川等の水辺空間では、下流域を中心に水辺とまちの連続性・回遊性を高め、水辺のにぎわいを生む取り組みを推進。
東京都も、隅田川等における「ゆとりと潤いにあふれる水辺空間の整備」の実現に向けて、学識経営者等による「未来の東京に向けた水辺整備のあり方検討会」(座長 日本大学 岸井隆幸名誉教授)を設置し検討を進めてきたが、6月にその内容を取りまとめた。
本検討会では、これからの水辺整備に求められるものとして、「水辺空間を都市の貴重なオープンスペースとして捉えたうえでの地域の特性に合わせた利活用の促進」「人々の意識や行動が変化するなかでの、ゆとりや居心地の良さ等の水辺空間への新たなニーズやポテンシャルの活用」「水辺空間の整備と利活用を進めることによる防災機能(ハード)と防災意識(ソフト)の向上」の3点を明示。
これらを踏まえた今後の方向性として「水辺のゆとりと潤いを活かした東京の顔づくり」を掲げ、具体的には、点・線・面の考え方による水辺を基軸としたネットワークの構築を示している。
・点:『水辺の拠点』を設定し、重点的に施策を実施
・線:『川辺の軸』を展開し、動線・ネットワークを強化
・面:『水辺の利活用』を進め、水辺の魅力をまちに広げる
「水辺のゆとりと潤いを活かした東京の顔づくり」の取り組みイメージは次の通りだ。
本検討会では、築地や佃・越中島、両国、浅草などを重点施策エリアとしてピックアップ。居心地がよく歩きたくなる水辺空間の創出、民間事業者後連携した利活用の促進、ウォーキングコースの設定など健康増進への取り組み、防災船などを活用した防災訓練の展開などを進める。
気になるのは、周辺地域との関係だ。本検討会では沿川地域のまちづくりビジョン等の都市計画や景観形成との連携、地域や民間と連携した河川施設の活用など、まちづくりとつながった河川整備を推進。高規格堤防や河川公園と連携した河川整備などに取り組む。
1999年の河川敷地占用許可準則の全部改正をきっかけに、隅田川等では利活用が進められ、オープンカフェなどが設置されてきた。
今後は、さらなる利活用やまちづくりを意識した整備が進められることで、沿川地域の再開発も活性化するのではないだろうか。かつ水辺と連携して整備されることで、既存・新規住民にとっても住み心地の良いエリアになっていくはずだ。
2011年度に河川敷地占用許可準則が改正され、地域合意等の一定の要件を満たす場合は、河川敷地においても民間事業者によるオープンカフェの運営は可能になるなど、全国的にも河川空間のオープン化は進んでいる。
活用実績はこの5年で2倍に増加し、アウトドアや健康づくりの場、地域交流やイノベーション施設の整備など、地域の特性に合わせた多様な活用が行われているのが現状だ。
東京都には隅田川以外にも、冒頭に挙げた荒川や多摩川などの大河、他にも無数の川が流れていて、まちのシンボルとしても愛されている。
そんなリソースをうまく使い再開発を進めることで地域の付加価値は上がり、多くの人が住みたいと思うまちになっていくだろう。そんな今後に期待したい。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))