こんにちは、赤井誠です。もう10月になってしまいました。札幌も随分と涼しくなり、朝晩は寒いくらいの日もでてきました。ここでの活動も今月いっぱいで終了し、来月からはまた横浜の方で活動していく予定です。
このような2拠点生活も今年で5年になりました。理想としていた気候のいいところを移り住み、好きなことをして生きていくといった生活に近づいて来たと思います。
今年は横浜の事務所と札幌事務所をかなり大幅にリフォームしました。毎日過ごす環境は自分の理想にどんどん近づいてきていて、さらに前向きに仕事に取り組むことができています。
物件も例年通りに無事、賃貸に関しては高稼働率で推移してます。もちろん私もいろいろ努力していますが、多くは管理会社さんや仲介会社さんの協力によるものだと思います。感謝しています。
また、物件の増減に関しては、今年は今までに2棟の物件の取得にチャレンジしました。銀行融資は問題なく通りましたが、その他の問題で残念ながら取得するまでには至りませんでした。
現在の予定では11月ごろに横浜で土地を決済し、来年にかけて新築を建てる計画が決まっています。このあたりはまたどこかでお話しできたらと思います。
■キャッシュフロー重視で、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)を軽視していないか
さて本題です。不動産投資の世界ではバブル時代は売却によるキャピタルゲインを追求ばかりしていたため、キャッシュフローはあまり重要視されていませんでした。逆に近年は、家賃によるインカムゲインばかりが注目されています。
その結果としてキャッシュフローばかり重要視され、B/SやP/Lが軽視される傾向にあります。
ここ3回ほど貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)についてお話ししてきました。本日は「キャッシュフロー計算書」についてお話ししたいと思います。
1)キャッシュフロー計算書とは
キャッシュフロー計算書とは、一般に企業活動に伴う収入と支出をまとめた書類のことを言います。企業において実際のお金の流れを把握するために作られます。内容を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに分けて、キャッシュの出入りをチェックします。
これらを把握することにより、資金不足が生じないように資金繰りを行い、企業の会計期間のスタート時と終了時でお金の流れにどのような変化があったのかを読み取ることが可能となります。
ただ不動産投資では、大企業と違って売掛金などがほとんどないですし、設備投資もアパートマンションなどに限られています。借り入れも直接売上を伴う設備資金がほとんどで運転資金を借り入れることは通常ありません。
つまり、普通のキャッシュフロー計算書とは少し違うやり方をする必要があります。
2)営業活動によるキャッシュフロー
次に、キャッシュフローに関して、不動産業の場合に注意することを説明したいと思います。
営業活動によるキャッシュフローとは、本業の賃貸業による収入と支出の差額です。当然ながら、この差額がプラスならば、本業での事業が順調であることを意味し、マイナスならば、状況はあまりよくないことを意味します。
賃貸業の場合、家賃収入から役員報酬・外注費(管理料など)・広告宣伝費・修繕費・外出交通費・接待交際費・会議費などを引いたものです。これらが大きくプラスならば、賃貸業が健全とした状態であるということになります。
3)投資活動によるキャッシュフロー
一部の人は投資活動として、不動産賃貸業と併せて株式投資や金の売買などをおこなっています。そこでのお金の動きがこの「投資活動でのキャッシュフロー」に属します。しかし、それらで損失を出していると本業にも差し支えますので、基本的にはやらないほうがいいと思います。
そうなるとここには、「不動産売却により得たキャッシュ」が属することになります。こちらは現在の市況ではマイナスになる方はほとんどいないと思います。償却した不動産価格より安く売却せざるを得ない状況になった場合は、完全なる失敗投資です。
4)財務活動によるキャッシュフロー
不動産賃貸業における借入金は物件購入の際に行うもので、財務活動における現預金の支出は基本的に返済のみとなるため、この項目も不動産には深く関係があるものではありません。
結局、不動産投資の場合は以下を考えればよいということになります。
決算書による純利益は、
で算出されます。純利益とキャッシュフローの違いは、借入金元本と減価償却費を計算に入れるかどうかだけです。
大切なのは純利益もキャッシュフローもきちんと出る状態をつくることです。純利益は法人の場合、減価償却で多少は意図的に操作できます。そして、キャッシュフローを出すことは比較的、簡単にできます。借入金元本を減らせばいいのです。
多くの方は融資を受けていると思います。その際に、頭金をきちんと入れて、借入金元本を減らしているなら問題ないのですが、融資期間を長くすることで借入金元本を減らしているのだとすれば、これはリスクの先延ばしでしかありません。
以前にもお話ししましたが、「キャッシュフローが出るから」という理由だけで安易に購入を決める投資家がいるため、「キャッシュフローが出れば売れる」と考えた不動産業者が高金利だけれど融資期間が長い金融機関を使い、意図的にキャッシュフローを多く見せる手法で物件を売ることがあります。
キャッシュフローが出る状態にしなければ事業活動が停止してしまいます。そのため、キャッシュフローを大きくすることは長く安定経営を続けていくためには必要です。しかし、何度もお伝えしていることですが、その手段が問題なのです。
自己資金が足りない最初のうちは、高金利の長期ローンを組むことは仕方ないかもしれません。しかし、ある程度の資産規模が形成されたのちは、B/SやP/Lもきちんと良好にし、さらにキャッシュフローも出る状態をつくるようにしていく必要があります。
■まとめ
今まで、17年以上賃貸経営をやってきて、日本中に多くの同志ができましたが、中には「チャレンジ」という名で経営指標を無視した無謀な拡大をしている人もいます。
たまたま不動産バブルで売りぬけて上手くいった人もいる一方、きちんと経営指標を見ていないがゆえに破綻した人も何人かみてきました。これからも経営指標を理解せずにやっている方で、破綻する人も出てくるでしょう。
B/SやP/Lとキャッシュフロー計算書は健全な経営状態を把握したり分析したりするには非常に重要な指標です。何度もいいますが、最低限このような経営数字は把握したうえで、賃貸経営をしていただきたいと思います。