日本株高騰の影で、東証REIT指数は今年2月下旬から1,600台後半まで落ち込んでいた。
しかし、底を打ったのか、1,700台に戻ってきたところで、3月19日に日本銀行がマイナス金利政策の解除を発表。同時に、J-REITや株式のETF等のリスク資産の新規買入の終了、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の撤廃も発表した。
すると、東証REIT指数は1,800台へ上昇した。J-REITは有利子負債の割合が大きいため、金利が高くなると不利になるはずだが、高い利回りのJ-REIT銘柄を安く買える好機とみなされているのだろう。
さて、4月決算のJ-REIT銘柄をいま買うと、3ヶ月後の7月に分配金がもらえる。J-REITは年2回決算なので、10月決算後の翌1月にも分配金が受け取ることができる。
また、J-REIT銘柄はNISAの「成長投資枠」でも購入できる。
4月決算の注目銘柄は積水ハウス・リート投資法人と投資法人みらい
J-REIT の4月決算は8銘柄ある。
NTT都市開発リート投資法人
KDX不動産投資法人
いちごオフィスリート投資法人
スターツプロシード投資法人
星野リゾート・リート投資法人
トーセイ・リート投資法人
積水ハウス・リート投資法人
投資法人みらい
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り。
「投資口価格」とは、J-REITの場合の「株価」に相当する。
投資口価格と予想分配金利回りは2024年4月2 日終値現在。
J-REIT(ジェイリート)とは、証券市場に上場している金融商品「不動産投資信託」のこと。J-REITを購入すると、株を買うぐらいの小口資金で大規模大家さんの仲間になれる。
J-REITの分配金利回りは3~5%台と、株式投資よりも高配当なものが多い。
そして、4月決算の注目銘柄は積水ハウス・リート投資法人と投資法人みらい。
住居メインの総合型リートに方針転換へ
スポンサーの強みを活かす積水ハウス・リート
積水ハウス・リート投資法人のスポンサーは東証プライム上場の大手建設会社、積水ハウス株式会社。
同リートは2014年にオフィスビル特化型リートとして上場した。
4年後に、同じスポンサーを持つ積水ハウス・レジデンシャル投資法人(住居特化型リート)を吸収合併し、総合型リートになった。
合併した当時は、合併前の各リートのメイン資産であるオフィスビルと住居の両方に力点を置いていた。
しかし2023年に、ポートフォリオを住居中心に変更することを発表した。
変更前の中期的な投資比率目標は、住居45%、オフィスビル45%、ホテルや商業施設等15%程度と、住居とオフィスビルが半々の割合だった。
変更後は、住居65%、オフィスビル30%、ホテルや商業施設等5%程度に見直した。
理由は、大規模なオフィスビルの需給回復はまだ見通せない状況だが、住居はコロナ禍前ほどに稼働率が回復し、賃料も上昇しつつあるからだ。
また、スポンサーの積水ハウスの「ハウスメーカー」としての強みを活かすため、住居メインの方針に転換したようだ。
同社の主な開発状況は下記の図の通り、住居がほとんどだ。施工済の住居が12物件(1,090戸)、建設中が7物件(780戸)。その他、施工済のオフィスビル1物件、施工済のホテル2物件だ。
スポンサーのパイプラインを通じて、同リートが取得する物件は住居が多くなるだろう。
なお、上記の表にある「ザ・リッツ・カールトン京都」は、一時同リートが保有していた。しかし、コロナ禍でホテルの収益が悪化したため、2022年8月にスポンサーに譲渡した。
インバウンドなど旅行需要が回復してきたので、再度、スポンサーから同物件を購入する可能性は残っている。
ところで、今年3月19日に同リートが物件入替えを公表した。スポンサーが開発した大規模オフィス「ガーデンシティ品川御殿山」(東京都)を売却。
理由は、同物件の大口テナントが2024 年7 月末日に退去することが決まっており、稼働率が50%を下回る見込みだったからだ。
その売却損を補填するため、「本町ガーデンシティ(ホテル部分)」と「本町ガーデンシティ(オフィスビル部分)」(大阪市)も譲渡する。
「本町ガーデンシティ(ホテル部分)」とは、マリオット・インターナショナルの最高級ブランドである「セントレジスホテル大阪」のこと。オープン当初は話題になったホテルだ。
代わりに、「プライムメゾン湯島」など住宅7物件(東京都)を取得する。
なお、譲渡は何度かに分けて行われる。今期(2024年4月期)は、「ガーデンシティ品川御殿山」51%と「本町ガーデンシティ(ホテル部分)」を譲渡。
来期(2024年10月期)に、「ガーデンシティ品川御殿山」残りの49%と、「本町ガーデンシティ(オフィス部分)」65%を譲渡。
「本町ガーデンシティ(オフィス部分)」の残り35%の譲渡は、2024年11月1日付けの予定。
そして、同リートは物件入替えに伴い、分配金予想の修正も公表した。
今期は売却益と売却損等により、当期純利益が前回予想より39.6%減益になる。
しかし、利益超過分配を増やすことで、今期の分配金は前回予想から203円増額した2,038円になる。来期の分配金は、1,732円を据え置く予想だ。
4月1日現在の同リートのポートフォリオは住居55.2%、オフィスビル41.7%、ホテル3.1%、商業施設0%。
東京圏69.7%、大阪圏21.5%、名古屋圏4.9%、その他3.9%。
主にスポンサーが開発した、好立地に建つ高品質な物件を、東京圏を中心に保有する方針は変わらない。
財務基盤も盤石で、信用力も高い。LTV(有利子負債比率)は45.2%と保守的だ(2023年10月期末時点)。
格付会社からの格付けはJCRからAA(安定的)、R&IからもAA-(安定的)と高く、日本銀行の買入対象銘柄だった(前述した通り、日本銀行はJ-REIT等の新規買入終了を発表した)。
積水ハウス・リート投資法人
予想分配金:2024年4月期(第19期)2,038円、
2024年10月期(第20期)1,732円
保有物件数:131
取得価格合計:5,516億円(2024年4月1日現在)
5度目の公募増資を行い、5物件を取得
「守り」と「攻め」の両輪で行く投資法人みらい
投資法人みらいは2016年に上場した総合型リートだ。
総合商社の三井物産グループと、独立系アセットマネジメント会社のイデラキャピタル(中国の復星集団が親会社)による共同スポンサー。
同リートは安定したキャッシュフローを生み出すオフィス・商業施設・ホテル・居住施設等をコアアセットとし、成長が見込めるグロースアセットも取得していく方針だ。
グロースアセットとは、リノベーションを施したり、ホテルからオフィスへのコンバージョン等を行うことで収益性が大きくなる物件や、将来的に市場拡大を期待できるアセット(ヘルスケア施設等)を指す。
現在保有している物件のアセットタイプ別比率では、オフィス50.7%、商業施設21.0%、ホテル18.3%、居住施設1.2%、その他8.8%。
そのうち、コアアセットが88.4%、グロースアセットが11.6%だ。
エリア比率では三大都市圏が中心で、東京圏が57.8%、大阪圏が14.4%、名古屋圏が10.6%、その他が17.2%。
同リートは昨年11月、2年ぶりに5度目の公募増資を行い、新たに物件を取得した。
オフィスビル「MIテラス浜松」(静岡県浜松市)、商業施設「MIキューブ心斎橋」(大阪市)、ホテル「くれたけインプレミアム名古屋納屋橋」「ホテルウィングインターナショナルセレクト名古屋栄」(名古屋市)と「ホテル呉竹荘広島大手町」(広島市)だ。
不動産市況が不透明な時期に、「守り」と「攻め」の両輪でポートフォリオを形作るためだ。
中規模オフィスは大規模オフィスに比べて安定しており、インバウンド復活で収益アップが期待される都市型商業施設やホテルを取得した。
予想分配金は来期(2024年10月期)1,185円になり、中期計画として1,300円水準を目標としている。
同リートは、ホテル変動賃料の回復とオフィス賃料の正常化による内部成長だけで1,300円水準への達成は可能と考えている。
投資法人みらい
予想分配金:2024年4月期(第16期)1,150円、2024年10月期(第17期)
1,185円
保有物件数:43
取得価格合計:178,217百万円(2024年03月01日現在)
4月決算銘柄を買って分配金をもらうには、権利付き最終売買日である4月25日15時までに購入しておく必要がある。
最後に、投資は自己責任でお願いしたい。