日本に住む外国人が増えるなか、「ゴミ出し」のルールが守れない外国人入居者の対応に頭を悩ませている大家さんは少なくない。
筆者も近隣に住む外国人のゴミの出し方に悩まされてきた。プラスチックごみと燃えるゴミの区別がつかないのだ。日本語や英語で貼り紙をしたり直接注意をしたり、管理会社に注意を促したり、手を焼いてきた。
そんななか外国人の多い川口市では4月1日より廃棄物の排出方法を日本語、英語、中国語のほか入居者に応じた言語により表示することを義務付けた。(参考資料:川口市)
川口市内で複数の賃貸物件の管理を行う不動産会社の代表で、自らも大家さんである「カックンパパちん」さんに条例の施行に合わせてどのような対応をするのか、さらには外国人入居者に対してどのような配慮をしているのかなど他地域でも役立つノウハウを取材した。
今回の条例は不動産屋さんにとってピンチかチャンスか?
ここ数年住みたい街ランキングの上位にランクインするなど人気が高まっている埼玉県川口市。「ここ5~6年の間にワンルームマンションがさらに増え、外国人入居者も増えている」とカックンパパちんは振り返る。
「当社の管理物件は入居者の2割が外国籍で、これまでの経験からだいたいの行動パターンが分かってきました。とはいえ、なかにはひどいケースもあります。退去直前に粗大ゴミを一般ゴミステーションに不法投棄をしたり、年末年始でゴミ収集が休みでもゴミを出したり・・・。
日本人ではあるが家賃滞納者への強制退去時には共有部に身分証明書や亡くなった親族の遺影や位牌を置いて出て行かれたこともありました」
ほかにも入居者は1人のはずの部屋に3人で入居していたり、浴槽がベランダに移動されていたり、大量のゴキブリがうごめいているような「汚部屋」にされたり、外国人入居者のなかには時折びっくりするような使い方をされる場合があったそうだ。
川口市では隣接住民等とのトラブル等を防止するため、平成29年1月に「ワンルーム条例」を施行し、廃棄物の保管方法に関する措置や駐輪施設の設置などを義務付けている。
今年4月からは新築のワンルームマンションへの「宅配ボックス設置」に「ゴミ出しルールの多言語表示」「ゴミ出しルールの徹底」をすることを義務付けた。
「ワンルーム条例によって、だんだんと管理のハードルが上がっています。不動産会社にとっては手間が増え、『ピンチ』と捉える会社もいるでしょう。しかし当社は外国人入居者への対応は慣れており『チャンス』であると捉えています」
条例の施行に向け、具体的にどのようなことを行う予定か?
「賃貸借契約時に入居者の母国語にあわせた『ゴミ出しルールに関する書類』を提示します。鍵を渡す際には一緒にゴミステーションの位置を確認し、2 ケ月毎にゴミカレンダーを配布します。市のホームページに、9ケ国語でゴミ出しのルール説明がされていることも伝えます」
上記のほかにも、トラブルを回避するためにすでに下記のような対策を取っている。
《他地域でも参考になる! 外国人入居者への対策》
★その1:建物賃貸借契約で外国人入居者とは法人契約を許可しない
来日して間もない入居者には、本人の信用が無いために技能実習生受け入れ先企業による法人契約の場合となる場合が多い。その場合にゴミ出しルールを守らない場合や部屋を粗末に扱うケースが少なくない。
借主である法人が原状回復費用に応じないこともあった経験から、法人契約をせず、個人と契約をするようにしいている。
★その2:緊急連絡先を極力日本人とする
入居者の日本語能力が拙い場合は、借主と弊社の間に入ってくれる人が重要になる。通訳としての役割で日本語の微妙な言い回し等ができる人が望ましい。
外国籍専門の賃貸仲介会社もあるが、言葉の壁があり、トラブルが予想されるため注意が必要。入居者本人が「日本に溶け込もうとしているかどうか」が見極めのポイントになる。
★その3:入居後のトラブル時に備え、母国語対応する家賃債務保証会社を利用
日本人の緊急連絡先がいない外国籍の入居者や本人の日本語能力が拙い場合、外国籍の方向けの家賃債務保証会社(例:GTN<株式会社グローバルトラストネットワークス>)や5ケ国語対応のサポートが受けられる「ホームマイスター24」への加入を賃貸借契約締結の条件とする。
「入居審査は必ず立ち会いをして自らの目で判断すること。日々の管理では管理会社や大家さんが、ゴミ出しルールが守られているかチェックし、最終的には経費を使ってゴミを処分するぐらいでないと管理しきれません。
これから日本は家あまり時代に入っていき、外国籍の入居者の割合は増えていくはずです。こうした対応策を行っていくことは必要不可欠になるでしょう」
川口市だけではなく、外国人入居者が多いエリアでは、多言語でのゴミ出しルールの表示のほか、上記のような対策も覚えておきたい。
▽取材協力:カックンパパちん
新聞販売店から不動産屋を始めた二代目大家。アラカンで障がいを持つ子のパパでもある。宅地建物取引士の他、賃貸不動産経営管理士・住宅ローンアドバイザー・2級ファイナンシャル・プランニング技能士・終活アドバイザー等の資格を持つ