2024年春・北陸新幹線の延伸に伴い石川県白山市で新駅「西松任駅」が開業。1日1900人の利用者を見込む

2024年春の北陸新幹線敦賀延伸に伴い
経営分離される在来区間に新駅が開業

2024年春に福井県敦賀への延伸を控える北陸新幹線。これに伴いJR西日本より経営分離される在来区間のうち、石川県加賀市の大聖寺駅より西の県内区間から敦賀駅までの間は、沿線7市町村や福井銀行などが出資する第3セクターの「はぴラインふくい」が、金沢駅から大聖寺駅までは石川県などが出資する第3セクター「IRいしかわ鉄道」が事業を引き継ぐことが決まっている。

IRいしかわ鉄道は2015年3月に北陸新幹線金沢開業によりJR西日本から経営分離された石川県内の並行在来線を運営するため、石川県、県内市町および民間企業の出資により設立。現時点では金沢駅から俱利伽羅駅（石川県河北郡）まで17.8㎞の区間の営業を担っている。

2022年度の決算によると、同年度の利用者数は前期比8.7％増の約780万人、営業収益約21億8580万円に対して営業費用約21億1239万円と、営業損益ベースでは3期ぶりに黒字を確保した。

そんな同社に引き継がれる区間では、移管後を見据えた動きがすでに始まっていて、それが新駅「西松任駅」の整備だ。

計画地は石川県白山北安田町にある松任駅と加賀笠間駅の間、北陸新幹線の白山総合車両所構内の着発収容線付近とショッピングセンター「イータウン白山」に隣接した場所だ。地元からの要望を受け自治体が費用を負担する請願駅として3年まえから建設が進められてきた。

駅は相対式2面2線で、ホームは6両編成の列車が停車できる長さ。各ホームに出入り口が設置され、反対ホーム側への移動のため跨線橋・エレベーターも設ける。総事業費は約19億5000万円で、市は1日あたり1900人の利用者を見込んでいる。

西松任駅周辺地区は、旧松任市中心街地の西側に接しており、地区には石川県最大のニュータウンとして1970年代以降に千代野ニュータウンや松任北安田地区土地区画整理事業、松任北安田南部土地区画整理事業が施行され、世代の異なる住宅地が互い隣接。

令和元年以降はスーパーやドラッグストア、カフェなど生活を支える施設が集積しつつあり、西松任駅の開業を見据え、新しいまちの形成と旧来のニュータウンの共生を図るまちづくりが求められている。

白山市が今年2月に公表した「都市再生整備計画 西松任駅周辺地区」ではこうした課題を踏まえ、新駅周辺の整備方針を明らかにし、遊歩道や自転車ネットワークなどを整備する方針だ。

近年は高齢化や人口減少に直面しているが、新駅が開業し宅地も新たに造成されると、歯止めに貢献するかもしれない。

なお、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、直近3年間で西松任駅の隣、松任駅の賃貸マンションの賃料は3.95％、中古マンション価格は7.40%上昇している。新駅が開業し周辺地域の利便性が向上することで、さらなる上振れが期待されるだろう。

ちなみに、新駅を設置するのはIRいしかわ鉄道だけではない。先述したはぴラインふくいでは、武生駅と王子保駅の間にある福井県越前市畷町に整備する予定で、今年10月に越前市は「武生南駅」「しきぶ駅」「式部たけふ駅」など、候補11案を発表している。2024年2月に駅名が決まり、2025年春の開業を目指す。

第3セクターによる鉄道運営は収益面で厳しく、IRいしかわ鉄道とはぴラインふくいもそれは同様だ。

両社は運賃の値上げを予定しており、はぴラインふくいに関しては10年後の累積赤字は70億円になるとの見通しもある。しかしながら在来区間は地域住民の足であり、簡単に廃線にするわけにもいかない。まちづくりとも深く関係しているだけに、今後の運営に期待したいところだ。