投資信託市場全体の動向
金融庁は、年に2回のペースで、投資信託に関する各金融機関のパフォーマンス分析を発表している。今年の9月8日に最新の分析結果が発表された。
これは、投資信託の運用実績について、利益が出ている顧客の割合と損失が出ている顧客の割合とを金融機関ごとに調査したものだ。
分析結果を見れば、調査時点で投資信託の運用が上手くいっている金融機関を見分けることができる。
調査結果によると、2023年3月時点において運用実績がプラスになっている顧客割合は1年前時点と比較して約1割減少しているという。
また、2022年4月から2023年3月末までの1年間について、株式および債券の代表的な指数を検証した結果、株式は上昇している一方で債券の運用結果は下落した。
各金融機関の運用実績について
ここからは、金融機関の規模・業態別に運用実績を紹介していく。
三大都市銀行を含む大手銀行・信託銀行における運用実績は以下グラフの通り。
※引用:金融庁
大手金融機関の中で最も運用実績が良いのはソニー銀行で、2番目はりそな銀行だった。
なお、どちらの金融機関も前回調査時1番・2番だったので、直近では良好な運用実績を維持していると言えるだろう。
一方で、3番目以降はランキングに変動が起きている。3番目の三菱UFJ銀行は前回調査時に6番目だった。4番目のゆうちょ銀行も、前回調査時の8番目からランクアップしている。
ただし、運用実績がプラス推移の顧客割合は、全体的に前回調査時から4%以上の割合で減っている点に要注意だ。
つづいて、各地域銀行の運用実績は以下グラフのようになっている。
※引用:金融庁
地域銀行のトップは島根銀行で、これも前回調査時と同じだ。一方で、前回調査時に2番目だった埼玉りそな銀行が7番目に後退。埼玉りそな銀行は、運用実績プラスの顧客割合を9.5%減らしている。
今回の2番目はきらやか銀行だった。きらやか銀行は2007年に設立された山形県の第二地方銀行だ。
一方で、3番目の静岡銀行は前回調査時に19番目だったので、大幅にランクアップしたことになる。しかし、運用実績プラスの顧客割合はほとんど変わっていない(83%台後半)。
前回・今回とトップを維持している島根銀行も、運用実績プラスの顧客割合を8.5%減らしているので、静岡銀行は運用実績が安定していると言えるだろう。
なお、地域銀行の全体的な傾向も、都市銀行等と同じく運用実績プラスの顧客割合が減っている。
つづいて、各信用金庫・労働金庫等の運用実績は以下グラフのようになっている。
※引用:金融庁
このカテゴリのトップは新潟県労働金庫だった。新潟県労働金庫は前回調査時に4番目だったので、3位ランクアップしたことになる。
ただ、新潟県労働金庫は運用実績プラスの顧客割合を3%低下させた。また、2番目の長野県労働金庫も前回調査時から割合を0.7%低下させている。
調査対象の数が大きく違うので純粋な比較はできないが、地域銀行と信用金庫・労働金庫全体を比較すると、信用金庫・労働金庫の方が、全業態平均を上回る金融機関が多い。
地銀や信用金庫等は、不動産投資の融資元として活用する投資家も多いことだろう。二次運用先として投資信託を検討するのであれば、信用金庫等の方が良い運用先となる可能性は高い。
最後に、証券会社別の運用実績は以下グラフの通りとなっている。
※引用:金融庁
証券会社のカテゴリでは、最もパフォーマンスが良いのは野村證券だった。野村證券は前回調査時に4番目だったので、3ランクアップしたことになる。
一方で、2番手の楽天証券は前回調査と同じ。3番目のフィデリティ証券は、前回調査時に9番目だった。
証券会社も、前回との比較では全体的に低調な調査結果となった。
どのカテゴリにも言えることだが、全体的にパフォーマンスが低下する中で、低下幅が小さかった会社が上位に入っている状況だ。
今回調査で上位に入っている金融機関は、比較的安定感が高いと言えるだろう。
金融庁の調査資料と言うことで信憑性は高いと考えられるため、投資信託の購入を検討するならば、このような資料を参考にしてみても良いのではないだろうか。
取材・文:
(はたそうへい)