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99%の資産減!銀行に乗っ取られた世界最大の不動産投資家・堤義明氏の事例から学べること

トーマス高島さん_画像 トーマス高島さん 第60話 著者のプロフィールを見る

2024/4/2 掲載

皆様は銀行に乗っ取られた世界最大の不動産投資家の事例を、ご存じでしょうか。

日本の土地バブル期、世界最大の富豪と言われたのは西武鉄道会長だった堤義明氏です。当時、堤氏の所有資産総額は2兆円とも3兆円とも言われ、ロックフェラーを凌ぐ大富豪として世界でその名を知られていました。

しかし、結局はメインバンクにその資産をはぎ取られ地位を追われ、今の堤氏が保有する資産総額は20億円程度、と言われています。
大富豪から一転、99.9%以上の資産を失った転落の裏には何があったのでしょうか。

■膨らんではじけた昭和土地バブル

昭和土地バブル期の様子をご記憶されている方は、まだまだ多いでしょう。

当時は都内の地価高騰はもちろん、苗場や越後湯沢等のスキーリゾートが持て囃され、僻地にあるはずのリゾートマンションですら、首都圏に勝るとも劣らぬ価格、約数千万円で取引されているような時代でした。

新宿にあるニューステートメナーという分譲マンションが、ワンルームなのに約1億円まで高騰したのもこの時期です。

ニューステイトメナー

当然、品川や赤坂等都心一等地に広大な土地を所有して含み益が莫大に出ていた事に加え、苗場等の土地を格安で仕入れていた西武にとっては、天文学的な資産膨張に至った事は言うまでもありません。

まだまだリゾートで儲かると踏んで、西武は更に苗場プリンスホテルを拡張し、新館やリフトの増設を進めました。更に北海道や長野等、地方高利回り投資も進めていきます。

その過程で、借金総額も膨らんでしまいました。含み益を背景に、借金は数千億円に達していきます。これは、借入でホテル建設など物件を増やせば、減価償却まで計算する事で法人税をタダに近い金額まで節税できる、という錬金術によるものです。

一時的に借入が増えても、しかし利回りが取れていればいずれ借入金は減少していくし、なにより膨大な含み益があるのだから数千億程度の借り入れは大したレバレッジでは無い、という堤氏の判断もあった事でしょう。

この地方高利回り物件拡張が、結果として堤氏の資産を莫大に増やし、そして最後にはその増えたはずの資産はおろか、全ての資産を収奪するきっかけとなったように思われます。

スキーリゾートを始め地方投資はボラティリティが高く、儲かるときは原価が安い事から驚くほど儲かりますが、ダメになると負の遺産状態になって、流動性が薄い事から売却が出来なくなり、過大な借入金がのしかかってくるという苦境に陥りがちです。

これに加えて建物の大規模改修などのメンテナンスや、各種保険、人件費、水光熱費も賄っていかなくてはなりません。

90年代の後半になると銀行や証券会社破綻が相次ぎ、アジア通貨危機やLTCM危機等で株価や地価は低迷、日本の景気が深刻な状態にある事が誰の目にも鮮明となりました。

それに伴い、リゾートにお金をかけられる富裕層や中間層も相当減少しました。同時に西武の経営体力が徐々に低下していきます。

そして2005年、堤氏が相続税逃れの一環で先代が行なった名義株の問題で逮捕された事をきっかけに、西武はメインバンクの銀行に経営権を奪われる事になります。

西武の持ち株会社コクドは、2000年代に入ってからは地方投資の赤字が拡大し、メインバンクは監視を強めていたという話もあります。

いずれにせよ、堤氏がバブル期に今がピークとみて、

・苗場など、地方物件の大幅整理、高値売却
・不要不急の不動産を処分して手元資金増加
・バブルに乗じて、借入金を更に圧縮

という行動を取っていたら、資産収奪は防げていた事でしょう。そもそも借入金が些少であれば、銀行に経営権を奪われるなど起こりようがないのです。

■ドナルド・トランプ氏が破産する可能性

堤氏と同じことが米国大統領候補の、ドナルド・トランプ氏にも言えると私は思います。現在、「もしトラ」などという言葉があるようですが、トランプが米国大統領に再び当選という観測が強まっています。

私は、まず難しいだろうと考えています。一番は、彼の資産が逮捕前の堤氏と同じく大きく棄損している、という事です。一例で、シティオフィスリートの価格を挙げましょう。

高値はコロナ前の2019年9月に付けた14.5ドル、コロナ禍克服への莫大な財政出動で2022年1月に付けた21.7ドルがありますが、その後は右肩下がり。この原稿を書いている3月下旬の価格は、約4ドル後半と言ったところです。
高値から考えると、「半値八掛け二割引き」の水準でしょう。

トランプ氏の資産は、価格面から見るとオフィスがそれなりのパーセンテージを占めていると思われます。暴落に近い価格水準までのオフィス価格の下落が起きている現状、トランプ氏は借入金とのバランス次第では債務超過になっていても不思議ではありません。

加えて大統領選に絡んでの事でしょうが、民事訴訟で色々といじめられています。今後のトランプ氏は財政状態次第で再びの破産ということも、なきにしもあらずと考えます。

■日本の不動産価格の行方

では日本の不動産価格はどうなのでしょうか。
東証リート指数を見てみましょう。

高値はコロナ前の2019年10月に付けた2,262円です。
その後は緩やかな右肩下がりで、原稿を書いている3月下旬の価格は約1,800円前半での値動きです。

これは何を意味しているのでしょうか。
結論をいうと、マーケットは日本の地価が今後も下落していく事を予想しているに他なりません。

「インフレで紙幣減価が起きているのだから、湾岸タワマン投資や都心オフィス投資なら堅い」と思っている方は少なくないでしょうが、東証リート指数から見るとそれは幻想、という事になります。

個人的にも、日本の不動産の未来は次の2択なのでは、と考えています。そして、神の見えざる手(マーケット)もそれを予測しているように見えます。

①日銀が利上げして不動産価格が下がるか
②不景気で不動産価格が下がるか

①の利上げについては、これをしないと円安が更に進み、庶民の生活が成り立たなくなる点にあります。地方では特に、車やガソリンを使う生活が一般的です。

今でも生活苦に陥る世帯が増加しているのに、円安を放置したら社会不安にもなりかねません。利上げを更に数回すれば、円高方向に向かうでしょうが、不動産価格は当然下落します。

②の不景気については、利上げをしない場合は更に円安で国民の消費が低調になり、企業業績の下方修正や店舗閉鎖が進み、不動産価格の下落にも影響する、という意味です。

どちらを日銀や政府が選ぶのかは判りませんが、東証リート指数から見るに、いずれにせよ不動産価格の下落は避けられないように思われます。

円安による生活苦、物価高に加えて増税や社会保険料の高騰で可処分所得が減少し、生産力人口の激減以外に国民の購買力が低下している事も根幹にあるからです。

■不動産投資家は堤氏の教訓を忘れてはならない

以前、外資系証券のアナリストの方と会食した折に、「みな、カレッタ汐留を枯れた汐留と言っているんですよ。」などと話してくれました。

空室が多く、がらんとした雰囲気の汐留の今を表す言葉なのでしょう。オフィスもエリアによっては、都心と言えども相当な苦戦する時代になってきているのです。

私の資産は、堤氏やトランプ氏と比較にもならない程、ささやかなものです。しかし、幾多のバブル崩壊や経済危機を見てきた私は、その状況を見聞してきましたし、歴史を学ぶ事で未来への備えにもなってきました。

今後のマーケットは、1年2年と言う単位で見れば相当、ダイナミックな動きを見せる事でしょう。しかし、どんな時代になっても堤氏の教訓を念頭に置いておく事は、不動産投資家にとって必須なのではと思う次第です。

皆様の健闘を願っています。

 

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

トーマス高島さん

トーマス高島さん

東京都在住
不動産投資家

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経歴
  • □197×年
    東京都に生まれる

    □幼稚園時代から親の仕事関係で住居が転々と変わる

    東京以外には神奈川県や千葉県に居住経験

    □大学卒業後非鉄金属会社に入社
    祖父母介護の為に退社

    社会福祉法人勤務・整体院経営・雑貨店経営・不動産会社勤務など様々な職業を経験

    中国に数度の短期留学を経験する

    □2001年
    兼業で不動産投資を開始

    株式投資、ベンチャー投資等も行うが、徐々に不動産投資に集約

    □2024年
    山手線沿線を中心に約50戸を所有

    趣味は読書・競馬。好物は酒

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