「 ツーバイフォー工法はいいの? 」「 在来工法とどう違うの? 」とよく投資家さんや住宅を買う方に聞かれます。3角形の力、板の力について、前回お話しました。その続きとして、今回はツーバイフォーの壁について、お話をしたいと思います。
日本にツーバイフォー工法( 枠組み壁工法 )をアメリカから導入し、40年以上ツーバイフォーを作り続けているMホームは、施工現場に、下のようなキャッチコピーを掲げています。
「 40年以上、地震の揺れによる全・半壊ゼロ 」は、どうやら本当のようです。ミカオは震災のたびに発表される被害写真を、じっくりと見てきました。建築を専攻してから今までの大震災で、ツーバイフォーの倒壊した写真を見た記憶がありません。
ツーバイフォーによる施工件数は在来工法よりずっと少ないので、単に最大震度のエリアになかった可能性もあり、全壊、半壊ゼロが統計上有意かどうかは分かりません。
■ 自宅のツーバイフォーをいじってみる
最近、自宅用に買ったニコイチ( 2戸で1棟 )のテラスハウス( 長屋 )は、Mホーム施工の築34年のツーバイフォーでした。以前コラムで書きましたので、外観、内観の写真は、そちらをご覧ください。
ツーバイフォー工法のやっかいな点は、リフォームがしにくいことです。在来工法では壁を壊して開口を作り、他の壁を補強するなど朝飯前です。しかし、ツーバイフォーは一体構造( モノコック構造 )なので、躯体をいじるのは基本的には無理です。
配管、配線を横に動かすのも、ツーバイフォーでは天井裏、壁の内側、床下に余裕がないので、難しいことが多いです。普請道楽、リフォーム道楽のミカオは、何でもできる在来工法の方が好きです。みなさんには、ツーバイフォーの躯体はいじらないことをお勧めします。
下の写真は外壁を給気口用にくり抜いた孔( スリーブ )です。内側から外側を見たもので、内壁は12.5mmの石膏ボード( プラスターボード )、外側は9mmの合板、間には断熱用のグラスウール( ガラス繊維をウール状にした燃えない綿 )が詰まっています。
そのスリーブを外壁側から見た写真が下です。9mmの合板の外は、厚さ約20mmのモルタルとなっています。Mホーム設計部にいる卒業生に聞いたら、今でも外壁に張る合板は9mmだそうです。
下は、居間と廊下との間の壁に張られた石膏ボードをはがしたところです。2×4インチ( 38mm×89mm 実際の2インチ、4インチより小さめ )の枠材が、455mm( 3尺=910mmの半分 )ピッチで入れられていました。
今のツーバイフォーでは、壁には2×6インチ材を使うことが多いようです。ツーバイシックスを壁に使うので、ツーバイフォー工法という名称がいやで、モノコック工法( 合板と一体になった工法 )などと呼ぶ業者さんもいます。
この壁は両側とも石膏ボードで、ツーバイフォーには珍しく、筋交いも入れられていました。
この壁の上に2階の重い書斎が載るので、補強することにしました。下は古い2×4インチの枠材に新しい枠材を2重になるように打ち付けて、さらにコンパネ( コンクリートパネル コンクリート型枠用合板 )という厚さ12mmの合板を張っているところです。
構造用合板を張らずにコンパネを張るのは、コンパネの表面が平らで、そのままクロスを貼れるからです。構造用合板では表面に木の目の凸凹があって、クロスに凹凸が出てしまいます。
下が壁のアップで、約10cmピッチに釘を打ち付けています。このように釘を多く打ち付けることで、地震時に筋交いのような効果を持たせることができます。外れにくいという点では、筋交い以上だと思います。
下は戸境壁の一部を壊したところです。12.5mmの石膏ボードが2重になっていて、奥にはグラスウールが入れられていました。戸境にグラスウールを入れるのは、断熱よりも遮音の効果を狙ったものです。
太鼓のように中の空気が振動して、音が伝わりやすくなるのを防ぐ役目を担います。しっかりとした設計・施工であることが分かりました。
せっかく石膏ボードが2重に張られているので、ここは石膏ボードをはがさずに、2重の石膏ボードの上からコンパネを長い釘で枠材に打ち付けて補強することにしました。その際、コンパネと石膏ボードの間に遮音シートをはさみました。
下が遮音シートです。2mmほどのグネグネした樹脂のシートです。壁の向こうがお隣さんですので、構造補強のついでに遮音の補強もしておきました。
石膏ボードをはがしてすべてコンパネにしたのが、下の写真です。壁がガチンガチンに固くなりました。石膏ボードは石膏の両側に紙を貼った板で、たたくと簡単に壊れるほどもろいものです。
燃えない、安いという利点はありますが、壁の固さを保つ力はほとんどありません。
この部屋は居間なので、壁に絵や鏡を掛けるなどする際にも、合板はネジが効きます。石膏ボードでボードアンカー( 石膏ボードにネジを効かせる金具 )を使っても、大きくて重いものは掛けられません。
地震に強く、さらに燃えにくい壁にしたい場合は、このコンパネの上に石膏ボードを張るといいと思います。
このような合板の釘打ちによって耐震性を上げるリフォームは、在来工法( 軸組工法 )でも可能です。コンパネを横にして柱から柱に渡して、10cmピッチで釘打ちすれば、簡単に壁を固く頑丈にすることができます。
今日のまとめとして
合板の釘打ちは、耐震性アップの真打ち!
ともうひとつ
ツーバイフォーはリフォームしにくいのが難点!
となります。皆様の建築と不動産の勉強の一助になれば幸いです。