多くの業種の経営者や個人事業主の方と話をしたり、実際に自分でも事業に取り組んだりすることで、今更ながら、この資本主義の世界を攻略するための方法は、とてもシンプルだということに気づいてきました。
できれば15歳くらいで、気づいておきたかったです。今回はそんなお話。
■ 資本主義の活動はすべて決算書に集約される
僕が銀行に入って、真っ先に叩き込まれたのは「 決算書 」の読み方でした。融資できる企業かどうかを調査するのに、決算書は大きな手がかりとなるので、銀行員にとっては、とても重要なスキルです。
当時、簿記すらも勉強したことがなかった僕は、「 へぇ、こういう考え方があるのか… 」と思いながら新入社員研修を受けていました。
当時の自分に話しかけることができるなら、「 おい! それはサラリーマンの仕事だけに留まらない、超重要な考え方だぞ!もっと真剣に勉強しろ! 」と喝を入れるに違いありません。
僕らが生きている資本主義の世の中において、会社や個人の業績は決算書( 貸借対照表=バランスシート(BS) ) と 損益計算書=PL )に集約されます。
決算書はいわば、お金の世界における成績表です。銀行が融資をするときや投資家が株を買うときなど、その会社の業績の良し悪しを判断するための世界共通の言語にすらなっています。
ですから、資本主義社会で上を目指すためには、この成績表のルールについて学ぶのは当然のことのはずです。
ところが、学校では商業系などに進まない限り、決算書について教えてくれることはありません。また、商業科や銀行は、決算書を「 作る 」「 分析する 」方法は教えてくれるかもしれませんが、決算書をどうすればいい内容にできるかは、教えてくれないはずです。
これまで多くの企業の決算書を見る機会がありましたが、「 見て分析する 」のと「 自分で決算書を作っていく 」のは、やはり全く別の世界だと実感します。
決算書の中身を磨いていくプロセスを、僕なりになるべくシンプルにまとめると以下のようになります。
【 貸借対照表( バランスシート )の動き 】
①元手となるお金( 自己資本 )を貯める
②事業用の「 資産 」になるものを買う ( 他人資本(融資)を使う方法も )
【 損益計算書の動き 】
③購入した「 資産 」を活用して「 売上 」を上げる
④「 経費 」をコントロールして「 利益 」を出す
【 貸借対照表(バランスシート)の動き 】
⑤「 利益 」を自己資本に組み込んで、また「 資産 」を買う
⑥ ③に戻り、繰り返し
①元手となるお金( 自己資本 )を貯める
②事業用の「 資産 」になるものを買う ( 他人資本(融資)を使う方法も )
【 損益計算書の動き 】
③購入した「 資産 」を活用して「 売上 」を上げる
④「 経費 」をコントロールして「 利益 」を出す
【 貸借対照表(バランスシート)の動き 】
⑤「 利益 」を自己資本に組み込んで、また「 資産 」を買う
⑥ ③に戻り、繰り返し
ほとんどの商売は、このループで保有する資産を増やし、バランスシートを大きくしていく営みです。どんな大きな会社でも零細事業者でも、知ってか知らずか、みんながこれをやっているのが資本主義の世界です。
個人的にポイントだと考えているのは、結果として、資産を増やすイコール「 貸借対照表が大きくなっていく 」ことです。感覚的に経営や事業をしていると、どうしても「 売上をあげる 」「 利益を出す 」「 税金を少なくするには… 」と、損益計算書にフォーカスしてしまいがちです。
しかし、そこから一歩進んで、「 バランスシートを大きくする 」という点に、目標を設定しておけば、瞬間的な売上や稼ぎだけでなく、長期的な視点で物事が考えられるようになる気がしています。
このように、常にバランスシートを大きくするんだ、という目的意識を持っておくことを、僕は勝手に「 バランスシート思考 」と呼んでいます。
( すでに簿記や会計の勉強をしている人にとっては、「 なんだ。当たり前のことじゃないか 」と思うかもしれませんが、多くの人は気づいていないのです )。
■ 不動産賃貸業を「 バランスシート思考 」にあてはめると?
考えてみれば、書籍やSNSなどに溢れる、お金にまつわる知識やノウハウはすべてこのプロセスに関する話だということに気づきます。
例えば、①は家計管理、節約術、ライフハック、②はビジネスアイデア・不動産の購入ノウハウ、③は経営術やマーケティング・人材マネジメント、④はコスト削減、もしくは逆に節税、といった感じです。
そして、このプロセスで考えれば、不動産賃貸業というのは、資本主義の世界で、とても有利なビジネスであることがわかります。
①の元手さえ貯めることができれば、②や③が他のビジネスに比べると様々な点で有利ですし、仮にフルローン・オーバーローンが実現できれば①の元手すら必要がない場合もあるのです。
②では、不動産の担保評価で銀行がお金を融資してくれますし、③においても、安定した長期的な売上が立ちやすいです。
通常のビジネスにおいては、③の「 資産をどう活用して売上を伸ばすか 」がいわゆる「 腕の見せ所 」になるわけですが、不動産賃貸業においては、立地や物件の力である程度見込みが立ちます。また、各プロセスで代行してくれる業者がいるために、多くの業務を外注できます。
したがって、不動産賃貸業の「 腕の見せどころ 」となるのは、②の資産を買う、という所に集約されますし、多くの仕事は外注化されているので、経営者はより一層②良い物件=資産を買い進めていくことに集中できます。
活躍されている大家さんたちの活動経歴を考えてみても、なんとなくそんなイメージがつくのではないでしょうか。
■ 会社ではなく人生でも同じこと
このバランスシート思考。会社経営だけでなく、個人の人生においても同じだと考えています。要は、いかに自分にとって「 資産 」となるものを積み上げていけるか、が大事ということです。バランスシートを意識することで、長期的な目標もイメージしやすくなります。
例えば、サラリーマンとして給料をもらっていると、もらった給料の大半は、事業性のものではなく、プライベートな支出( 飲み会・家・車・学費 )などに回りがちで、バランスシートがなかなか大きくなりづらいです。
それは事業用資産をあえて増やさずとも、生きていくことができるからです。
※この点は見方によって、良くも悪くもあります。
ビジネスマンとして、スキルや経験値は積み上げることができる無形資産といえます。その無形資産も「 バランスシートに積み上げる 」という意識ができているかどうかで、かなり大きな差が生まれます。
僕自身はサラリーマン時代、仕事は「 積み上げるもの 」というより「 こなすもの 」という意識が強かったため、今振り返ってみても、大した積み上げができていませんでした。
そのように場当たり的に仕事をするのは、日々の売上だけに目が行って、バランスシートのことまで頭が回っていない経営者と同じですね。持っている資産が大きくならないため、同じ場所で足踏みするような感覚にとらわれて、もがき苦しむことになってしまいます。
バランスシート思考で世界をとらえれば、自分が今やっていることが「 資産 」になるのか、それともその場限りで消えていってしまうものなのか、を意識して、日々を過ごすことができるようになると思います。
若い頃から、貸借対照表と損益計算書の仕組み・繋がりを学び、日々の生活でもバランスシートを意識して、人生を豊かなものにできるよう、子どもたちにも伝えていきたいと考えています。