先日、鹿児島のお店にガングロさんと半沢大家さんが遊びに来てくれました。
その際、半沢大家さんと銀行員時代の営業あるあるの話題で話が盛り上がりました。その時の話題も含めて、今回はあまり注目されない銀行営業の生態について少し書いてみようと思います。
不動産投資をする方だけでなく、事業を行う方にとっても、銀行融資の窓口である営業マンがどういうことを考えて、日夜働いているのかを理解するのは銀行取引をするにあたって有利に働くことと思います。
僕が銀行にいたのはもう10年前になりますので、様々な環境・コンプライアンスの変化などで変わっている部分もあるかと思います。とはいえ、元同僚や現役の銀行・信金で働く方と話をする機会が今でもありますが、そこまで大きな違和感は無いので、銀行という組織の根底に流れる基本的な思想みたいなものはいつの時代も変わることが無い気がしています。
まず大前提として、銀行員といっても営利組織の営業マンなので、売上目標が課せられています。わかりやすいものでいうと「A君は1年で〇億円の融資実行をする」というものです。融資だけでなく、営業マンには色んな項目・プロダクトの獲得目標があります。
融資の打ち合わせに来た銀行員が、やたら投資信託やカードローンを勧めてくるのは、それぞれ目標という名のノルマを背負ってるからに他なりません。
たとえば、10年前の僕の例だと、取引先にネットバンキングソフトを導入し、初めて10件のネット振込を実行させたら〇ポイント、M&Aの契約書を調印出来たら〇ポイントのように、細かくルールが定められていました。まさに点取りゲームのようなシステムになっていました。
このルールにしたがって、営業マンが日々の営業活動を行い、その合計点が営業店(いわゆる支店)の成績になります。僕のいた銀行では、営業店は店の融資残高の規模などでブロック分けされていて、同規模の経済圏を有する営業店同志が、その成績ランキングを競う仕組みになっていました。
そして、年度終わりにランキング上位の店は栄えある表彰店の地位を得るのです。銀行・信金の応接室や支店長室に額縁に入れて、ありがたそうに飾られている頭取名の入った表彰状は、支店の営業マンの血と涙の結晶という訳です。
これが、ドラマ・小説の半沢直樹などでも取り上げられることが度々ある銀行の「営業店表彰ルール」。ある意味で、銀行営業マンにとって仕事の、いや銀行員人生の「ほぼ全て」を司っていると言っても過言ではありません。
基本的には、この表彰に寄与する成績を上げた営業マンが出世していく仕組みになっていき、その中から将来の役員が生まれていくわけです。
不動産業界の営業マンは、業績に応じて歩合給、つまりはおカネで成績が還元されるのだと思いますが、銀行員の場合、成績が大きく違っても、給料にそこまで極端な差が付きません(一部の、資産運用専属営業マンなどは歩合制だったりしますが)
金銭の代わりに、長期的には人事評価、短期的には営業会議で褒められたり怒鳴られたりという、承認欲求面での飴とムチをうまくシステム化していたように感じます。
■営業マンの成績に貢献すると融資を受けやすくなる?
この「表彰」のルールは、本部(つまりは経営陣)が考える経営方針によって、毎年コロコロ変わっていきます。
〇全国的に窓口の人件費コストが高いのが課題
→取引先に振込をネットでしてもらおう→表彰に盛り込む
〇新規のNISA口座開設を増やしたい
→会社で社員説明会を開催できたらポイント
このように、上層部の考える経営計画が営業マンの報酬とアクションに直結するようなシステムになっているわけです。
よく不動産投資家の方から聞かれる質問に「融資を受けている銀行で、投資信託を購入すると有利に働くのでしょうか?」というものがあります。
これを「表彰ルール」があることを前提に考えてみます。
本来、銀行は融資をすることを条件に別の商品を売り込む「抱き合わせ販売」や、債権者としての立場をちらつかせて利益を得ようとする「優越的地位の濫用」は厳しく禁止されています。
ですが、銀行員も営業マンなので、成績に困ったとき、取引先の社長に「何とかお願いできませんか?」と頼ることも正直多いです。
そのように困った状況を助けてくれた取引先の恩に報いようと、厳しい融資の案件で支店長や審査と戦ったりすることは普通にあります。(全く恩に感じないサイコパス担当者もいますがw)
ここで重要なのが「その営業マンにとって何が成績になるのか」ということです。前述した通り、「何が成績になるのか」「何がより評価されるのか」は銀行内の表彰ルールによるので、銀行はもちろん、同じ銀行でも毎年度のように変わります。
例えば、僕のいた銀行では、当時 法人部門と個人部門が完全に切り離されていたので、取引先の社長が投資信託を買ってくれても、直接的に自分の成績にはなりませんでした(そのルールそもそもどうかと思いますがw)
そんな状況下で、目をキラキラさせながら社長が「投資信託を1,000万買うよ(だから融資で有利に扱ってね)」と言われても、「あ、ありがとうございます…別の課の担当を連れてきますね」と微妙な反応にならざるを得ないかと思います。
■銀行との効果的な付き合いをするために
担当者と面談するときに「もし協力するなら相手にとって何をされると一番嬉しいか?」の探りを入れておくと、より効果的な銀行との付き合いができるかと思います。
リサーチの方法ですが、これは担当者の置かれている状況にもよるので、ざっくばらんに「営業成績に協力するなら何が一番〇〇さんの力になれますか?」と聞いてみるのが一番だと思います。
融資案件を懐疑的に見る上司や審査部を説得してくれる一番の味方は窓口である担当者・営業マンです。的外れではなく、Win-Winになるビジネスパートナーとなるべく、関係を深めていけると良いですね。