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こんな擁壁物件は買ってはいけない!擁壁物件の観察ポイント【前編】

その道のプロ/シアンさん_画像 その道のプロ/シアンさん 著者のプロフィールを見る

2024/1/29 掲載

皆さんお久しぶりです。2020年12月に「DIY大家さんに知ってほしい安全対策」を書かせて頂いたシアンです。その後X界隈では大きなケガのポストも見ることなく私としては執筆してよかったと思っております。

さて、土木屋の私が今回、再び筆を執ろうと思ったのは、「擁壁」に関して専門的に聞ける人が身近に居ない事で、絶対に買ってはいけない物件を買ってしまっている人が見受けられたからです。

土木と建築は同じ建設業として一括りにされがちですがまったく違う分野です。地面より上が建築・地面より下が土木と棲み分けしていただけたら分かりやすいかと思います。

今回取り上げる擁壁は地面より下の話なので土木の属性がより高い内容です。

その前に、初めましての方も多いと思いますので自己紹介をさせて頂きます。高卒から建設業(土木)に従事して22年が経過しましたシアンと申します。

1級土木施工管理技士の資格を保有しており、現在は地場建設会社から独立して大手ゼネコンの施工管理業務を担う仕事をしています。その他、趣味が高じてコーヒーの焙煎屋もしています。

保有している不動産物件は、築古戸建てがメインで事業利用が2戸・賃貸3戸(売却予定1戸)です。起業して本業の方に注力していますので、不動産の購入ペースは遅いです。

ファミリー向けの戸建てを主軸に、本業売り上げの底支えを狙ってやっています。事業として10年生き残れば一つの形になるかと思い、気長にやっています。

今回のコラムも写真・図説も交え長文になりますが、お付き合いいただけたら幸いです。

それでは本題ですが、

第1章 擁壁を見るポイントの実例
第2章 なぜ擁壁を作らないといけないのか?
第3章 擁壁の種類・特性・安全性の見極め方
第4章 コンクリート構造物の点検と異常の見極め方

の4項目で書かせていただきます。

■第一章 擁壁を見る時のポイントの実例

突然ですが問題です。

第1問)
写真の擁壁は、一見異常がない擁壁に見えますが重大なリスクを抱えたまま現在に至ります。それは何か考えてみてください。

正解は・・・・

赤の範囲はすべて擁壁の構造として不適合です。
建築ブロックで土留めをするなど、土木屋の視点で見ればありえません。

100歩譲って基礎の根入れを直高の1/3埋めているもしくは、この土留めの最下段から建物の基礎までの離隔が安息角30°内にあれば、何かあったとしても住む家は守れるでしょう。

しかし、緑の位置で建物との離隔を見ると60°ぐらいはあるでしょう。崩れれば建物も一緒に被災します。左の家に崩壊した擁壁が被さるのは時間の問題です。その兆しとして黄色のラインにクラックが入ってきていて変状が表れています。

絶対に購入してはいけない擁壁物件の1つです。(安息角については後で図面を利用して説明します。)

第2問)
このブロック積みは緊急性の高い異常が見られます。
それは何か答えてください。

正解は・・・・

赤の範囲は間知ブロック積みがズレて、いつ倒壊してもおかしくない状態です。その原因は黄色の立木の根がブロックの背面から押してきているのが原因です。またこのブロック積みに近づき割れたところを点検してみたところ・・・

胴込コンクリートが充填されていませんでした。この擁壁は作られてから30年ぐらい経っていそうです。この工事はかなりずさんな管理で仕上がっています。現在の公共土木はずさんな管理をしていませんからご安心ください。(後で図面を利用して説明します。)

第3問)
最後の問題です。
次の擁壁は対策を打たないと危険な状況となっています。
どこが問題でしょうか?

答えは・・・・
重力式擁壁が土圧で押されて2㎝ほどズレていますね。そして、水抜き穴の数が少ないです。

構造的に手堅い「重力式擁壁」が傾いてしまっています。

これは、想定されている地盤の反力(地耐力)が得られていない(施工ミス)、背面土圧の摩擦角の設定ミス、山の高さ(Ho)の設定ミス(設計ミス)、水抜きの本数が3㎡に1か所しかない事による地下水位の上昇による内部摩擦角の低下(施工ミス)、と複合的な要素が重なってしまったからでしょう。(下の図面をご参照ください)

外観で擁壁を見るポイントは限られてますので、写真で説明したような「擁壁の異常」を洗い出せれば、擁壁物件のリスクが減らせます。

淡々と点検して、異常が見つかったら購入の土台から除外していくことで擁壁物件も怖くない、ということになるでしょう。

明日の第2章では、「そもそもなぜ擁壁を作らないといけないのか?」について説明します。ここを理解していくと擁壁を見る目が鍛えられると思います。ぜひご覧になってください。

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

シアン

シアンしあん

1級土木施工管理技士
測量士補

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □1983年
    宮崎県で誕生

    □1999年
    高校2年の時に測量業を将来の仕事と決める。現場を知る為に施工管理技士を目指すことに

    □2001年
    宮崎県産業開発青年隊で施工管理の職業訓練を受ける

    □2003年
    地場の土木建設会社に就職、施工管理職になる。

    入社4日目に大手ゼネコン会社に派遣命令が下る。流れ者の生き方を身に着ける。

    主な経験:重力式ダム・ロックフィルダム・空港・砂防ダム・河川・災害復旧・幹線道路バイパス

    □2010年
    実家用戸建て(個人購入)+田2反を購入。350万、金利8%、返済7年。無知のために不利なローンに苦しむことに。
    この時のローンがきっかけでお金について将来を考えるようになる。

    □2012年
    施工管理派遣会社に転職
    主な経験:高速道路造成

    □2013年
    派遣会社の搾取構造に気づき、個人事業主を開業する。引き続き土木施工管理を生業にする。

    主な経験:高速道路造成・高速道路舗装

    □2015年
    建設業の法改正で個人事業主が公共現場に入れなくなる。
    長時間労働で体を壊し事業を畳む、再起の為筋トレを始める。
    測量会社に転職

    □2017年
    北部九州豪雨災害の被害を目の当たりに。
    命の危険を感じながら災害復旧測量を経験、自然との向き合い方を考え始める。

    □2018年
    1戸目のローン完済、合同会社設立・代表就任
    主事業は施工管理・工事測量会社

    労働集約モデルでは、収益に波があり安定していないのでいずれ限界が来ると危機感を持つ

    不動産の勉強を本格的に始める。(妻は2015年に勉強を開始)

    □2019年
    2戸目30万戸建て購入(個人購入)。物件を修繕しヤドカリ生活を実践中

    □2020年
    法人1棟目を取得に向けて物件検索を開始。

    これまでに渡り歩いた地域は宮崎・熊本・大分・長崎・福岡・鹿児島・大阪・山口

    □2021年
    公庫300万円資金調達
    法人1戸目木造住宅を現金で購入(2024年中に売却)しリフォームの段取りをしていたが離島での仕事が舞い込み計画変更

    □2022年
    実母が緊急入院、急遽宮崎に帰省

    実母が相続した戸建てを再生
    リフォーム資金350万円を調達し自社リフォーム(分離発注)を行う
    年81.6万円/月6.8万円で賃貸中

    本業で信用金庫から630万円資金調達
    初の事業年度赤字を経験、年度末ネット銀行より300万資金調達
    預金残高を積み増しする

    □2023年
    法人2棟目戸建て売値250万円を350万円資金調達して購入(現在リフォーム中)

    フルで働けなくなった母の仕事づくりの一環で、趣味であったコーヒー豆の焙煎を事業化
    マル経融資500万円資金調達

    □2024年
    競売案件の取得に向けて現在財務状況を改善中

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