相次ぐホテルの開業でわく京都
緑地整備により賑わい・憩いの場が誕生
日本有数の観光地として知られる京都。インバウンドにも人気のスポットで、2019年の観光客数は5352万人! 観光消費額は1兆2367億円にも上った。
ところが、コロナ禍以降はステイホームや海外からの渡航制限が影響し、2020年の観光客数は2519万人、21年は2102万人と大きく数を減らすことになった。
一方、コロナ収束を見越したプロジェクトはいくつも走っていて、そのひとつが東本願寺前の「市民緑地整備」だ。
東本願寺は京都市下京区、JR京都駅の北側・徒歩7分の距離にある真宗大谷派の寺院。真祖親鸞聖人の御真影を安置していることでも知られる。
今回の計画では、東本願寺の東側にある京都市の市道と東本願寺が所有する約9800㎡の緑地(京都市道約5400㎡プラス東本願寺所有地約4400㎡)を整備する。
この緑地は、かつて門前の烏丸通に市電が通ることになった際、門徒が軌道にはみ出してはいけないとの判断から東本願寺側が通りの東側の空き地を提供したもの。烏丸通が弓なりになっているのはそのためだ。市電は廃止され緑地はイベントなどに使われていたが、市道と国道に挟まれ立ち入りにくいことが指摘されていた。
こうした課題を背景に、京都市と東本願寺はこれら一帯を「市民緑地」として整備することに2019年に合意。具体的な内容について協議を重ねてきた結果方向性が決まり、2023年3月までの完成を目指し、現在は工事が進められている。
主な整備内容は次の通り。
広場は拡張され、緑地部分は芝生に整備。車道部分は石畳風の舗装にするなど、京都らしい風情を感じつつ緑あふれる憩いの場になる模様。災害時の活用も考慮されているのがポイントだ。広々とした空間には、おのずと地元住民や観光客が集まってくるだろう。
今回の計画は、都市緑地法に定められた市民緑地制度に基づき、土地所有者と合意のもと、民有地の緑化や残された緑地の保全を図るとともに、これらを住民の利用に提供する緑地や広場として確保し、緑の創出と保全を促進するというもの。地方公共団体やみどり法人が土地の所有者と契約を結び市民緑地を設置する「市民緑地契約制度」にのっとっている。
土地の所有者からすると管理の負担が軽減され、税制優遇により土地の所有コストを軽減できるメリットがある。官民が連携することで緑地や広場が整備できるので、地域にとってもプラスに働く取り組みだ。
京都では近年、ホテルの開業ラッシュが相次いでいて、「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」や「ハイアット プレイス 京都」、任天堂旧本社を利用した「丸福樓」などがオープンし、今後も「帝国ホテル」「(仮称)シャングリ・ラ京都二条城」などの開業も控えている。
再開発の機運も高まっている。JR京都駅北側の京都中央郵便局は高さ約60mの複合施設に建て替え、2029年度以降に開業予定。駅東の崇仁地域には市立芸術大と銅駝美術工芸高が来年に移転開校、駅南東の東九条には人気クリエイター集団「チームラボ」のミュージアムが24年にオープンするという。
コロナが収束を見越して、新たなまちづくりが活性化している京都。観光資源が豊富で、おばんざいなど京都ならではのグルメも人気だ。今回の緑地整備を機に憩いの場が各所に増えていくと、住民・観光客の過ごしやすさも増していく。こういった取り組みが、観光都市復活のきっかけになるかもしれない。
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健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))