まちづくり検討の経緯
東京・杉並の人気エリア、阿佐ヶ谷駅のすぐ近くで「まちづくりに関する検討」が進んでいる。
対象になっているエリアは、阿佐ヶ谷駅の北口を出て北方面へ少し進んだ先にある小学校・病院などが建っている一帯だ。
※引用:杉並区
上記地図に記載されている建物のうち、総合病院は河北総合病院のことを指している。
また、けやき屋敷は古い地主が所有していた屋敷森であり、外から見ると林のような状態になっていた。
ちなみに、対象地から通りを挟んだ向かい側には、初詣の時期などは特に大勢の人で賑わう阿佐ヶ谷神明宮(あさがやしんめいぐう)がある。
まちづくりの検討が始まった発端は、小学校の校舎を改築する構想が持ち上がったことだ。
杉並第一小学校は1875年に創立されており、杉並区内では最も古い小学校となっている。
このため、2013年度に杉並区が策定した「区立施設再編整備計画(第一期)・第一次実施プラン」において、小学校を区民センター及び産業商工会館と複合化して現地改築する方針とされていた。
杉並区はプランの実現に向けて設計などを進めていたが、2016年に、隣接する河北総合病院の運営者とけやき屋敷の地権者から、病院をけやき屋敷の敷地へ移転改築する意向が示されたという。
地元との調整に迫られていた折、病院の移転改築申し入れを受けた背景もあって、病院の移転改築後にできる敷地へ、玉突きで小学校を移転するというプランが持ち上がる。
※引用:杉並区
その後、地域住民との意見交換会や説明会などを経て、区はプラン実現に向けて動いていたが、2022年6月に実施された杉並区長選挙によって転機が訪れた。
岸本さとこ氏が当時現職の田中良氏を僅差で破って当選、区長が交代することになったのだ。
岸本区長は選挙当時の公約として「住民合意の取れていない再開発などは見直す」というものを掲げていた。
そして、当該まちづくりの計画については、小学校は今の場所に残すべきだという意見や、小学校が病院の跡地へ玉突きで移転するというプランの決定過程において、検討過程が不透明で説明が不十分だという意見も地元からは出ていた。
そこで、岸本区長は再度「まちづくりを振り返る会」やオープンハウスを実施するなど、地元住民との対話の場を設けている。
そして、2024年1月22日に、杉並区としての方針を説明する動画をYouTubeにアップした。
当該まちづくりは当初の構想通り、玉突きによる移転改築を進めるというのがその要旨だ。
理由は、土地区画整理事業として病院の移転改築工事などがすでに進んでいることや、現在の場所で改築すると、新校舎開校までの期間が長期化することなど。
今後の焦点は小学校跡地の活用方法か
区が再度方針を示したことで、次に気になってくるのは、移転改築後の小学校跡地に何ができるのかといったことだ。
岸本区長は動画の中で「地権者も杉並区も、タワーマンションや大型商業施設などを整備するという考えは持っていない」という趣旨のことを説明している。
また「みどり・防災・医療・文化の拠点を作っていきたい」という考えを示している。
阿佐ヶ谷は都内でも比較的知名度の高いエリアであり、対象地が駅から近いこともあって、新施設は街のイメージに関わるものになるだろう。
阿佐ヶ谷を象徴する施設として相応しいものができることを期待したいところだ。
取材・文:
(はたそうへい)