中部・東海地方最大のターミナル駅
愛知県名古屋市中村区に位置する名古屋駅。JR東海、JR貨物、名古屋臨海高速鉄道、名古屋市営地下鉄が乗り入れる、中部・東海地方最大のターミナル駅であり、近接する名鉄名古屋駅や近鉄名古屋駅を合わせると、中京圏最大の駅だ。これら全体の乗降客数は1日平均で約120万人、東海道新幹線だけでも1日約7万人が利用している。
名古屋駅周辺は大きく東側と西側の2つのエリアにわかれる。前者は旧来から名古屋の玄関口として栄え、バス・地下鉄・近鉄・名鉄やJR間の乗り換え客などで人通りが多く、近年の再開発により日本有数の超高層ビル街にも発展。
JRセントラルタワーズ内のジェイアール名古屋タカシマヤを筆頭に、近鉄パッセ、名鉄百貨店本店、ミッドランドスクエアなどの大型商業施設や、市内最大のバスターミナル、広大な地下街も広がっている。
対して新幹線口、西口、駅西と呼ばれる西側(太閤通口)の地下にはエスカ地下街があり、駅北西には大手予備校や学習塾も。少し離れると古くからの商店街も多く残っている。
東側に比べると開発は進んでいないが、今後は大きく変貌を遂げるようだ。それを示すかのように名古屋市は「名古屋駅西側駅前広場 整備計画(案)」を策定。今年2月に最新の内容が公表された。
本計画はリニア中央新幹線の開業の機会を捉え、スーパーターミナル駅にふさわしい高い機能の発揮と、世界の目的地となる名古屋の新しい顔づくりが基本的なコンセプト。交通機能の高度化と将来を見据えた西側エリアのまちづくりと連携した重層的な拠点の形成を目指している。
2024年度から工事をはじめ2026年の完成を目指す
施設計画に関しては、以下の点を挙げている。
屋根:角のない曲面の形状の白色系の屋根が、柔らかく、軽やかで、清潔感のある印象を与え、多くの人に親しまれる空間を演出する
植栽:まちへの直進性を意識して高木を配置するとともに、駅前広場で過ごす人が、植栽による緑陰や憩いを感じられる空間とする
照明:人が歩く動線は、明るく安心して歩くことができる照明とする。また、人が滞留する空間は、間接光による照明とし、落ち着いた雰囲気を演出する
サイン:サインは、情報の一体性・連続性・継続性を考慮して配置する
舗装:周囲の施設や既存の舗装材と調和するとともに、リニアの玄関口にふさわしい風格のある材料や、地場産の親しみが持てる材料とする
ファニチャー:利用者の行動に応じた使い勝手の良い配置とし、駅前広場を特徴づける親しみのあるデザインとする
総合情報案内所:地域の観光やイベント、周辺のまちづくり情報を発信する機能を持った総合情報案内所を設ける。2階には、利用者が広場及びまちを見渡すことができるようデッキを設ける
維持管理:リニアの玄関口として、安全で快適な空間の維持を図る。にぎわい創出や一部維持管理の質の向上を目指し、地元や周辺事業者等と一緒に、整備段階に応じて、エリアマネジメント活動を展開していくことを目指す
その他、環境への配慮として保水性舗装や植栽帯に雨水を活用する雨庭等、広場利用者の快適性向上のため利用者が滞留する場所にミストの設置、広場の魅力向上としてプロジェクションマッピングができる機能、災害発生時はデジタルサイネージ等を用いた災害情報の発信、一時的に滞留する来訪者が使用できる給電機能、ユニバーサルデザインへの配慮など、さまざまな機能も導入する。
名古屋市はこれまでに、西側駅前広場のデザインの基本的な方向性を示した「名古屋駅西側駅前広場デザイン計画」を2022年12月に策定。その後、詳細な検討を進め、今回の計画の公表に至った。
ただし、非常に大規模なプロジェクトであり重層的な拠点の形成には相当な期間を要することが想定される。まずはアジア・アジアパラ競技大会開催も視野に入れつつ、平面レベルの限られた空間のなかで、リニア中央新幹線開業時の来訪者を迎えるために必要な交通機能の確保と空間形成を行うとした。そのための工事を今年度から始め、2026年に愛知県内を中心に行われる同大会に間に合うよう完成させたいとしている。
その後はできるだけ早期に、駅前広場の地価や上空も活用した、高速・観光バス乗降場を含めた交通結節機能の立体的な配置や、総合案内機能を導入するなど、民間事業者と連携して、スーパーターミナル駅にふさわしい魅力的な拠点の形成を目指す。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))