現在大阪市にある約11万戸の市営住宅。その市営住宅に対する「大阪市営住宅ストック総合活用計画(案)」が大阪市によってとりまとめられた。
大阪市では、現存する約11万戸の市営住宅を良好な社会的資産として有効活用するため、「大阪市営住宅ストック総合活用計画」(平成13年策定、平成19年改定)を策定し、建替・全面的改善・エレベーター単独設置といった整備を図ってきた。
だが、平成19年の計画見直し以降、大規模地震の発生の危惧、公共施設の維持管理に関する考え方を示した「大阪市公共施設マネジメント基本方針」の策定、大阪市内の府営住宅の大阪市への移管など、市営住宅を取り巻く状況は変化してきた。
そのため、市営住宅についても、早急な耐震化や計画的かつ効率的な更新、維持管理が必要と判断、現在の計画の見直しを行い、新たな「大阪市営住宅ストック総合活用計画(案)」をとりまとめることとなった。
大阪市内の市営住宅には、基本性能が劣る住戸が多く存在する。現行の耐震基準を満たしていない住宅が約320棟、浴室のない住戸が約5,000戸。約3万4,000戸ある中層住宅のうち約69%がエレーベーターが設置されていないといった状況だ。
現状では、平成28年度から平成37年度までの10年間で約1万7,000戸の建て替え、約1万4,000戸の耐震改修、約6,000戸のエレベーター設置などが計画されている。
と、ここまでであれば、市営住宅周辺の既存賃貸住宅に影響はあまりないと考えられる。
しかし、一点気になる箇所がある。「コミュニティの再生」という目標において「新婚・子育て世帯などの入居促進」「コミュニティビジネス活動拠点の導入」という文言が見えるのだ。
市営住宅のような団地は一部若年世代には人気がある。が、それはあくまで一部。もし、新婚・子育て世代に魅力的な住宅環境が実現すれば、より多くの人が市営住宅を魅力的に感じるかもしれない。あくまでミクロなマーケットの話ではあるが、経営するアパート・マンションの周辺の市営住宅がどのように改修等されるかについては、押さえておいたほうがいいであろう。市営住宅の一覧は大阪市のWEBサイトで公開されており、標準的な間取りも掲載されている。
なお、本計画案は、2016年1月22日~2016年2月22日の期間内に市民の意見をヒアリングし、平成27年度末までに改定する予定となっている。
健美家編集部(協力:田中和彦)