最近、築年数の経っている中古物件を取得したはいいけれど、室内設備が古くなっていたり、間取りが今のニーズに合っていなかったりで、退去があっても従前の賃貸条件では空室が埋まらないという相談をよく受けます。
築20年から30年程経つと、原状回復だけでなく、抜本的なリフォーム・リノベーションが必要になってきます。
そこで今回は、私が実際に築古物件をリフォーム・リノベーションする時に実践していることについて紹介します。原状回復費用も値上がりしていますし、任せきりでなく、常に良い方法を考えていくことが大事だと思います。
■将来にわたり原状回復費用・修繕費をローコストにするには
原状回復をめぐるトラブルが多いことから、平成10年に当時の建設省は、「原状回復に関する費用負担等のルールに関するガイドライン」を公表しました。
その後も原状回復費用等の退去時のトラブルが減少しないため、国土交通省は平成23年に原状回復ガイドラインの一層の具体化を進めたほか、原状回復のためのルールを普及させるために手順を明確化させるなどの内容を取り入れ、ガイドラインを再改訂しました。
その結果、室内の損耗・毀損において、賃借人負担となる要件は狭まっています。そこで私は、リノベーションをするときに次回以降の入退去時に原状回復コストが低くて済むような建材や設備を採用するようにしています。
例えば、畳部屋をフローリングの洋室に改修するときに無垢のパイン材を好んで使います。パイン材を使う理由としては、素朴でヴィンテージ感があり、築古物件の室内とよく合うからです。
傷ができたり、経年変化で独特の濃い色に変わったりしたとしても、それはそれで趣が出て、いい感じになります。なまじ高級で、きっちりしたフローリングにすると、違和感があったりします。
そしてパイン材を使用する最大の特徴は、材質が柔らかいことです。入居者さんの室内の使い方によっては汚れが付きます。そのような場合は自分でサンダーをかけることでキレイにすることが可能です。高度な職人技はいらず、誰でも簡単に汚れを取れます。
下記は、その作業途中の写真です。汚れた床も簡単な作業で新品同様になります。
ほかに、シングル向け物件ではキッチン交換時にコンロを卓上型のIHコンロにするなどの工夫をしています。これなら、汚れたり壊れたりしても交換時に工賃がいらず、買い替え費用も安めです。
■リフォームローンの活用
リフォーム・リノベをしたくても、それに充てる資金が無いという方もいるでしょう。
私がよく利用しているのは、ノンバンクのリフォームローンです。期間は15年で金利は固定で2%台(長期金利が上がっているので、最新のレートは3%台になっているかもしれません)、金額によっては無担保です。
室内設備の老朽化が原因で、それまで安く貸していた部屋ならば、リフォーム・リノベをすることで上場した家賃分が、ローンの返済額を上回るということもあります。
私の使っているローンは、大家自身が申しこむのではなくノンバンクの提携加盟店の工務店・リフォーム会社等を経由して申し込むものです。懇意のリフォーム業者さんがこれに提携していなかったので、社長にアドバイスして提携してもらったことがあります。
■補助金の活用
国や地方公共団体が、築古物件のリフォームに対し補助金を出しています。もちろん税金が原資の補助金を出すからには、無条件というわけではありません。しかし、中には利用しやすいものもあります。
例えば国土交通省が管轄している「子育て支援型共同住宅推進事業」。これは、子どもの事故防止や防犯対策を考慮した賃貸住宅の改修などの対象となる工事に対し 、1/3の金額(最大100万円)を補助するというものです。
その代わり、募集開始から3ヶ月間は子育て世帯に限定して入居者募集を行うことや住戸の専有部分が床面積40㎡以上であること、新耐震基準に適合(1981年6月1日以降で建築確認を受けている)している建物などの条件がつきます。
ほかに、国の制度として良質な住宅ストックの形成や、子育てしやすい生活環境の整備等を図るため、既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームや子育て世帯向け改修に対する支援を行う「長期住宅化リフォーム推進事業」もあります。
それ以外にも、各都道府県や区市町村が設けている様々な制度が存在しますので、自分の物件が対象になるかネット等で調べてみると良いでしょう。
このように、自分なりの工夫や資金調達、補助金の活用によって、築古物件のキャッシュフローを改善していくことができます。どれもサラリーマン大家さんでもできることです。それぞれの物件の特性や自分の属性を勘案し、創意工夫して、キャッシュフローの向上に努めていきましょう。