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8つの実例に学ぶ『建物の耐久性』を決める屋根のポイント

原田ミカオさん_画像 原田ミカオさん 第25話 著者のプロフィールを見る

2013/2/21 掲載

健美家さんの新春パーティーに参加した際、洗練された投資家の皆さんから、「 最近は屋根のお話が多いですね 」と言われてしまいました。

何度も言うように「 基礎 > 屋根 > 壁 」の順に重要で、特に屋根は耐久性に直結するような建築的なポイントが多いと思っております。なので、今回も屋根です( 笑 )。

「 陸屋根( ろくやね )はろくでなしでトラブルの元 」と、何度かお話しました。ではRCやSで勾配屋根はできるのか? また、どれくらいつくられているのか? という疑問にお答えしようと、街に出てRCやSの勾配屋根の写真を集めてみました。
※物件が特定できないように、トリミングや細工をしていますので、ご了承ください。

下はRCタイル張りですが、切妻屋根( 三角形の山形の屋根 )となっています。平側( ひらがわ:平らな屋根の側 )には軒が出ていてベランダや外廊下をおおい、さらに妻側( つまがわ:三角形の屋根の側 )にも少し出ているので、壁やベランダの床は傷みにくくなります。 壁の頂部を少しだけおおうだけで、もちはだいぶ違います。



下は大型のマンションで、切妻としています。妻側に軒が出てなく、壁が垂直に立ち上がっているので、妻面は雨で若干傷みやすくなります。陸屋根よりも水はだいぶ流れやすいですが、できたら妻面にも屋根を出した方がいいかと思います。




下は大型の公営住宅で、屋根の縁に金属( たぶんアルミ )がかけられています。屋根の縁は痛みやすいので、金属をかぶせると耐久性は上がります。



屋根の縁の厚みの出る部分は、平側は鼻隠し( はなかくし )、妻側は破風( はふ )と言いますが、痛みやすく、金属をかぶせた方がいい所です。妻面も少し出ていますが、建物の大きさからしてもう少し出して欲しい感じです。

下は3階建てで、かなり築の古い公営住宅です。妻側、平側ともに出ていますので、古い割に壁の痛みは少ないようです。



下は寄棟屋根を置いた例です。木造屋根に使うようなスレート材( クボタコロニアルのような )を葺いています。横樋も外に出しているので、水のトラブルは少なそうです。



下は近づいて見たところです。勾配の緩い寄棟屋根は、近づくと見えなくなるので、水平性の強いボックスのデザインとなります。アメリカのF・L・ライトという有名な建築家がよく寄棟屋根を架けていましたが、近代的なボックス調で水平性の強いデザインには有効です。



下はS造、ALC張りの上に切妻屋根を載せています。新建材のセメント瓦( セキスイ瓦など )を葺いています。ALCは軽量気泡コンクリートの版で、普通厚さは10cmです。幅60cm程度間隔に縦目地が入り、隅では厚みも見られるので、すぐに分かります。



この建物では平側では軒も出て横樋も外に出ているのですが、妻側は出がほとんどないので、もう少し出すべきでしょう。SではRCよりも簡単に勾配屋根を作れますので、陸屋根は極力避けた方がいいかと思います。

下もS造ALC張りで、正面だけタイルを張っています。側面に縦目地が出ている( 写真では見にくいです )ので、すぐにわかります。



ALCにタイルを張る場合、地震で動くと目地の部分でタイルがはがれる恐れがあります。ALCの目地の上になるところすべてにタイルも目地を切って、シールするのがていねいなやり方です。それをしている建物はほとんどありません。

正面に回ると、屋根が付いているのがわかります。この屋根にもスレート材が使われています。正面の軒先に横樋が無く、そこで金物で水を横に流しているようです。その雨仕舞いと側面の軒の出に若干の難があります。



下は興味深い例で、どうやら陸屋根の上に片流れの屋根を後から架けたようです。水漏れに困ってそうしたのかどうか分かりませんが、雨仕舞いに優れた方法と思われます。



RC陸屋根の上に木や鉄を組んで屋根を架けると、水が流れやすくなるばかりか、断熱の面でも優れた効果を発揮します。屋根裏に溜まった空気を流す工夫をして、断熱材も敷けば、すぐ下の部屋は暑くも寒くもない部屋となります。

下は反対側から見た写真です。屋根には鉄板が敷かれています。緩い勾配の場合は、鉄板などの金属板が流れやすいので、よく使われます。鉄板屋根は熱が伝わりやすく、雨の音も大きいですが、緩い勾配の片流れならば水も流れやすく、ボックスのデザインも壊さずにすみます。



RCで勾配をつくる場合は、生コンを流す関係上、緩い勾配しかつくれません。RCの上に鉄や木の屋根を架けるという混構造が優れた方法のように思われます。

以前、超寒冷地の山の上に、RCの建物を建てたことがあります。その際、RCの上に木造の屋根をつくりました。木は断熱性に優れた材なので、法規が許せば小屋裏は木で組みたいところです( 耐火の規制で難しい面もある )。

新築時から勾配のある木造屋根や鉄骨屋根をRCの上に載せることも、考えてもいいのではないでしょうか。

今日のまとめとして
RC造でもS造でも、勾配あればいいあんばい
となります。
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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

■ 原田ミカオさん

原田ミカオさん

原田ミカオさんのブログ:
https://plaza.rakuten.co.jp/mikao/


■ 経歴

□1959年 東京都生まれ。

□1982年 東京大学建築学科卒業。

□1986年 同大学修士課程修了。
現在、東京家政学院大学生活デザイン学科教授。

□2004年から 不動産投資を開始。
現在、アパート6棟、戸建13棟、計58戸を所有。


■ 主な著書

  • 20世紀の住宅-空間構成の比較分析( 鹿島出版会 )
  • ルイス・カーンの空間構成 アクソメで読む20世紀の建築家たち
  • 1級建築士受験スーパー記憶術
  • 2級建築士受験スーパー記憶術
  • インテリアコーディネーター受験スーパー記憶術
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  • マンガでわかる構造力学
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  • ゼロからはじめる建築の計画入門
  • など、ゼロからはじめるシリーズ全16冊( 以上、彰国社 )

など。

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