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赤字鉄道の存廃協議、10月から国が主導へ!人の流れの変化に注目を

都市計画・再開発(地域情報)/全国 ニュース

2023/08/03 配信

赤字が厳しいJR芸備線。地方鉄道の再編協議に国が主導的にかかわるようになる
赤字が厳しいJR芸備線。地方鉄道の再編協議に国が主導的にかかわるようになる


鉄道会社か自治体の要求で国が「再構築協議会」設置を通知

設置は原則拒めず、バスやBRTへの転換も話し合う

鉄道の存廃について自治体や鉄道会社が話し合う場を国が主導して設けられる制度の運用が今年10月に始まる。赤字の地方路線を抱える鉄道会社と、鉄道会社が「廃止ありき」で協議に臨んでくることを警戒する自治体の「対立」を国がいかにさばくのか、注目される。

議論しだいでは地方の交通のありようと人の流れが大きく変わる可能性がある。地域の賃貸需要も大きく変化するかもしれず、不動産投資家もしっかり注目していきたい。

この制度の運用は、維持することが難しくなった地方路線の再編をうながす「改正地域公共交通活性化再生法」の施行で始まる。政府は6月20日、この法律を10月1日から全面施行することを閣議決定した。

柱は、維持が難しくなった地方路線について、自治体か鉄道会社が国に対し、「再構築協議会」の設置を求めることができるという点だ。

国土交通省の資料から
国土交通省の資料から

国は、必要があると認めれば、協議会を設置するよう通知する。正当な理由がない限り、鉄道会社や自治体はこれに応じなければならない。

協議会では、鉄道の存続のあり方やバス、BRT(バス・ラピッド・トランジット=高速輸送システム)など、どういう形へ転換していくかといったことが話し合われる。

協議の期間はおおむね3年間 「再構築方針」を作成
国は方針実現へ向けインフラ整備などを支援へ

協議会で①「鉄道輸送の維持・高度化 」②「バスなどへの転換」のどちらかの方策について協議がととのえば、「再構築方針」を作る。国は、協議がととのうよう積極的に関与していく。

協議の期間はおおむね3年間を想定する。国は方針の実現に向け必要なインフラ整備などの支援をおこなっていく。

政府がこうした取り組みに乗り出すのは、地方の鉄道路線をめぐる状況が、どんどん悪くなっていっているからだ。

国土交通省の資料によると、JR旅客6社の鉄道路線のうち、「輸送密度」(1キロあたりの1日平均輸送人員)が2000人未満の路線は、1987年はキロベースで16%にとどまっていた。

しかし、これが2019年には31%にまで増え、翌20年には38%に拡大した。

国土交通省の資料から
国土交通省の資料から

国交省はこの背景について、「人口減少などによる長期的な利用者の落ち込みに加え、コロナ禍の直撃により、地域交通を取り巻く状況は年々悪化(している)」と説明。

「とくに一部のローカル鉄道は、大量輸送機関としての特性が十分に発揮できない状況」であると指摘した上で、地域公共交通ネットワークを再構築=「リ・デザイン」することが必要であるとした。

中には政治路線あるも、自治体は「廃止ありき」を警戒
コロナ禍もあり、赤字路線をドル箱路線で支える構図崩れる

注目されるのは、国がいかに鉄道会社と自治体との間の「取り持ち役」となって事態の改善を進めていくことができるかだ。

国は「取り持ち役」をうまく果たせるか
国は「取り持ち役」をうまく果たせるか

JRなどは、コロナ禍もあって、都市部のかつてのドル箱路線でそれほど稼げなくなっており、ドル箱路線の収益で地方路線の赤字を補うこれまでの図式が成り立たなくなっている。

赤字路線を放置しておくことは、会社全体の収益の押し下げにつながるため、「JRとしては赤字の地方路線を廃止したいのが本音だ」とみる向きもある。

地方路線の中には、地元の政治家が選挙区民のために十分な乗客を見込めるかを度外視して無理やり引っ張ってきたものがある。とくにこうした政治路線は単独での収益改善を見込めないことから、JRに「廃止したい」という気持ちが生まれても当然だろう。

一方、地方路線の走る地域の人たちにとっては、乗る人が少ない路線であっても、「自分たちの大切な足だ」という思いがある。

鉄道が山間や田園の中を走る光景は、ノスタルジーをかき立てもするだろう。それだけにJRと協議することそのものに対して「廃止ありきの考えなのだろう」との警戒心や反発心が強い。

たとえば、広島県と岡山県を走る赤字路線のJR芸備線をめぐっては、JR西日本が自治体に任意の再協議を呼びかけているものの、自治体側は反発し、事態は止まってしまっている。

「改正地域公共交通活性化再生法」が施行された後は、協議会を開かざるをえなくなるが、「強制的」にすすめようとすると反発が起き、収拾のつかない事態になるはずだ。調停役としての国の手腕が問われることになる。

一方、各地に協議会ができ、鉄道のバスなどへの転換が進めば、人の流れも変わってくるはずだ。

これまでの駅の場所に停留所はできるのか、新たな場所にもいくつか停留所が置かれるのか、などでも住民の利便性が左右される。賃貸住宅需要にも関係してくるので、不動産投資家は今後の成り行きに注目していきたい。

取材・文:小田切隆(おだぎりたかし)

■ 主な経歴

経済ジャーナリスト。
長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。

■ 主な執筆・連載

  • 「経済界」(株式会社経済界)
    「月刊経理ウーマン」(研修出版)
    「近代セールス」(近代セールス社)
    ニュースサイト「マネー現代」(講談社)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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