苫小牧駅周辺ビジョンと基本構想
札幌市の南、海沿いに位置する苫小牧市で、苫小牧駅周辺エリアの都市開発に向けた基本構想が策定されている。
基本構想は苫小牧駅周辺の再開発に向けたものであり、その目的は地域経済の活性化と都市機能及び市民の生活品質向上など。
具体的には、苫小牧駅周辺エリアの特性を活かしつつ、新たな商業施設・住宅・公共施設などの整備を目指すものだ。
対象となっているのは苫小牧駅の南口を中心としたエリアで、現在は商業施設や古いオフィスビルが立ち並んでいる。
※引用:苫小牧市
なお、基本構想の元となっている「苫小牧駅周辺ビジョン」は2023年3月に策定された。
ビジョンでは駅前のエリアを複数のゾーンに区分けしたうえで、各ゾーンの利用方向性や建設する建物の用途などを示している。
※引用:苫小牧市
全体的なエリアのコンセプトは、「創造的学び」と「暮らし」が出会う街、というものだ。
さらに8つの目標が示されており、その内容は、新たな産業振興や産官学連携の推進など。
また、駅目前のエリアについては、再開発建物の用途について具体的な内容まで示されている。
※引用:苫小牧市
加えて、苫小牧駅前エリアの強みとして北海道の玄関口として「高い交通利便性」が挙げられている。強みを活かして各方面から人を集めたいというのがビジョンの意図と言えるだろう。
他方、基本構想で課題視されているポイントは建物・施設の老朽化や人口減少などだ。
そして、基本構想案に記載されている民間事業者からのヒアリング結果では、都市開発事業における採算性の確保に不安があるとも読み取れる意見が出ている。
その他、定住人口を増やしたいのであれば特徴的なマンションの建設が必要といった意見や、人口が増えなければ商業施設の運営が成立しないなど現実的な意見も見受けられる。
基本構想が提示する方向性
採算性の不安を指摘する民間からの声を受けた影響か、基本構想案で提示されている開発の規模は、前段階のビジョンで提示されたものよりも規模が小さくなっている。
※引用:苫小牧市
ホテルの規模がかなり縮小されているほか、行政の窓口などが無くなっている。また、見た目にはオフィスと住宅も縮小されているように見える。
開発規模が現実的な目線で再構成されたことを、残念と考える向きもあるかもしれない。
しかし、2024年時点では歴代最高水準の円安や建築資材費の高騰など無視できない動きが続いていることも事実であり、採算性が取れないことで開発が実現しないよりは良いだろう。
なお、ハード面の計画に加えて、街おこしイベントなどソフト面での実証実験も行われており、ポジティブな結果を出しているものも複数見受けられる。
事業スケジュールについては、2024年度中に民間事業者の公募を行い、2025年度末までに都市計画決定、2026年度から既存建物の解体工事を始めることが想定されている。
駅前再整備の開発が、課題視されている人口減少や中心市街地の空洞化などに歯止めをかけるきっかけとなるか、今後の推移に注目していきたい。
取材・文:
(はたそうへい)