地域住民の生活利便性向上が目的
今後は全国の都市で採用される可能性も?
少子高齢化時代における地方都市の在り方、地域創生、SDGsへの貢献など、全国地方自治体が抱える課題は終わること知らない。都市機能を集積するコンパクトシティ化、MaaSの導入などさまざまな取り組みが見られるが、公共交通機関の新駅設置もそのひとつ。
今年3月に群馬県高崎市とJR東日本は「公共交通を軸とした都市の持続的発展」に関する連携協定を締結し、両者が緊密に連携・協力したうえで、公共交通を利用したコンパクトなまちづくりや高齢者社会に対応した多様な移動手段の確保などに取り組むことを発表した。
主な取り組みとして、高崎市の魅力発信による観光振興、高崎ならではのイベント実施、次世代移動サービスの構築によるシームレスな移動手段、駅のバリアフリー化などが挙げられるが、注目したいのがJR信越本線の豊岡地区における新駅「豊岡新駅(仮称)」の設置及び駅前広場やP&R(パークアンドライド)駐車場の整備だ。
信越本線は、群馬県の高崎駅から安中市の横川駅、長野県長野市の篠井駅から同市の長野駅、新潟県上越市の直江津駅から新潟市の新潟駅までを結ぶ路線で、1885開業と長い歴史を有する。元々はつながっていたが、北陸新幹線の開業に伴い現在は分断されている。
新駅が設置されるのは、2004年10月の上越線・高崎問屋駅以来のこと。高崎駅から2駅目となる北高崎駅から2.6㎞、群馬八幡駅から1.4㎞の地点に2面2線の対向式ホームを備え、6両編成に対応する無人駅で、簡易Suica改札機を設置するという。市が整備費を負担する請願駅で、2026年度内の開業を目指す。
駅前広場には、自家用車から鉄道に乗り換えを促す、約120台が駐車できるパーク&ライドも。新駅までのアクセス道路も併せて整備することで、鉄道へのスムーズな乗り換えが可能になるばかりか、高崎駅周辺の混雑も避けられる。自動車の乗車時間が減ることで、CO2排出量の削減にも貢献でき、時間通りに目的地にもたどり着きやすいのもメリットだ。
駅周辺には工業団地や住宅団地が広がっていて、駅の北側、烏川を挟んで約1㎞には高崎経済大学もあり、新駅の開業後は通勤・通学が格段にしやすくなる。市は1日1600人の利用を見込む。
新駅を設けることで地域住民の移動ニーズに応えようとする、高崎市とJR東日本の取り組み。同様の施策は他自治体でも始まっていて、富山市に関しては2003年からコンパクトシティ政策の関東を開始。
LRTなど公共交通機関を充実させ、公共交通沿線への住居推進などを行うことで、「歩いて暮らせるまち」「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」を率先して実現している。
香川県高松市は2017年度に、さまざまな事業者や地域が提供するサービス・機能を自由に組み合わせて活用するプラットフォーム「FIWARE(ファイウェア)」を国内で初めて導入。スマートシティ実現に向けMaaSの導入にも積極的だ。
地方都市の人口減や高齢化は待ったなしの状況で、多くの人が広域に点在して住むのは非効率的だ。鉄道など公共交通を軸に住む場所を変えたり、MaaSなども活用した子ども・高齢者が快適に移動できるまちづくりが求められる。
こういった課題に直面している自治体は多く、今回の高崎市や、はやくからコンパクトシティ政策に取り組む富山市、さらには高松市の事例は参考になるに違いない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))