※引用:流山市
流山おおたかの森から1駅の立地
千葉県流山市の中央部に位置する、東武野田線の初石駅で駅舎の橋上化計画が進んでいる。
東武野田線は埼玉県の大宮駅から千葉県の船橋駅までを結ぶ路線だ。途中の主要駅は春日部・柏・流山おおたかの森など。
初石駅は柏の3駅隣、流山おおたかの森の隣駅であり、船橋から初石までの所要時間は45分、柏からの所要時間は8分だ。
※引用:流山市
初石駅は埼玉県との県境に近く、駅の西側には江戸川が流れている。また、常磐自動車道の流山インターチェンジが近い。
電車・車ともに北千住方面へのアクセスが良いほか、柏・松戸あたりに行きやすいエリアだ。
地元からは長年に渡って要望の出ていた工事
初石駅橋上化の動きはここ数年で初めて出てきたものではない。その理由は、端的に言えば初石駅には「東口」が無いからだ。
駅と線路が周辺エリアを東西に分断しているにも関わらず、駅には西側にしか出入口が無い。
※引用:流山市
駅と線路を挟んで東西に移動するためには、駅の南北いずれかに移動して踏切を渡る必要がある。
単純に不便なうえ、西側にしか出入口が無いことは駅東側の開発を妨げる要因になっていると言えるだろう。
このため、1970年代以降に「まちづくり勉強会」で駅の東口区画整理事業が検討されたり、2001年には「東初石地区自治会連絡協議会」から駅の東口開設に関する要望書が寄せられたりなど、地元からは長年に渡って駅改良の要望が出ていた。
2016年からは行政と地元住民との意見交換会が開催されるようになり、駅改良の動きを加速させるべく、2018年6月には地元住民から12,000件を超える署名が出たという。
署名は流山市長から東武鉄道に提出されたが、その後も意見交換を重ね、2023年7月に流山市と東武鉄道とが「橋上化及び自由通路整備に関する施行協定」を締結。2023年12月には橋上化工事に関する工事説明会が開催された。
振り返れば、2001年の要望書提出から実に20年以上の期間を経て工事が実現することになったわけだ。
なお、流山市の都市再生整備計画において初石駅が整備対象となっていることも、工事が実現するに至ったきっかけの1つだろう。
都市計画マスタープランにおいて、初石駅周辺は「地域生活拠点」に位置付けられており、買い物客や鉄道利用者の安全などに配慮した整備を目指すとされている。
そのほか、公共交通の維持・拡充と、高齢者や交通弱者の生活サービス利用環境を向上させることを流山市は重視しており、流山市交通バリアフリー基本構想において、初石駅周辺地区は重点整備候補地区に選定された。
新駅舎の建設計画
具体的な駅の改良計画は、既存の駅舎の南に新駅舎を作るというものだ。
※引用:流山市
線路をまたぐ形の橋上駅舎を作り、駅舎内には東西の自由通路が設けられる。また、既存の西口駅前広場を整備するとともに、東側の駅前広場も新設される予定だ。
駅前広場の新設というと何か新しい施設の建設などが期待されるところだが、東口側には私道や住宅が多いこともあってか、交通広場などを設けることはしないという。
一方で、西口については既存の駅舎やトイレなどが不要になるため、跡地の活用方法について市と東武鉄道が協議する。
2024年2月時点で準備工事などが既に始まっており、2025年度には新駅舎が完成、供用開始となる予定だ。
初石駅は首都圏のローカルエリアだが、駅舎のリニューアルによって、今後周辺の都市開発が進んでいくことなどを期待したい。
取材・文:
(はたそうへい)