公民連携でまちづくりビジョンを策定中
東京都目黒区の中目黒で今後のまちづくり方針を決める「ナカメ未来ビジョン」の策定が進んでいる。
ビジョン策定の背景にあるのは、目黒区による「中目黒駅周辺地区整備計画」の改定だ。
中目黒駅周辺地区整備計画は目黒区によって2013年に策定された。
計画の策定後も、駅高架下の商業施設開業や東京音楽大学の開校、東京高等・地方裁判所の分室開設など、中目黒周辺には様々な変化が起きている。
こうした中で、2020年10月には街づくり協議会の実行組織として「一般社団法人 中目黒駅周辺地区エリアマネジメント」が設立され、中目黒駅周辺における街づくり活動が進められているところだ。
中目黒駅を中心とした概ね半径800mのエリアがナカメ未来ビジョンの対象範囲となっている。
※引用:目黒区
また、ビジョンの中には「実施期間を約20年間と想定する将来構想にする」旨が書かれている。
策定側としては、現時点では実現困難なものがあることを認めつつも、1人でも多くの人が関わることを希望しているとのこと。
中目黒の現状と強み・弱みは?
ビジョンの中には、街として目指す将来像だけではなく、街の現状と課題についても記載されている。まずは、中目黒駅周辺の現状について掲載されているデータを紹介したい。
まずは、中目黒駅周辺の年齢別人口についてだ。当該エリアの人口ピラミッドは以下のようになっている。
※引用:目黒区
上記グラフのうち、四角の棒が目黒区全体のデータを示しており、色のついている棒は中目黒駅周辺のデータを示したものだ。
このグラフを見ると、中目黒駅周辺では20代後半から40代後半までの世代が目黒区全体よりも割合的に多いことが分かる。20代後半の男性については特にその傾向が顕著だ。
続いて中目黒駅周辺の強みとしては、主に以下のポイントが挙げられている。
- 感度が高い人やおしゃれな人などが集まる場であること
- クリエイターが集まっていること
- 個性のある店舗などが集まっていること
- 目黒川と沿岸の桜など豊かな自然があること
- 再開発事業などを通じた都市基盤の整備が進んでいること
一方で、中目黒の弱みとして挙げられているのは主に以下のポイントだ。
- 街へ来訪してきた人たちの滞在時間が長くない
- 地価が上昇しているために店舗等が流出している
- 目黒川と桜のイメージが強すぎる
- 駅前での混雑がなかなか解消されない
このほか、テレワークの普及によるオフィスの減少や、デリバリーの普及による飲食店の存続などが、対応すべき課題とされている。
ビジョンの中で示されている街づくりの方向性
上記の状況・強み・弱みを受けて、ビジョンの中で示されている街づくりの方向性は以下の5点だ。
- ウォーカブルネットワーク
- まちなか拠点
- インクルーシブなまち
- クリエイティブなまち
- 情報や技術が活きるまち
「インクルーシブ」とは人々の多様性を受容し、誰もが分け隔てられることなく、当たり前に存在し、生活できるということを意味する。
「クリエイティブなまち」や「情報や技術が活きるまち」については、既に中目黒の街が持っている強みを活かすということだろう。
不動産投資の目線で見たときに、着目すべきポイントは「ウォーカブルネットワーク」と「まちなか拠点」だろうか。
弱みのところに「目黒川と川沿いの桜のイメージが強すぎる」ということが挙げられているが、確かに、中目黒を訪れたことがない人にとっては、そのくらいのイメージしかないかもしれない。
春先以外にも人を呼び込めるよう、まちなか拠点の形成に向けては、以下のポイントが今後の取り組みとして挙げられている。
- 新たな広場空間の創出
- オープンスペースにテーブルやベンチを設置する
- 駅と街との連携を強化して回遊性を向上させる
- 新たな利便施設(カフェなど)の設置
上記のポイントは、来街者の呼び込みと滞在時間の長時間化につながるような取り組みと言えるだろう。
もう1つ、ウォーカブルネットワークの形成については、以下のポイントが今後の取り組みとして挙げられている。
- 建物低層部への店舗等の誘導
- 建物1階部分のガラス張り化
- 既存建物の外観を活かしたリノベーション
- オープンテラスの設置
- 良質なトイレの設置
個性的な店舗やクリエイティブな店づくりを活かしつつ、来訪者の足を止めさせるような街づくりを進めるということだろう。
また、トイレの設置については、桜の開花時期に関する対策と考えられる。
中目黒といえば、既に完成されている街のようにも思えるが、ビジョンの内容を見ていくと、今後も魅力的な街としてさらに進化していく期待を持てる。中目黒の今後に要注目だ。
取材・文:
(はたそうへい)