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亡くなった父親が愛人に贈与したお金の贈与税支払いを相続することになった地主さんの実例2

koziさん_画像 koziさん 第44話 著者のプロフィールを見る

2023/10/25 掲載

今回は、前回の亡くなった父親が愛人に贈与したお金の贈与税の支払いを相続することになってしまった地主さん(Aさん)とその妹さん(Bさん)のお話の続きになります。

参照:請求額1億6千万円。亡き父が愛人に贈与したお金の贈与税支払いを相続することになった地主さんの実例1

■なぜ亡くなったお父さんは愛人に多額の贈与をしたのか

前回のコラム掲載後に、多数の方から「コラムを読んだが、なぜ贈与をした父親の相続人であるAさんとBさんが贈与税を支払わなければならず、贈与を受けた愛人が贈与税の支払いを免れたのかが分からない」というお問い合わせを個別に受けました。順を追ってご説明していきます。

まず、相続税法第34条4項の規定で、「財産を贈与した者は、当該財産を取得した者の贈与額に財産の価額が贈与税の課税価格に算入された価額のうちに占める割合を乗じて算出した金額に相当する贈与税について、当該財産の価額に相当する金額を限度として、納税者と連帯して納付する責任を負う」と定めがあります。

簡単に言うと、贈与者は贈与を受けた人が贈与税を支払わなかった時には連帯して贈与税を支払う義務があるということです。つまり、愛人の方が贈与税を支払わなかったので、贈与をしたAさん達の父親の相続人であるAさん達が連帯人として支払う義務を継承したのです。

次に、そもそもAさん達の亡くなったお父さんはなぜ愛人に多額の贈与をしたのかが気になるところだと思います。実は、Aさん達が国税局から贈与税支払いの通知を受けて専門の弁護士に依頼して調査してもらった結果分かったのですが、亡くなったお父さんと愛人との間に隠し子が2人いたのです。

お父さんが亡くなった時に判明しなかったのは、その隠し子2人を亡くなったお父さんが認知しなかったからだそうです。Aさん達も亡くなったお父さんに隠し子がいるなんて知らずに、相続税の申告をしてしまったとのことでした。

私の推測ですが、亡くなったお父さんはAさん達と同じように隠し子にも財産分与をしたいということで、隠し子の母親である愛人経由で多額の現金を贈与したのだと考えています。

実際に多額の現金を贈与するために、亡くなったお父さんは生前に幾つか所有していた不動産をAさん達に内緒で売却していたとのことです。不動産を売却したお金を愛人に3年間で複数回に分けて贈与していたのです。

Aさん達は亡くなったお父さんが自分達に内緒で不動産を売却していたことを相続の手続きをする時に知ったとのことでした。

■愛人の方が贈与税の支払いを免れた理由

次に、愛人の方に贈与された3億円のお金ですが、亡くなったお父さんから愛人の方の銀行口座に振り込まれた当日に毎回全額引き落とされていて、愛人の方の銀行口座には残高が残っていなかったことが、Aさん達に依頼を受けた弁護士の調査で分かりました。

これも私の推測ですが、愛人の方は隠し子2人に振り込まれたお金をすぐに引き出した後は、銀行口座などに預けずにどこかに保管しているのだと思います。

そして、なぜ愛人の方が贈与税の支払いを免れたかというと、Aさん達のお父さんが亡くなった翌年にその愛人の方も病気で亡くなってしまったのです。更に愛人の方は、自分の余命が長くないということと、国税局から贈与税支払いの追及がいずれ来ることが分かっていたようです。

実際に愛人の方が亡くなると、愛人の方の隠し子2人は相続放棄の申請手続きをすぐに行い、愛人の方の自宅やわずかに銀行口座にあった預貯金の財産について、相続放棄をしていたのです。

ちなみに愛人の方の自宅は地方の田舎の戸建てなので数百万円の価値しかないとのことでした。これもAさん達が依頼した弁護士の調査で分かりました。

私の推測ですが、愛人の方は自分が亡くなったらすぐに相続放棄の手続きをするようにと、子供たちに生前に伝えていたのだと考えています。お金を銀行以外の場所に保管していたこと、そして相続放棄するよう子供たちに伝えたこと、これらは綿密に計画されたように見受けられます。

結果として、本来なら贈与税の支払いをするべき愛人の方は国税局からの追及が来る前に亡くなってしまい、その相続人である隠し子2人も相続放棄をしたことから、贈与者である亡くなったお父さんの相続人であるAさん達が連帯人の相続人として、贈与税の支払いを負う羽目になったのです。

■愛人の方への多額の贈与が国税局にばれた理由

愛人の方への多額の贈与が国税局にばれた理由ですが、二つあります。
一つが、亡くなった愛人の方が所得税や固定資産税などの滞納をしていたのです。

そのため、国税局が愛人の方が滞納していた所得税などを徴収するために愛人の方の財産を調査していて、Aさん達のお父さんから多額の現金の贈与を受けていたことが発覚したのです。

二つ目が、これはAさん達の失敗の一つでもあるのですが、亡くなったお父さんの相続税の申告をする時に、愛人の方に贈与した3億円を使途不明金として申請をしていたのです。

ちなみに相続における使途不明金とは、被相続人が亡くなる前後に発生した用途不明の出金や、流出しているもののどこで・誰が所有し管理しているのか分からなくなった財産を指します。

この使途不明金は相続税の申告においては、相続財産に含める必要があり、現存の財産同様に相続税の課税対象となります。そして、相続時の使途不明金は税務調査の対象となることがほとんどです。

なぜなら、使途不明金は財産隠しや今回のAさん達の事例のように被相続人が誰かに財産を贈与していたという可能性があることから国税局や税務署はこれを調査することが多いのです。

Aさん達の場合も使途不明金の申告をしていたので、誰にそのお金が渡ったのかを調べるために国税局の調査が行われたというわけです。

■相続税の申告でAさんたちが犯した3つのミス

・3億円が足りない理由を調査しなかったミス

相続税の申告でAさん達が失敗した最大のミスは、亡くなったお父さんが愛人の方に贈与した3億円を申告時にどのような目的に使ったのかを調べずに、安易に顧問税理士の言われるまま、「使途不明金」として申告してしまったことです。

もし、相続税の申告時にきちんと弁護士などの専門家に依頼して調査していれば、亡くなったお父さんが使ってしまった3億円は愛人に贈与したお金だということが分かったはずです。

相続税の申告時には愛人の方はまだ存命していたので、そのことがわかっていれば、贈与税を支払うように愛人の方に通告をしたり、国税局に伝えたりすることができたと思われます。そうしておけば、贈与税を支払う羽目にならずに済んだ可能性が高いのです。

・愛人の方に贈与した3億円を「使途不明金」として申告したミス

更に、二つ目のミスとして、先にも書きましたが、愛人の方に贈与した3億円を「使途不明金」として申告したことがあります。使途不明金は相続財産に含める必要があり、現存の財産同様に相続税の課税対象となります。

そのため、愛人の方に贈与した3億円も亡くなったお父さんの相続税対象の財産となり、相続人であるAさんたちが相続税を余分に払うことになってしまったのです。

繰り返しになりますが、愛人の方に贈与した3億円を使途不明金として処理せず、赤の他人である愛人の方に贈与したということを申告していれば、その3億円は相続財産に含める必要がなく、相続税も余分に支払う必要はありませんでした。

Aさん達が亡くなったお父さんの相続の申告をした時に支払った相続税は、4,000万円です。私が後日Aさん達から話をうかがった後に改めて算出したところ、愛人の方に贈与した3億円を相続財産に含めなければ、相続税4,000万円は支払う必要はなく、相続税は0円になったはずでした。

ちなみに、相続や遺贈により財産を取得した人(相続人など)から贈与を受け、贈与を受けた日から3年以内に贈与者が亡くなってしまった場合には、その「生前贈与」はなかったものとみなされます。

これは「相続財産」に加算され、相続税の課税対象となります。これを「生前贈与加算」といいます。

Aさん達の場合には亡くなったお父さんが愛人の方に贈与をしていたので、その贈与した3億円は上記の「生前贈与加算」の対象外となります。

なお、2023年度の税制改正大綱では相続に関連する課税ルールの大きな見直しがあり、生前贈与加算の対象を死亡日前3年間から7年間に延長することが決まりました。2024年1月1日から適用されます。

・相続税を専門ではない顧問税理士に依頼したというミス

Aさん達の三つ目のミスは、相続税の申告を普段確定申告の作成を依頼している顧問税理士に安易に依頼してしまったことです。

その顧問税理士は亡くなったお父さんの代から確定申告の作成をお願いしている方らしいのですが、特に税務のアドバイスをしてくれるわけでもなく、ただ毎年確定申告書を作成してくれるだけで、相続税の申告などに関する専門知識は余りない方とのことでした。

相続税の申告は大きな納税が絡むことがあり、税務調査なども入りやすいので、相続税を得意としている税理士や税理士法人に申告依頼、もしくはセカンドオピニオンとして依頼することが大切です。

相続税に関する知識と経験が豊富な税理士が担当していれば、愛人の方に贈与した3億円を使途不明金として申告せずにきちんと調査したほうが良いなどの的確なアドバイスを受けられた可能性が高いのではと考えています。

そして、Aさん達のミスを見逃さなかった国税局の怖さと、Aさん達がその後どのようになったかについてですが、長くなったので次回に記載させていただきます。

 

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プロフィール

Koziさん

Koziさん

不動産賃貸業
IT系企業のサラリーマン
都内に妻と子供と3人暮らし

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □1980年
    神奈川県川崎市の武蔵小杉の地主の家に生まれる

    □1999年(19歳)
    不動産賃貸業に関わり始める

    □2002年(22歳)
    和光大学卒業

    □2004年(24歳)
    公認会計士、不動産鑑定士の試験に合格
    (他に宅地建物取引士、行政書士、賃貸経営管理士等の資格も持つ)
    IT系企業に入社

    □2008年(28歳)
    叔父の不動産を引き継ぎ2015年に法人化
    会社員を続けながら、不動産事業にも取り組む

    □2018年(38歳)
    企業主導型保育事業を開始

    □2021年
    所有物件数15棟(レジデンス、店舗、グループホーム、保育園)
    年商7億円(保育事業の収入含む)

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