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フィリピンの建築から学ぶこと

原田ミカオさん_画像 原田ミカオさん 第48話 著者のプロフィールを見る

2015/1/15 掲載

最近、健美家コラムでセブの英語研修のお話が出ていたので、ためしに短期間だけマンツーマンの授業を受けてきました。といってもボクではなくて、小学4年生の娘のミカコノコです。1日6時間のマンツーマン。短期間ですが、かなり成果は出たようです。

先生が日本語をしゃべれないのが良かったと思います。ボク自身、英語力が伸びたなーと思えたのは、海外を長期間ブラブラしていた時期でした。日本の教室では、英語力は伸びませんでした( あくまでもボクの場合 )。

セブはダイビングしていた頃は何度か寄りましたが、セブシティの滞在は初めて。親はグータラしていたいので、ホテルに講師を派遣してもらっての英語研修でした。娘の勉強中は暇なので、ホテルの喫茶店で本を読んだり原稿を書いたり、また街をブラブラして建物を見て歩いたりしていました。

今回セブに来てみて、物価が安くない! と実感しました。仕事に疲れて現実逃避をしていた頃、タイ、インドネシア、フィリピンのいろんな島に、何度も繰り返し行きました。物価が超安いので長逗留をしていました( コラム45 )。

北で稼いで南で遊ぶのは、ヨーロッパでもアメリカでもアジアでも一緒です。南の方が物価が安くて、気候が暖かいからです。

今回安いと感じたのは、タクシー代だけ。スーパーで食料品を買うにも、日本と大差なし。モールにあった日本で有名な100円ショップでは、日本で100円のものが300円以上もしていました。

嫁さんのミカコも、服が日本のサ○○やシ○○ラの方が安いとがっかり。モールで宣伝していた高層区分マンションも、USドル建てで聞いてみると、大して安くありませんでした。

まず考えられるのが為替の影響。円安なので、海外で日本円を使うにはかなり不利です。次に考えられるのがインフレ。経済成長からの良いインフレの他に、お札の刷り過ぎやバブルによるインフレもあるのかも( あくまでも想像です )。

建築でまず興味があるのが、一般庶民の建築。建築関係者がヴァナキュラーと呼ぶ土着の、俗っぽい、建築家が関与しない建築です。ホテルから見る一般の住宅街は、鉄板屋根のかけられた、密集した建物群です。日当たりを気にしなくていいため、これでもいいのかも。ただ火事になると怖そう。



上の街に入ったのが、下の写真です。あちこちに現場がありましたが、ボクが見た現場はみなRC( 鉄筋コンクリート造 )でした。RCで柱梁、床スラブをつくる、いわゆるラーメン構造で、壁はコンクリートブロックを積んだものです。この構法ならば、狭い路地でも材料の搬入は楽です。



日本の密集地では木造のみの場所も多く( モクミツとも呼ばれる )、阪神淡路大震災時のような大規模火災が心配されます。このようにラフで適当でもいいので、RC( 鉄筋コンクリート造 )もいいかも。

RCで柱梁、床スラブをつくる、いわゆるラーメン構造で、壁は安いコンクリートブロックとする手もありかもしれません。木造の最大のメリットは安いということですが、RCも安くつくる方法がありそうです。

そういえば20世紀を代表するコルビュジエのサヴォア邸( コラム24 )も、構造はRCラーメンで、壁にはコンクリートブロックを埋める安い構法でした。

下の現場では、屋根が鉄骨+波板鉄板で架けられていました。屋根までコンクリートにする必要がなく、鉄骨と鉄板で架けてしまえばOKというわけです。

その方が建物は軽くなって地震に強くなり( 重さに比例して地震力を受けるので )、コストも下がります。雨も漏りにくい片流れ屋根です。RC陸屋根は、雨仕舞いに問題があるとボクは思っています。

一方、鉄板屋根は熱を通す、雨の音がうるさいという欠点がありますが、断熱材を付ける、屋根を二重にして空気を通すなどの工夫でクリアできそうです。たとえば波板の屋根を浮き屋根として浮かし、その下にも屋根を付けるとか。日本でやるとしたら、屋根は断熱材付きの折板( せっぱん )を使うとか。



下の現場も、構造はRCラーメンで壁はコンクリートブロック。日本でいう2項道路のような狭い路地でも、資材の搬入は可能です。コンクリートは現場で練っているようでした。

周囲の古い家屋は、木造、鉄骨造、RC造などと雑多です。ここでの木造の家は、日本で根太に使うような細い柱で大雑把に組まれていました。こういった街を見ると、庶民の逞しさ、建築に対する構えないおおらかさを感じます。



下は高層をRCでつくっている現場です。これだけ高いと、日本ではSRCとかSも考えられる高さです。地震がある割にはRCの柱梁が細いのが、若干気になります。

RCく体の外側にサッシュを付けていますが、その作業をする足場が外側に無いのには驚きました。全体に足場がかかっていないので、構造く体がよく見えます。日本ではありえない風景です。



左側に回ると、上から吊った足場がブランコのようにぶら下がっています。まさに命がけ。また無理な姿勢での工事は、建物の質を落とすもとです。おせっかいながら、改善した方がよい部分と思いました。



大型のショッピングモールも次々とできています。下は有名なショッピングモールのテラス側の開放的な部分。細い線を集めたかご状のデザインです。しかし鉄骨が露出して組まれているのが、気になりました。



近づくと、やはりすでにさびが出ています。セブは雨の量が多く、風を伴って激しく吹き込むこともあります。ボクが滞在していた時も、強い雨が何度かありました。現地の人によると、セブで1日中カンカンに晴れるのは、日本の春の時期だけのようです。

他の時期は、晴れ、曇り、雨の変わりやすいお天気。これもおせっかいながら、鉄を使う際にはもう少し設計者は考えた方がいいのではと思います。たとえばガラスの屋根やひさしを張り出すとか、上部だけでも外側にガラスを張るとか。



建築やインテリアのデザインは、日本や西欧の現代建築と比べても遜色ありません。現地のデザイナーがやっているのならば、大したものです。下のショップも、色を黄緑だけに限定して、家具も色が黄緑と白に統一されていました。

そういえば服の色は、日本と比べて鮮やかでかわいいものが多いと、ミカコとミカコノコが言っていました。



下の高層マンションは、外壁にひだのようなひさしや縦格子状の壁が出ていて、デザインに生かされています。近代建築でよく使われた手法を、現代的に焼き直した上手なデザインです。



このひだ状の形は、デザインがいいばかりでなく、日差しや雨を遮る庇の役も担っています。壁の傷みも少なくてすみます。



縦の壁の出も、東や西に傾いた高度の低い日射を遮るのに有効です。環境的な効果もあるこのようなデザインは、日本でもまねしたいところです。



ぶらぶらと歩いて見ていただけですが、フィリピンの素朴な建築で日本でもまねした方がいいと思うところが、まだまだありました。次回も続けたいと思います。

今回のまとめとして、
RCラーメン+ブロックの壁+鉄骨の屋根 は使えるかも
となります。

皆様の不動産と建築の勉強の一助になれば幸いです。


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プロフィール

■ 原田ミカオさん

原田ミカオさん

原田ミカオさんのブログ:
https://plaza.rakuten.co.jp/mikao/


■ 経歴

□1959年 東京都生まれ。

□1982年 東京大学建築学科卒業。

□1986年 同大学修士課程修了。
現在、東京家政学院大学生活デザイン学科教授。

□2004年から 不動産投資を開始。
現在、アパート6棟、戸建13棟、計58戸を所有。


■ 主な著書

  • 20世紀の住宅-空間構成の比較分析( 鹿島出版会 )
  • ルイス・カーンの空間構成 アクソメで読む20世紀の建築家たち
  • 1級建築士受験スーパー記憶術
  • 2級建築士受験スーパー記憶術
  • インテリアコーディネーター受験スーパー記憶術
  • 福祉住環境コーディネーター2級受験スーパー記憶術
  • 構造力学スーパー解法術
  • 建築士受験 建築法規スーパー解読術
  • マンガでわかる構造力学
  • マンガでわかる環境工学
  • ゼロからはじめる木造建築入門
  • ゼロからはじめるRC造建築入門
  • ゼロからはじめるS造建築入門
  • ゼロからはじめる建築の設備教室
  • ゼロからはじめる建築の法規入門
  • ゼロからはじめる建築の施工入門
  • ゼロからはじめる建築の構造入門
  • ゼロからはじめる建築の計画入門
  • など、ゼロからはじめるシリーズ全16冊( 以上、彰国社 )

など。

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