いろいろな要素を検討してきて購入する物件が決まれば、次にするのは「買付証明書」を売主へ出すことです。「その物件を購入したい」と意思表示する書類なのですが、どんなものなのか、今回、解説していきたいと思います。
@買付証明書は「意思表示」、希望価格など記す
インターネットのサイトなどで物件を探し、資料を取り寄せ、物件のあるエリアの賃貸需要の調査や物件そのものの現地調査を済ませて、いよいよ「この物件を買おう」と決断したならば、次にやることは「買付証明書」の提出です。
「買付証明書」は、冒頭記したように、「その物件を買いたい」という意思表示です。
特に決まった書式はありませんが、一般的には不動産会社が用意しています。記入する項目は次のようなものです。
A融資特約があれば、融資が通らない場合、無条件で契約を撤回
購入希望価格は、たとえば「2000万円で買いたい」などと意思表示をすることで、「指値(さしね)」とも言われます。不動産会社を間に立てて価格交渉を始めるということです。
融資特約は「融資の審査に通れば物件を購入する契約を結ぶが、通らなければ無条件で契約を撤回できる」とする特約です。
融資特約があれば、融資が通らない場合、手付金を放棄したりすることなく、契約をキャンセルできるので、購入希望者に有利です。買付証明書では可能な限り、「融資特約あり」としておくほうが良いでしょう。
一般的に買付証明書には有効期限があるので注意が必要です。最長で2週間程度のことが多いようです。
B取り下げにペナルティーはないが業者の信用を失う
買付証明書は契約書と違い法的な拘束力はありません。ですので、提出後の買付証明書を取り下げることは、何のペナルティーもなく、可能です。
ただし注意しなければならないのは、安易に買付証明書を取り下げれば、確実に不動産会社の信用を失うことです。
不動産会社自身も、買付証明書をもとに売主との価格交渉などを行っているわけですから、買付証明書の取り下げは、突然、梯子を外されることと等しいといえます。不動産会社自身も売主からの信用を失ってしまうことになります。
C信義を守って交渉を進める
ここでは、ある男性会社員が初心者のころ経験したことが参考になります。
この男性は東京都内のある中古アパートが気に入り、買付証明書こそ出しませんでしたが、「〇〇円で買うことを検討する」と不動産会社の担当者へ口頭で伝えました。
ところが、その後、ほかの物件に目移りしたことや、仕事が忙しかったこともあって、この担当者にまったく連絡しなくなり、担当者から問い合わせのメールが来ても無視していました。
その後、その中古アパートはほかの人に買われました。あるとき、男性は思い立って、この担当者に改めて物件を探してもらおうとメールするようになりましたが、全く返事が返ってこなくなりました。
代わりに、ほかの担当者から物件の提案メールが来るようになったのですが、もとの担当者とは全く連絡が取れずじまいになってしまったとのことです。
初心者のころの失敗で、この男性は今も苦々しくこの経験を思い出すといいます。客とはいえ投資用の不動産を買う場合には、信義にもとらない行動が求められる好例と言えます。
ただ、業者が悪質で、買付証明書を出した後に聞いていなかった条件がどんどん出てくるなどして納得できない場合は、堂々と取り下げるべきです。そのような業者はもともと信義を守っていないわけですから、こちらが馬鹿正直に大きな買い物を決断してやる必要はありません。
Dほかの人の購入希望が通る場合も
なお、買付証明書は、自分以外の複数の購入希望者からも出ている可能性があります。必ずしも自分の購入希望が通るとは限りません。
売主としては、先に買付証明書を出した人を選ぶかもしれませんし、購入希望価格が高いほうを選ぶかもしれません。さらには、融資が確実に通るほうを選ぶかもしれません。
どのような基準で売主が購入者を選ぶかは決まっていないので、しっかり頭に入れておく必要があります。
健美家編集部(協力:小田切隆)