国際化の波が押し寄せている。これはビジネスの世界だけでなく、社会に優秀な人材を輩出する役目を担う教育界でも同じだ。英語の授業に力を入れる公立・私立の中高一貫校が増えている。それらの流れに加えて現在、インターナショナルスクールが開校ラッシュを迎えている。
インターナショナルスクールとは、基本的に外国籍の子どもが通うものだが、今は日本人が自分の子どもに通わせるケースが増えている。米国や英国、フランスなどのインターナショナルスクールがある。英国が存在感を見せている。
今年は東京都港区で「ブリティッシュ・スクール・イン東京」が、東京都小平市で「マルバーン・カレッジ東京」が、千葉県柏市で「Rugby School Japan(ラグビースクールジャパン)」がそれぞれ開校した。地方にもそのトレンドが波及しており、岩手県八幡平市で全寮制の「ハロウインターナショナル安比ジャパン」が開校している。
不動産大手が英国式の学校を開校
そんな中で、不動産会社がインターナショナルスクール市場に参入した。
フランスで開催中のラグビーワールドカップにより世界が熱狂する中で、三井不動産などは9月4日に国際規格のラグビー場を備えた「ラグビースクールジャパン」を開校した。
英国本校はラグビー発祥の地として知られ、2023年は競技誕生から200年を迎える。千葉大学柏の葉キャンパス内に男女共学の通学制・寮制を選択できるインターナショナルスクールとして、生徒数は約780人で、初年度募集人数は約160人という。小学校6年生から高校3年生に相当する子どもたちが学ぶ。
ラグビー場だけでなく、ダンススタジオや演劇室なども備えて英国本校と同様の教育を提供することでグローバル人材の育成・輩出を目指す。千葉県や柏市、地元住民などとともに2008年に策定した「柏の葉国際キャンパスタウン構想」の一環である。
つくばエクスプレス(TX)線の「柏の葉キャンパス」駅が最寄り駅となる。都心から30分程度の交通利便性と、千葉大学や東京大学を始めとする日本屈指の教育機関や研究機関、企業が終結した環境に開校しており、都心や地元企業、研究機関などの子どもたちの入学が見込めそうだ。
学区・学校で住む場所を探す傾向強く
こうしたインターナショナルスクールの誘致が国内で相次いでいる中で、その地域の地価や不動産価格・価値に与える影響については、健美家の読者にとって気になるポイントではないか。
東京都港区の「ブリティッシュ・スクール・イン東京」は、そもそも地価が高い場所であるが、東京・小平市や岩手・八幡平市、千葉・柏の葉といった郊外・地方では、地元の不動産事業者から「教育熱心な高所得者の親御さんが移住するなどで地ぐらいが高くなって評判となり、それが人流を呼び込んで人口の増加につながり、地元経済を潤すなどプラスに働けばいい」とのサクセスストーリーに期待する。
実際、子どもの学校・学区から住まいを探すという傾向は強くなっている。実際に保育園で一緒だった子どもの友達が小学校前に希望する学校のある地域に引っ越すケースは珍しくない。
そんなニーズを見込んでデータインサイト(東京都渋谷区)は今年の3月に学校・学区から住まいを探せる不動産ポータルサイト「こどもいちばん」サービスを始めている。
全国の小・中学校の学校区の範囲を示したマップで住まい探しができる日本で初めてのサービスという。物件相場の推移、将来人口の推計、地域の推定年収、犯罪発生件数などの治安情報も得られ、希望する学校区内の新着物件情報を受け取ることができる。
「卒業資格得られない」保守層は足踏みか
その一方でインターナショナルスクールの誘致だけでは不動産市場への恩恵は見込めないとの反応も少なくない。産官学を巻き込んだ街づくりでなければ地域の発展は得られないとし、その意味からも柏の葉がケーススタディだとする。もともとTX線開通という機会を生かして「柏の葉スマートシティ」としてイノベーションの実証の場としてスタートしたもので、産学官で「新産業を生み出すクリエイティブなイノベーション拠点」を整備し、持続的な街づくりに携わる次世代の人材育成に力を入れてきた。今回のインターナショナルスクールの誘致が目的ではない。別にインターナショナルスクールでなくてもよかったはずだ。
誤解を恐れずに言えば、インターナショナルスクールは、日本の法律上の学校ではないことで小中高校の卒業資格が得られない。一部では法律上の学校と同様に認定する自治体もあるようだが、心もとない。例えば、ある区では認めていても、それ以外の認めていない自治体にある国公立大や私立大は受験資格すら得られない。国として学校の制度面を一気通貫で整備していない現状では、家計的にインターナショナルスクールに通わせられる生活力があったとしても多くの保守的な親御さんは日本で著名な国公立校や私立校を選ぶ。
国際化が叫ばれて久しく、学校や企業がそれに対応しようと知恵を絞るが、最も国際化とかけ離れている立ち位置にいるのが国であることもまた現実であることを忘れてはならない。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))