広島市のベッドタウンとして発展
かつては遊園地があったまちで再開発
地域住民の足として欠かせない、鉄道。なかでも地方鉄道はそれぞれのまちで、日常の交通網として利用されている。広島県で鉄道・軌道事業やバス事業、不動産事業などを展開している広島電鉄もそのひとつだ。
鉄道・軌道事業では、軌道線6路線19.0㎞、鉄道線1路線16.1㎞の総延長35.1㎞の路線を有する。年間輸送人数は約5500万人と、軌道線・鐡道線を合わせた輸送人数と路線延長は、路面電車として日本一を誇る。
唯一の鉄道線である宮島線は、広島市西区の広電西広島駅から同県廿日市市の広電宮島口駅に至る路線。
JR西日本の山陽本線とほぼ並行して走っているが、佐伯区や廿日市市の住宅街を抜け駅数が多く駅間は最短で400m、長くても約1㎞ということから沿線住民にとって身近な存在であり、通勤や通学はもちろん、観光路線としてもにぎわっている。
そんな宮島線の駅のひとつが、佐伯区にある楽々園駅。先述の広島瓦斯電軌による遊園地「楽々園遊園地」の玄関駅として1935年に開業し、その後遊園地は閉演したものの楽々園の地名が残ったことから、駅名もそのまま使用されている。
1972年、遊園地の跡地に開業したのが「ひろでん楽々園ショッピングタウン」。その後は、ショッピングセンター「ファミリータウン広電楽々園」にリニューアルし、マックスバリュやヤマダ電機、ショッピングモールのナイスディ。ホームセンターのDCMダイキ楽々園店が営業。
ところが、ナイスディ棟およびダイキ棟は建物の老朽化のため2021年9月30日に閉店し、前者は2022年7月に解体完了、後者は2023年3月から解体工事が始まっている。
こうしたなか、解体後の跡地利用が注目されていたが、広島電鉄は「地域住民の暮らしを支える魅力ある拠点の創出」との観点で事業パートナーの選定を行った結果、日常生活に必要な機能を備えた近隣型ショッピングセンター(SC)を全国展開するイオンタウンと6月下旬に土地賃貸借契約を交わすことを発表。
新施設「(仮称)イオンタウン楽々園」の開業を目指すこととなった。なお、現在敷地内にあるマックスバリュおよびヤマダ電機、もみじ銀行五日市支店の営業は継続される。
イオンタウンはイオングループのディベロッパー事業部門。近接型のSCを日本全国に155施設(2023年5月末現在)展開。地域の特性に合わせた大規模から中小規模の施設を供給している。楽々園の店舗の詳細は未定で、決まり次第アナウンスされる。
場所は楽々園駅から徒歩3分の距離で、国道2号線や市道からもアクセスしやすい。電車・車ともに来店しやすいので、近隣住民にとっても利便性は高いだろう。
佐伯区は広島市の西部に位置する行政区で、都心に近く自然が豊かな特性を生かして宅地化が進み、広島市のベッドタウンとして発展してきた。2000年に約12.6万人だった人口は、直近で14万人を超えている。
区内の大型商業施設はファミリータウン広電楽々園以外だと、イオンモールが展開する「THE OUTLETS HIROSHIMA」が2018年4月にオープンしている。
屋内スケートリンクやボウリング場を備え、専門店が約200店舗出店する施設だが、立地はかなり都心に寄る。楽々園とは離れているので、競合にはなりにくいだろう。
「(仮称)イオンタウン楽々園」がオープンすると、宮島線を使って来店する人も増えるかもしれない。何よりも、賑わいと雇用が生まれるのは、まちにとって大きなメリットだ。
オープンはまだ先になるが、この取り組みは企業同士が連携し、商業施設を核としたまちづくりの参考になるだろう。
なお、人口の増加やまちの変化は、不動産価格にすでに反映されている。不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、直近3年間で楽々園駅周辺市の賃貸マンションの賃料は3.35%、中古マンション価格は9.18%上昇している。新たな商業施設の誕生で、より付加価値は高まっていくかもしれない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))