岡山駅から電車で5分の立地に5000席の新アリーナ
全国で18番目の政令指定都市に数えられる、岡山県岡山市。県の南東部に位置し、県庁所在地および東瀬戸経済圏で最多、約71万人の人口を有する都市だ。
市の中心部には岡山城や日本三名園のひとつである後楽園を擁し、高層ビルの建ち並ぶ中心部と閑静な田園や中山間地域が広がる郊外にわかれる。
そんな岡山市の北区、JR北長瀬駅至近で、新アリーナの建設が計画されている。すでに素案が公開され、バレーボールコート3面分のメインアリーナ、2面分のサブアリーナなどが整備され、前者には5000席以上の観客席を設けるなど、各プロスポーツの上位リーグの参入条件を満たす。
岡山市北区は岡山県庁や岡山市役所が所在する行政の中心地であり、岡山県最大の商業地。面積・人口・人口増加率ともに市を構成する4区のうち最大であり、中四国最大級のターミナル駅である岡山駅や繁華街の表町商店街などが立地。丘陵部では白桃やマスカット、ピオーネなどの果物の栽培が盛んで、自然も豊かだ。
北長瀬はJR西日本の山陽本線が乗入れる駅で、岡山駅の隣に位置。「晴れの国おかやま国体」に合わせ、旧国鉄岡山操車場跡地で2005年に開業した。1日平均利用者数は当初1600人だったが右肩上がりで増え、いまは4000人を超えている。
駅の周辺だが、南口には岡山ドームや岡山市立市民病院、さらにはショッピングセンターの「ブランチ岡山北長瀬」などの商業施設、北口は住宅や小規模の工場などが集積し、少し離れると田畑が広がっている。
10年間の経済波及効果は910億円を見込む
新アリーナの計画地は市営住宅跡地で、現在は市有地となっている場所。遡ること2021年、岡山県経済団体連絡協議会および岡山商工会議所から、プロスポーツチームやアマチュアチームの試合や練習利用をはじめ、市民の生涯スポーツや健康づくりの拠点となる、
観客規模3000人から5000人規模の「アリーナ建設に向けた提言」を受けたのが、プロジェクトのきっかけだ。
本提言では、アリーナの建設・運営については、経済界のバックアップによる地元企業の寄付金や企業版ふるさと納税などを活用した公設による建設、指定管理者制度の導入による民間のノウハウを活かした独立採算での民営による運営を提案。
これを受け、岡山市は2022年度に新アリーナの必要性や実現可能性について適正に把握・判断するため基礎調査を実施することに。提言や基礎調査の結果を踏まえ、2023年11月の基本計画素案を公表した。
岡山市は、岡山シーガルズ(Vリーグ)、トライフープ(Bリーグ)、岡山リベッツ(Tリーグ)、ファジアーノ岡山(Jリーグ)といった、4つのトップチームのホームタウン。
BリーグやVリーグが上位で活動するために必要なホームアリーナ基準の見直しにより、5000席以上の各席やラウンジの設置、ホームアリーナでの試合開催割合などの要件が示されているが、現状では要件を満たすアリーナは市内にない。新アリーナは上位クラスのレギュレーションの条件基準をクリアするものとした。
プロスポーツ利用を施設整備の主軸に据えつつも、各種イベントや展示会、コンベンション、コンサート利用などに対応可能な施設を計画し、プロスポーツ以外の施設利用についても積極的に誘致を行う方針だ。
災害時において一時避難施設(収容人数は2000人程度)として利用するだけでなく、災害時の物資搬出入拠点として機能するなど、隣接する北長瀬未来ふれあい公園との連携により、地域の防災機能の強化も図る。
2022年度の基礎調査では81億円の事業費を見込んでいたが、延べ床面積の増床や原材料の高騰などを踏まえ、素案では約118億円と試算。周辺の道路整備などを含めた総事業費は約145億円としている。
一方で、建設や維持管理・運営、イベント来場者により、20年間で県下に910億円の経済波及効果があるとも推計。新アリーナが景気を後押しするとも考えている。
現状は素案が示された段階で、建設および竣工時期は明らかになっていない。岡山市は県に対して財政負担を求めているが、県は説明不足を指摘するなど、両者の間には溝も生じている。
2023年12月からは、新アリーナ整備・運営が早期に実現することを要望するための署名活動も行われ、すでに7万人分が集まったという。
近年はプロスポーツのホームアリーナ建設が各地で相次いでおり、岡山市の取り組みもこれに倣った格好だ。今後、どのように進んでいくのか、その動向を見守りたい。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))