2023年12月に建設工事着工
会員制の大型量販店であるコストコホールセールジャパン(以下「コストコ」)は、福岡県の中央部に位置する小郡市(おごおりし)で、2024年11月に新店舗をオープンすると明らかにした。
小郡市は福岡の都心から見て南側、久留米市の北に隣接している市だ。
※引用:小郡市
大分自動車道の筑後小郡インターチェンジや、九州縦貫自動車道と大分自動車道が交差する鳥栖ジャンクションがあるなど、交通利便性が高いエリアとなっている。
コストコの出店先は、筑後小郡インターチェンジの西側正面に当たる場所だ。
※引用:小郡市
現小郡市長である加地氏は、2021年の市長選挙においてコストコの誘致を公約に掲げていた。
また、2023年2月には市民団体の「小郡市コストコ倉庫店誘致する会」が、5258人分の署名を添えて、コストコ誘致の早期実現を求める要望書を市長に提出している。
地元からの後押しもあり、小郡市は2022年3月に、コストコと新店舗出店にあたっての協定を締結した。
協定を締結後、市役所内にプロジェクトチームを設置し、福岡県との協議を交えながら新店舗出店に向けた手続きを進めてきたという。
実は、福岡県は日本で一番最初にコストコが出店した県でもある。日本1号店は福岡県糟屋郡(かすやぐん)久山町で1999年にオープンしている。
※引用:コストコホールセールジャパン
2024年3月現在では、福岡県内には久山町と北九州市八幡西区の2箇所に店舗がある。
小郡市の新店舗の規模は、敷地面積が約6万8,800㎡、売場面積は約1万㎡。加えて900台以上の駐車場などを設置する計画となっている。
小郡市内のほか久留米市などの周辺エリアに加えて、まだコストコが進出していない長崎県や大分県などからも集客を見込んでいるという。
1日当たりの見込み集客数は3,000人~7,000人。なお、新店舗出店に当たって350人以上の従業員が雇用される予定だ。
コストコのケン・テリオ日本支社長は、2023年12月に店舗の建築工事を着工したと明らかにしている。
予定地の付近ではローカル鉄道の新駅誘致も
店舗予定地の近くでは、甘木鉄道甘木線(あまぎてつどう あまぎせん)の新駅を誘致する活動もあり、小郡市議会で取り上げられている。
甘木線は、JR鹿児島本線も通る基山駅(きやまえき)から小郡市内を横断して、福岡県朝倉市にある甘木駅までをつなぐローカル路線だ。
1986年に旧国鉄の路線が私鉄になった第三セクターの路線であり、似たような路線は日本全国に複数点在している。
多くの路線が経営難に苦しむ中でも、甘木鉄道はコロナ前の時期に黒字経営を維持しており「三セクの優等生」と言われることも。
2022年度の損益計算書を見ると、純利益は赤字ではあるが赤字幅は約45万円とそれほど大きくない。
甘木鉄道が比較的安定した経営を続けられる理由を調べると、沿線の地元市民がイベントを開催したりPRを買って出たりと、地元から愛されているからだという。
※引用:甘木鉄道を育てる会
新駅は2027年の工事着工を計画しており、駅舎と併せて駅前広場などが設けられる見通しだ。
また、2023年の小郡市議会における質疑記録を見ると、新駅とコストコ店舗とを結ぶ歩道を整備する構想があるとわかる。
現状ではコストコ店舗の従業員だけが利用する駅にならないかという懸念も議論されており、市はそうならないように、新駅周辺での住宅政策を立案していきたいとしている。
市の試算では、新駅ができることで周辺住宅地の住民が500人程度増える見込みだ。
加地市長はコストコの進出によって「交流人口が増えるので、まちづくりを進めるチャンスになる」という趣旨の発言をしている。
不動産投資の目線ではこれまで注目を集めていなかった小郡市がどのように変化するか、今後の行方を見守りたい。
取材・文:
(はたそうへい)